ぼっち姫、仲間が増えるよ。
「おいおいいつから魔物は人間とお茶飲むようになったんだ?」
サクラコさんはこの状況にも意外と冷静だった。
私はといえば結構動揺している。
だって私達魔物討伐に来たんじゃなかったっけ? なのになんで、魔物から助けてほしい村の村長が魔物と呑気にお茶飲んでるの?
「おぉ、チェリオ帰ったのか。そちらが万事屋さんですな? 魔物は魔物でもこの方はいいんです。昔からの知人なんですよ」
知人? 知魔物の間違いでしょ?
「んー。じゃあそこの茶飲み蛙は討伐対象外って事でいいんだな?」
「討伐……おぉ怖い怖い。あっしは悪い魔物じゃありやせん。ゲッコウ・フロザエモンってケチな野郎でさぁ。以後お見知りおきを……って、おやおや。つい最近会った方がいらっしゃるじゃあありやせんか」
「おお、それじゃあこの万事屋さんがフロさんが言ってたべらぼうに強いって女の人ですかな?」
なんか勝手に盛り上がってる。
目の前の魔物さんはどう見ても蛙で、だけど人型。
人間の頭が蛙、みたいな感じ。それで手は蛙っぽくて、服装はサクラコさんの着物にちょっと似てる。
「あぁ? あたしはこんなカエル知らないぞ。そこのカエル侍、もしかしてプリンの事知ってるのか?」
え、私?? 蛙さんなんか知らないよ!?
……って、それもそうか記憶ないんだった。
「プリン、ってのはそこのお嬢さんの事ですかい? あっしは名前は知りませんぜ。でも確かどこかの姫さんだったかと思いやすが」
「姫!? 私が!? 嘘でしょ!?」
記憶なくしてどうしようかと思ってたけどもし私が姫様なら既に人生一発逆転大勝利じゃん!!
「ねぇ、私姫様なの!? どこの姫!?」
「な、なんでぇなんでぇどういう事ですかい? あっしはお前さんの事は詳しくねぇですぜ。ただ周りの人から姫と呼ばれていたのを覚えてるってだけでさぁ」
……それじゃ私が周りから姫って呼ばれてるだけの痛い子って可能性もあるって事?
それはまずい。可哀そうな子になってしまう!
「ちょっと待ちな。そこのカエル侍はこの子とどういう知り合いで何があった? 詳しく教えてもらおうか。この子は今記憶がないんだよ」
サクラコさんが蛙侍に詰め寄った。
私もその辺の詳細には興味がある。
「お願い。なんでもいいから知ってる事を教えて」
「……記憶……ですかい。そりゃまた面倒な事になってやすねぇ。教えるのは構いやしませんが、本当にあっしが知ってる事なんて少しだけですぜ?」
そう言って蛙侍が語った内容は私にとって十分驚くべき事だった。
この蛙さんは魔物だからって理由で魔王さんに雇われて、エルフ達の身柄を拘束する役目を言いつけられたらしい。
だけど、そこに私と、そのパーティが来て戦ったんだけど私がめちゃくちゃ強かったから見逃してもらって逃げたんだそうだ。
なんだかんだ魔物、悪い事しようとしてたんじゃん。
「いつか御恩は返さねぇといけねぇやって思ってたんですが、これもいい機会。お嬢さん……いや、姫さんが記憶を取り戻す為の手伝いくらいはしましょうや」
「それはすっごく助かる! でさ、私ってその後魔王と戦ったの? 勝った??」
蛙さんは「それなんですがね」と言って少し黙ってしまう。
どうしたの? 私負けちゃったのかな……?
「間違いなく魔物の軍勢と戦闘になったでしょうや。しかしその後の戦いや魔王との勝敗に関しちゃあっしは知らねぇんでさぁ。そりゃもうスタコラ逃げちまったもんで」
意外と使えない蛙さんだなぁ。
でも魔王と戦って生きてるって事は勝ってるんじゃない?
「しかし姫さんどうしてこんなところに居るんですかい? あっしはあのあと一目散に自前の転移アイテム使ってここまで帰ってきたんですがね、普通の経路でここまで来ようとしたらどんなに早くても二週間はかかるでしょうや」
「え、そんな遠いところにいたんだ? じゃあ私も転移してきたのかな?」
魔王と戦った時に何かがあったんだろうけど、蛙さんじゃ詳しい事は分からないみたいだ。
「私のほかにそこにはどんな人がいたのかな?」
「姫さんのお仲間ですかい? 思い出せるのは小さい黒髪の女の子、それと……そうそう。ニポポンの分化にも詳しいイイ女がいやしたぜ。ショコラとか言ってやした」
「ショコラだと!? おいカエル! そいつま間違いなくショコラって名乗ったのか?」
サクラコさんが蛙さんの肩に掴みかかってぐわんぐわん揺さぶった。
「うわわわっ、こりゃ乱暴なお嬢さ……姐さんだ」
「なんで言い直した? お嬢さんで構わんよ。ってそんな事はいいから早く答えろ」
「へい。確か身長は結構小さめでピンク髪の……」
「ショコラだ! そうか、ショコラは無事にプリンを見つける事が出来たんだな。ショコラが一緒に居たという事はやはりプリンはセスティ本人の可能性が高くなったぞ。お兄ちゃんってのがよく分らんがな……どちらにせよショコラが今一緒に居ないという事は……」
「へぇ。魔王にやられてるかもしれやせんし、この姫さんみたいに生き延びている可能性もありやしょう」
私もさすがに存在を知ったばかりの妹がもう死んでたっていうのは嫌なので、生きててほしいと思う。
「よしプリン、あたしは決めたぞ! 今回の事件を解決したらこのカエルに案内させてそのエルフの森へ行こう」
行こう、って……私も一緒って事?
「でも私は王都に……」
「エルフの森に行くのに王都は通り道ですぜ。帰ってきたばかりでまた行くのはおっくうですが、これも何かの縁でしょうしあっしが案内いたしやしょう」
おぉ……って事は私の旅にはしばらくサクラコさんもついてくるって事だよね。
彼女の行動力はすっごく頼りになるし、一緒に来てくれるのは嬉しいけど……。
なんでだろう。
……トラブルの匂いしかしない。
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