妹的に許せない事。
「……うぅ……ここ、どこ……?」
見渡す限り砂。
砂砂砂砂。
「……あづい……」
これが噂に聞く砂漠ってやつだろうか。
でもなんで私砂漠なんかに居るんだろう。
魔王軍と戦った時の事を思い出してみるけど、途中までしか思い出せない。
確か……。
そうだ、そうだった。
おにいちゃんが負けちゃったんだった。
ずっとずっと探してたおにいちゃん。
やっと見つけたと思ったらなんだか物凄く強くなってて……。
そして、何故か可愛い女の子になってた。
おにいちゃんでおねえちゃん。
……あぁ……たまんない。
許されるのなら足腰立たなくなるくらいに……って、そうだった。
そう、物凄く強くなっていた筈のおにいちゃんは魔王に負けてしまった。
おにいちゃんとおなじ顔……ううん、すっごく似てるけど違う。
その、おにいちゃんに似た顔で……そして、なんか変な物がついてた。
変な物がついた魔王におにいちゃんは負けてとりこまれちゃった。
あの女……?
魔王の中でおにいちゃんは生きてるのだろうか。
それとも、もう……ダメなのかな。
ずっとずっと探してやっと見つけたのにまた私の前からいなくなっちゃうなんて酷いよ。
おにいちゃんのばか。
今度会えたら絶対にめちゃくちゃにしてやる。
泣いても謝っても許してあげないんだから。
あの後魔王もどうなったのか分からないし、もしかしたらどうにかする方法があるかもしれない。
だからあの時あそこに居た人たちを探そう。
会っていろいろ話を聞いて情報を集めないと。
情報は命だって師匠も言ってた。
師匠は本当にどうしようも無い人だけど言う事は大抵の場合正しい。
そう決めたはいいけど、見渡す限りの砂漠でどっち行っていいか分からないし暑い。熱い。
こりゃ死んだかなぁ……。
そもそも私なんでこんな所に倒れてたんだろう。普通にこんなとこで倒れてたら脱水で死んじゃうと思うんだけどなぁ……。
はぁ……暑い……。
死んじゃう。
一歩一歩砂を踏みしめて歩く度に汗が噴き出て、体力を奪われていく。
そして、どれくらい歩いただろう。
気合と根性だけでなんとか一歩、また一歩と踏みしめていくうちに空が暗くなってきて、満点の星空が広がった。
あれだけ暑かった気温も、気が付けば大分涼しく……いや、あれ? なんか変だ。
寒くない?
え、寒い。
寒い寒い寒い何これ!!
夜になったと思ったら今度はめちゃくちゃ寒くなった。
変な場所だ……。なんでこんなに気温差があるのかとかちょっとは気になるけど、そんな事より寒くて死んじゃいそう。
これってなんとか夜をしのいでまた明日になったら再び暑くて死にそうになる奴だ。
体力は……なんとかまだ大丈夫。
それなら、寒いと感じているうちに出来る限り距離を稼ぐ。
寒いなら走って体が熱くなっても大丈夫だし。日中に走ったら一キロくらいで倒れそうだし。
よし、そうと決まれば走ろう。
思いっきり。今夜中にここを抜け出すくらいのつもりで頑張る。
暗くてあまり見通しは良くないけど星の光で地面の起伏くらいは分かる。
これだったら大丈夫、走っていける。
おにいちゃん見てて。私頑張るから。
そう意気込んで思い切り砂の丘を幾つも越えていく。
この気温ならむしろ走った方が体温維持できるし快適だ。
筋肉は少し委縮してしまっているけれどもう少し温まればいつものコンディションまで持っていけるはず。
後は水分だけ、なんとかして水がある場所を探さないと。
段々この状況に活路が見いだせた事にテンションが上がり、走るスピードがどんどんあがっていく。
だから、気が付かなかった。
ひょいと飛び越えた砂の丘。
その向こうがいきなり崖になってる事に。
「……えっ?」
足は急に止まらず、三回くらい空を切る。
……砂漠に、崖?
勢いよく走ってたから崖っぷちの所を手で掴もうにも距離が離れすぎた。
あーこれむり。
しんだ。
なんで私がこんな目にあうの?
ぜんぶぜんぶおにいちゃんのせいだ。
おにいちゃんが悪いんだよ?
だから……
せきにん、とってよ。
そんな事を考えながら私は崖の下に吸い込まれていった。
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