ぼっち姫、あるのか、ないのか。
「神様じゃと……? セスティ、もしかしてこいつが……」
「あぁ、間違いねぇ俺の身体をこんな事にした奴だぜ」
アルプトラウムとかいう神様は、見た目も年齢不詳だった。
魔王の透き通るようなシルバーの髪とは違って、光沢の無い、光を全て吸い込んでしまうような長い銀髪を腰の辺りで一つに縛っている。
幾つも重ね着をしたような不思議な服を着ていて、全体的にぶかぶかな感じ。
どこか厳かな雰囲気がするあたり腐っても神様って事なんだろう。
こいつが本当に神様だったらの話だが。
『こうやって姿を見せるのは初めてだったね。いやいや君の事はずっと見ていたよ。私が思っていた以上にとても面白い事になってくれたね。頑張ってお膳立てをした甲斐があると言う物だよ』
神様とやらはそう言って無駄に整った顔が崩れる程にニヤっと笑った。
「しかし神様とか言いながら魔王様と繋がってるとはね。やられたよ。俺の身体ももう弄られた後みたいだしな」
『先ほど言ったがね、別に身体を元の状態に戻す事など造作もない事だよ。それと、何か勘違いをしているようだが魔王と繋がってなどいないさ。たまたま目をかけていた者が魔王になってしまっただけだよ』
元の状態に戻すことが出来る……?
まだ俺は自分の身体を取り戻せる可能性があるという事か?
『ちなみに、だけれど……もしも君がうちの姫様を倒せるようならば元の体に戻してあげようじゃないか。もともと魔王を倒したら戻してあげようという約束だからね』
「アル。いい加減私とその子の話に水を差すのをやめてもらえるかしら? それにそんな約束してたの? 私聞いてないんだけれど」
「おやおや。それは話してないから聞いてないだろうね。さて……うちの姫様はどうやらお怒りのようだから少し離れた所で見守っている事にしよう。ではね、二人のお姫様。……いや、三人だったかな」
そういって笑いながら、その体が透明になっていき、やがて消えうせた。
「ふふ。いろいろ予想外の事が起きて混乱してるって顔ね」
「そりゃそうだろうよ。こっちからしたらいきなりドラゴンに襲われて返り討ちにしたらこんな身体になってたんだぞ? しかも神様とやらは魔王倒せば元に戻してやるって言ったんだ。それなのにその神様は魔王と繋がってて、俺の身体は魔王が使ってて魔改造されて女の子になってるだぁ? もう勘弁してくれ頭がパンクしそうだ」
本当にこの女を倒せば元に戻れるのか?
あの神様の言う事をどこまで真に受けていいか分からないが、少なくともあいつと戦う気にはどうしてもなれない。
人の身体を入れ替えるような荒唐無稽な事をやってのける時点でまぁおそらく神様というのは本当なのだろうが、そんなのと戦って勝てる自信が無い。
アーティファクトと同化してから今まで自分が戦って負けるっていう想像が一切できなかったけれど、身体をさらに入れ替えられてその辺の虫にでも入れられたらと考えると恐ろしい。
「どうやらあまり頭がいい方ではないようね。でもそれくらいの方が可愛らしくていいわよ。そう、おつむの弱い子だった。私の大嫌いなあの子もね」
うるせぇこっちだっていろいろ考えてんだよ。
それに、あの子ってのが誰の事か分からないが……いや、きっとあいつだろうなぁ。
そうだ。この身体はあのロザリアとかいう姫さんの物だったはず。それなのにこの女は自分の身体だと言うし、どれが正解なんだ……?
あの首輪を一つマリスに食わせたっていうのに今回はだんまりを決め込みやがってあの女……。
「……まぁいいわ。今回は私の身体を使ってる貴方に用が有って来たのよ」
そりゃ光栄だね。
さっさと身体返しやがれ。
実際まだちゃんとついてるのか。
それが気になって仕方がなかった。
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