らいごす君の大決意。
「ダメだよ! パパが一生懸命に働いたお金なんだから私が助からないならパパの為に使わなきゃダメだよ!」
「うっせーんだよガキが!」
ギラリ。
ガメルが服の内側から光る何かを取り出した
……刃物!?
気付いた時にはその刃物がリナリーに向かい振り上げられた所だった。
「り、リナリー!!」
パパとやらも一瞬遅れて気付いたが、間に合わぬ。
その瞬間、我は放り棄てられた。
ズバッと鮮血が舞う。
「シロ!! シロ!! しっかりして!!」
「クソっ! なんだこの犬……じゃましやがって!」
我の目の前で、白いもふもふ……いや、シロはリナリーを守ろうとガメルに飛び掛かり、凶刃を受けた。
その場に崩れ落ち、足から血を流している。
「シロ……私より先に死なないで……お願い……」
なんと切ない願いだろうか。
「な、なななな……なんだお前!? どこから現れた!?」
ガメルの声は、明らかに突然現れた巨漢の我に向けられた物だったが、相手にするのも腹立たしい。
「リナリー、シロを見せるのである。……これならきちんと処置をすれば命は助かるであろう」
思ったより傷は深くない。
もしかしたら元気に走り回る事はできないかもしれないが、死にはしないだろう。
「な……、な……」
パパとやらも我を見て顎が外れるほど口を開け、腰を抜かしていた。
そう言えば今我の頭どうなっているのであろう。元の姿か、それともぬいぐるみか……いや、今はそんな事どうでもいい。
「くぅ~ん」
シロは我の事をちゃんとわかっているらしく、傷の具合を見ていた我の手を舐めた。
「シロ、よくやった。後は我に任せるのである」
「てめぇ何もんだ! どっから現れたって聞いて……」
「喧しいわこの外道がぁぁっ!!」
思い切り、何の遠慮もなく渾身の拳をその頬に叩きこむ。
「……!」
ガメルはそれ以上言葉を発する事も出来ずに遥か彼方へ吹き飛び、空中で身体がバラバラになったのが見えた。
……人は、殺さぬと決めたつもりであったのだがな……。
「ばっ、ばけ、もの……」
「パパ! らいごす君は私達を守ってくれたんだよ!?」
「リナリー! 早く家に入りなさい! ば、化け物は、私が……! こ、こい化け物! リナリーには指一本触れさせんぞ!!」
……腰を抜かしたまま地べたで何を言うか。
しかし、その意気やよし。
「パパとやらよ」
「ひ、ひぃっ!」
「まぁ聞け。我はもう行く。迷惑をかけたのである……早くシロを手当てしてやれ。今なら助かる。……それと、この先もお前がリナリーを守れ」
「え……え……?」
「らいごす君行っちゃうの……?」
パパとやらは状況がまるで飲み込めずリナリーと我を何度も交互に見ていた。
「リナリー。大丈夫なのである。我が、必ずお主を助けてみせる。だから、諦めずに生きるのだ。生きて我が吉報を持ってくるのを待つのである」
「……きっぽー? うん、わかった。らいごす君との約束。必ず守るから、らいごす君も……絶対またここに来てね……?」
必ず助けて、ではなく
またここに来てね……であるか。
「……約束、するのである」
我は最後にリナリーとシロの頭を一撫でして、その場を後にした。
必ず、あの少女を助けてみせる。
我の頭の中には助ける方法が一つ、浮かんでいた。
我の近くに居たではないか。死なない身体の持ち主が。
間違いなく困難な道になるであろう。
しかし、必ず。必ずだ。
手に入れてみせる。
その為には【ソレ】と【知識】の二つが必要であろう。
まずは、ソレの情報を集めつつ大賢者を探す。
それが一番の近道の筈である。
我が戻るその日まで。
生きるのを諦めるな。
我は振り返らず、まだ遠目に我の背中を見ているであろうリナリーに合図をするように、腕をあげ軽く手を振った。
……と、かっこよく決めたのに。
我の身体はぽんっという軽い音と共にぬぐるみに変わっていた。
さて、この身体をどうにかする方法も考えなくてはいけないのであるなぁ。
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