〇〇〇の状況整理。
「う……ん?」
なんだか突然顔に生ぬるい液体をぶちまけられて目が覚める。
とても臭い。
獣っぽい、というのが一番近いかもしれない。
ちょっとぬめっとしていて生臭い。
「うわ……なんなのこれ……」
うー、気持ち悪い……。
私はどこか、とても豪華なベッドに寝ているみたいだった。
ゆっくりと上半身を起こしてみると、自分の手が真っ赤に染まっている事に気付いた。
うえぇ……何これ。
真っ赤な掌を顔に近付けて匂いを嗅いでみる。
臭い。
あの生臭さの原因はこれのようだ。
という事は、先ほど顔にかかった生ぬるい液体は何かの血液だったって事なんだろうか。
今私の顔は血まみれになってるって事?
気持ち悪い……。
鏡を見てみたいような、見たくないような……。
よし、とにかく今自分がどうなってるのかどういう状況なのかくらい把握しないといけないのでまずは鏡だ。
鏡を探そうと薄暗い部屋の中をぐるっと見回してみると……。
「ひっ!」
今まで気付かなかったけど、ベッドのすぐ横になんかよく分からない生き物の死骸が転がっていた。
頭部は存在せず、身体の方もお腹から下くらいしか残っていない。
肌は血で赤く染まっているが、無事なところは暗めの水色みたいな変な色をしている。
……もしかして、魔物……??
なんで魔物がこんなところで死んでるの?
それに、もしかして今私が浴びてるのってこの魔物の血って事?
だとしたらうえぇぇぇ……っ。
ちょっと口に入ったぺっぺっ!!
「もう一体なんなの……?」
気が付いたら全然知らない場所に寝かされてて頭から魔物の血をぶちまけられて……。
気持ち悪い……。
お風呂とか、あるかなぁ……?
その時、がちゃりとドアが開いて、ちっこいのが部屋に入ってきた。
「おぉ! お目覚めになられましたか……うわぁっ! こ、これはいったい……」
そのちっちゃいのは部屋の惨状を見て驚いたみたいだったが、こちらからは逆光になっていてどんな顔をしているのか、年齢がどのくらいなのかは見る事ができなかった。
「……あぁ、この馬鹿が失礼な事をしてしまったようですね……。あれほど早まった事はするなと言っておいたのに」
そう言いながらちっちゃいのがドアの脇でぴょんぴょん跳ね、壁についている水晶のような物を触ると部屋の四隅に明かりが灯った。
魔法による明かりのようだ。
「……ぺん、ぎん?」
部屋に入ってきたちっちゃいのは、どうみてもペンギンだった。
……いやいやいや。
それってどう考えたって魔物じゃん。
「……お怒りでしょうが……どうかお許し下さい。ジャルンはこちらで始末しておきますのでどうか、どうかお怒りをお静め下さい……」
「まっ、まも……」
魔物。
私は、言葉を失ってしまった。
何故だかこのペンギンは私に深々と頭を下げ、謝るどころか命乞いをしているようにも見える。
「……べつに、怒ってないよ」
「……はっ?」
ペンギンが目を丸くして口をがぱっと開けて固まってしまう。
「怒ってないってば。なんでそんなびくびくしてるの?」
「そっ、それは……私の口からは言いにくいと言いますか、その……」
なんだかこのペンギンめちゃくちゃ怯えてる。
よく見てみると意外と可愛いかもしれない。
「いいから言って見てよ。怒らないからさ」
「そ、それでは……。その、貴女様は普段、気分がすぐれない時はその……すぐに我らの命を奪うので……」
「はぁ?」
「すいませんすいません申し訳ありません! 許して下さい!!」
ちょっとどういう事?
全然状況がわかんない。
「私が? 命を奪うって殺すって事でしょ? 貴方達を? ありえないって」
私の言葉にまたペンギンが不思議そうな顔で固まってしまう。
「もしかして……。あ、あの! 私の名前、お分かりですか?」
「え、知らないよペンギンじゃないの? あ、ペンギーとかどう? 可愛くない?」
「……なんと……。貴女様が私の名前を憶えていなくともおかしくは無いのですが、さすがに様子がおかしいですね。もしかして貴女は今自分が何者なのかも理解されていないのでしょうか?」
知らないよそんなの。
「気が付いたらこのベッドで寝てたしいきなり顔に変なもんぶっかけられてさぁ……あ、そうだよそんな事よりお風呂入りたい! 臭いし気持ち悪いしなんとかして!」
「これはこれは……なんだか複雑な気分ですが……我々にとっては朗報なのやもしれません」
何言ってるか全然わかんないよ。とりあえず人の話聞いて。
「だーかーらー!」
「あ、ハイ。ではお風呂まで案内致しましょう」
そこでペンギンはこちらの目を見つめ、そのふっさふさな眉毛を下げながらにっこりと笑った。
「こちらです。メアリー様」
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