ぼっち姫、なぞ・ナゾ・謎。
「この先もっと強い奴が出てくるなんて事がないといいんですがね」
「おいカエル、変なフラグを立てるな」
「すいやせん」
二人はそんなやり取りをしながら私の後ろを付いてきている。
でも、あれってこの洞窟で何かを守ってるボスって感じだしあとはご褒美あるのみっしょ!
私はまったく危機感なんか無い状態でずんずん進んでいく。
といっても、今度は比較的すぐに開けた場所に出た。
そこには妙な祭壇みたいなのがあって、何かが安置されてるみたいな感じ。
そこへ大体十五段程度の階段が続いている。
「なんか有るっぽいから行ってみようよ」
「何があるかは知らねぇが、もし使えそうなもんがあるならプリン、お前が手にするべきだぜ」
「あっしもそれには同意でさぁ。あの守護巨人を倒したのは姫さんですからねぇ」
「そう? じゃあ遠慮なくもらっちゃうよ?」
っていっても何があるかわかんないけど。
ちょっとドキドキしながら階段を一段、また一段と上がっていく。
途中で振り返ると、二人が私に向かって手を振ってた。
早よ行けと言わんばかりだ。
うーん。ちょっとだけ怖くなってきた。
この上に有る物はきっと物凄い何かだ。
それを手に入れて私は何かが変わってしまうだろうか?
私は今何も分からないし、知りたいと思う。
だけれど今ここにいる私は私で、もしそれが違う私になってしまうとしたら……なんだか恐ろしい。
いっそ何も思い出さずにこのまま私として生きていくのもいいのかも……。
いや、だめだ。
それはダメ。
私が良くても私を知っている人や私をもし大事に思ってくれている人がいたならば、その人達に酷い仕打ちをする事になる。
だから、私は元の記憶を取り戻さなきゃいけない。
その人たちにどれだけの義理があるか分からないけれど、なんとなく分かる。
私には仲間がいたらしいし、私の事を姫と呼ぶ人達もいた。
だったらきっと、私がこのままじゃその人達は悲しむんだろう。
だから、実際どうなるかは分からないけれど、少なくとも思い出す努力はしなくてはいけない。
そんな気がする。
いろんな事を考えながら階段を一番上まで登りきると、そこにある物がなんなのか、私にもわかった。
これは……。
これは……。
……。
よくわからないものだ。
よく分からない物だという事がわかった。
「サクラコさーん! なんだこれー!?」
「どうしたー? 何があった?」
「うーんとね、なんか光る玉!」
そうとしか言えない。
いろんな色にうねうね輝く変な玉っころが台座の上に置いてある。
「なんだこれ……」
こんな玉っころもらってどうしろっていうんだろう。
高く売れたりするのかな?
とりあえずもって帰ろうか。
そう思ってその玉に手を伸ばした時だ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「プリンどうした!?」
私の悲鳴に慌ててサクラコさんと蛙さんが階段を駆け上がってきた。
「……なんだ? 何もねぇじゃねぇか。言ってた玉はどうした?」
「ふ、ふふふ……」
「何が面白いんで?」
「服が玉っころ食べた!!」
そう、玉に手を伸ばした瞬間、私の着ている赤い服がぶわっと、こうぶわっと広がって玉っころに纏わりついた。
そしてなにやらごっきゅごっきゅいって、気が付いたら服は元に戻ってるし玉は無くなってるし……。
それを必死に二人に説明するが、いまいち伝わらない。
困ったな……。
「要するにプリンの服がただの服じゃなかったって事か? ちょっと触らせてみろ……って、なんだこれ!?」
サクラコさんが私の服を触って変な声をあげる。
「こりゃあ……おいちょっといいか?」
そう言ってサクラコさんが短刀を抜き、私の服の一部に突き立てる。
「うわっ、何してんの!?」
「おいおい冗談だろ……切れねぇどころか弾かれちまう。こんなに柔らかいのに表面がまるで……」
「きゅーっ! きゅきゅきゅっ!!」
突然何かが荒ぶった声をあげた。
「おいプリン、今のはなんだ……?」
「知らないよ。何かいるの? あの声……」
「お二人さん、さっきの声の主はどうやらその服のようですぜ」
蛙さんがよく分からない事を言っている。
今までなら絶対信じなかっただろうけど、私はあの光る玉を食べたのを見ているのだから喋るくらいはあり得るかもしれないと感じた。
「きゅっ! きゅっ!!」
「おいおいなんかこいつ怒ってるぞ!?」
「そりゃサクラコさんが刃物突き立てたりするからだよ!」
それにしても喋る服を着てるとか私ってなんなんだ?
ちょっと意味が分からない。
この服が何なのか、さっきの玉がなんだったのか、そして謎の玉を食った謎の服を着てる謎の私。
なんだかやっぱり知るのが怖くなってきた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます