ぼっち姫、パワーキャラにされる。
「……おい、プリン大丈夫か?」
……痛い。
なんで入り口に段差なんかあんのよ……。
「この段差……どうやらここは人口的な臭いがしやすぜ」
どういう事? てか蛙さんよ、段差みるより私の事心配しなさいよ。
「どういう事だ? ……おぉ、確かにこりゃ人の手が入ってるな」
サクラコさんまで私に伸ばしかけた手を止めてその段差の方を見に行ってしまった。
仕方ないので一人無言で立ち上がり、サクラコさんの後ろからその段差を覗き込むと、確かに自然にできたにしては不自然なくらい綺麗な石段みたいになってる。
「こりゃ中に何があるか楽しみになってきやがったぜ。二人とも行くぞ」
サクラコさんはそう言ってスタスタ中へ入っていくが、その背中のカブトムシはそのままでいいんだろうか。
別に本人がいいならいいけど。
サクラコさんが魔法なのかなんなのか分からないが手に持った小さな木の枝に火を灯し、なんとか視界が確保された。
洞窟はほんと暗くってジメジメしててあちこちゴツゴツしてて狭い。
人一人通れるくらいな感じで、私は小さいから大丈夫だけどサクラコさんとかは少し頭を下げながら歩いてて大変そう。
「洞窟の中には魔物さんいないね」
「本能的に危険を感じてるのかもしれやせんね。さっきあっしらを取り囲んでた魔物の数はそりゃもう凄かったのに中に全くいないのは不自然でしょうや」
魔物さんは見える範囲以外にももっと沢山いたんだろうね。気配が……とかはよく分かんないけど、なんとなく、あーいっぱい居るわ。くらいには認識できた。
私達はそのまましばらく洞窟内を進む。
ちょっと道は広くなったけど、一本道で何もないし結構な距離歩いている気がするんだけど何も変化がない。
けど。
「……姐さん、本当にこの先に進むんですかい? あっしとしてはもう引き返したいくらいなんですがねぇ」
「……奇遇だな。あたしもちょっとヤバい気がしてきたところだよ」
なんで? さっきまで二人とも余裕そうだったじゃん。
「ここまで来て何もしないで帰るのもったいなくない?」
私は、ただそう思ったから口に出してしまっただけで。
それなのに二人は信じられない物を見るような目で私に振り返る。
「プリン、マジで言ってんのか? ……お前にはこれが分からないのか……?」
え、なになに??
「このピリピリするやつ? なんかあるんだろうなーっていうのは分かるけど、そんなに危ない感じなの? 私はどこか懐かしい感じするんだけど」
「ははは、姫さんにはかないやせんぜ。こりゃ間違いなくあっしが戦った姫さんでしょうな」
どういう意味だよ!
私そんなに変な事言ってるのかな。
「これが、懐かしい……だって? お前いったいどういう人生送ってきたんだよ……」
「え、私が危険に対してよくわかってないだけかな? もしあれなら一度帰る? 対策練ってまた来てもいい訳だし」
ほんとは何度も行ったり来たりは面倒だし早く解決したい気持ちはあるけど、焦ってもしょうがないよね。
「いや、大丈夫だ。プリンが平気だっていうなら大丈夫な気がしてきたよ」
「それに、そろそろこの洞窟も打ち止めみたいですぜ」
うっすらとだけど奥に壁が見える。
行き止まりかとも思ったけど、近付いてみたらそれが扉だと分かる。
めちゃくちゃ汚れててただの壁と見間違えるくらいだけど、ちゃんと開くように出来てるみたいだ。
「しかしこれは……開けるのがかなり難しいかもしれませんぜ」
「どれどれ……ふんぬっ!! ……あー。こりゃあかねぇわ。どーすっかな」
ふたりがかりで開けようとしても扉はびくともしてなかった。
「じゃあちょっと私にもやらせてよ」
二人でやってだめなら開く訳ないんだけど、やっぱり一度試してみないとだよね。
って……あれ?
「開くじゃん」
ちょっと力入れて押しただけで扉はぐごごごっと音を立てて奥に向かって開いた。
「……プリン、どんな力してんだよ」
「恐ろしい姫さんですなぁ」
「え、やめて。私を勝手にパワーキャラにしないで」
とにかくこれで扉は開いたし、何が待ってるのか分からないけど行くっきゃないよね!
「よーっしれっつごー♪」
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