ぼっち姫、救世主は遅れてやってくる。
最低最悪の希望だが、この状況において最早頼りになるのはショコラしかいない。
もうどんな酷い終わり方になっても構わないからこの女を足腰立たなくしてやれ!
ただ、問題なのは敵はメア一人ではないという事だ。
まだ沢山魔物達は残っている。
空から来ていた奴等はめりにゃんの一撃と、メアとの闘いに巻き込まれた奴等もいるからかなり減っているしそちらは問題ないだろう。
しかし、地上部隊はまだ半数程残っている。
そして、メアを無視して魔物の群れを先に片付けるなんて訳にはいかないだろう。
こうなったら即座にメアを無力化してから、魔物を引かせるか、殲滅するか。
そのどちらかしか選択肢が無い。
ライゴスとデュクシ、ナーリアはまだ復帰できずに倒れたままだ。
よもや既に息が無いという事はないと信じたいが……。
ショコラはまだ森の中か?
今のこの状況を把握できていないのかもしれない。
しかしあいつの事だから空に俺達が居ないのに気付けば何かあったと察してくれるだろう。
ここまで辿り着けばすぐにでも自分がやるべき事を理解できる筈だ。
その、やるべき事、というのが最低な手段なのだが……そんなものに縋るしかないこの不甲斐なさ。
我ながら情けない……。
『落ち込まないで下さい。今はそれに賭けるしかありません』
んなこたぁ分かってんだよ。
でもさ、よく考えてみろよ。俺とメディファスとめりにゃんの三人が力を合わせて勝てなかった相手が卑猥な技に身悶えしてショコラがドヤ顔。
それってあんまりにあんまりじゃないか?
『……それに関しては同意せざるを得ません』
そうだろう?
かといってショコラが負けるような事があったら本当にもう打つ手が無い。
俺達の命運はショコラの卑猥な技にゆだねられてしまったわけだ。
そして俺はその最悪な闘いを一番近くで見なきゃならない。
とにかくメアを無力化さえできれば魔物の群れくらいどうにかなるだろうし、俺とメディファスの事はアシュリーがきっとなんとかしてくれる。
だから早く来てくれショコラよ。
「……貴女がたのお姫様は、残念ながら私の一部にさせてもらったわ。あの力ももうすぐ私の物。もし寂しいなら貴女達も一緒に取り込んであげるけれどどうする?」
「……ありがたい申し出、とすら思えないわね。寝言は寝て言え」
「口の悪いお子様だこと。……いや、エルフだったら見かけと年齢は違うのかしらね?」
「残念だけど私はまだ十九よ」
マジか。
てっきりロリババァの類だと思ってたんだが……。
いや、よく考えたらナーリアが妹の時点でそんなに年齢が行ってる筈なかったな。
……だったらナーリアっていくつなんだよ。
あの身長とスタイルで十代だと……?
まてまて。そんな事はこの際どうだっていい。問題はメアとアシュリーが相性最悪な事だ。
メアはアシュリーを切れさせる要素満載すぎる。
アシュリーも今の状況がどれだけまずいかくらいは理解している筈だから不用意にブチ切れて見境なく破壊魔法ぶちかますような事はしないと思うが。
「十九? 私より年上でそんなにちんちくりんなの? ……可哀想に」
「てめぇぶっ殺す!!」
見境なく破壊魔法ぶちかますような事はしないと思うが。
しないと思うが。
おい、やめろ!
「気にしてるの? ごめんなさいね。でもその年齢でその体形じゃもう育つ事は無いと思うわよ? 幼女趣味の変態もいると思うから気にする事無いんじゃない?」
メアはそう言ってくすくす笑った。
これはもうダメだ。この後の展開が手に取るように分かる。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
アシュリーがメアに向かって杖を向け、巨大な光線のような物が一直線にメアを貫く。
いや、貫くというよりは包み込む。
光が全身を一気に吹き飛ばして俺の意識も一瞬混濁したが、メアはすぐに再生して元通りの姿でまたくすくすと笑うのだ。
それにしても再生が早すぎる。俺の不死の身体とは明らかに再生のシステムが違う。
メアを通りぬけていった魔法はそのまま大量の魔物達を巻き込んで大爆発を起こす。
大量の魔物が砕け散り、灰になり、そしてエルフの森が燃える。
おいおいデュクシ達大丈夫なんだろうな……?
爆風で吹き飛んではいるが、あの魔法で消し飛んだりはしてないみたいだ。
その爆風に耐え切れなかったのか、アシュリーの近くでがっくりと項垂れていためりにゃんがごろごろと転がって近くの建物に打ち付けられる。
めりにゃんは、意識はしっかりしているのだが既に立ち上がる気力すら失ってしまっていた。
そんなに俺が負けたのがショックだったのか?
それとも、俺が手を離した事がショックだったのか?
もし後者ならば、俺はめりにゃんを裏切ってしまった事になる。
でもそれでも、めりにゃんには生きていてほしいし、今すぐにでもここから逃げ出してほしい。
アシュリーが一瞬ビクっと身体を震わせたのが見えた。
あの魔法でなんらダメージを受けていないメアを見て……ではない。
アシュリーの視線はメア、俺達よりも後ろに向いていた。
待ってたぞ。
お前が最後の希望だ。
どんな手段でも構わないからやっちまえ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます