ぼっち姫、魔改造女と神様。


「せ、セスティ……こやつは、何者じゃ……?」


 それは私が聞きたい。

 どうして私と同じ顔をしてる?

 どうしてあの爆発の中生きていられる?


「メディファス。アレは何?」


『不明。我には分かりかねます』


 役にたったかと思ったらすぐこれだ。


『主、これは流石に我の責任ではありません』


「知ってる。八つ当たりくらいさせて」


『……不条理』


 ぶつぶつ言ってるメディファスはどうでもいい。

 目の前に浮いてるこの女だ。


 身長は私よりも高い気がする。

 ちょうど今の私と同じようなドレス風の真っ黒い服を着ていて、大きなスリットから足が太ももまで覗いている。


 顔立ちはどうみても私と一緒。

 なのに明らかに私と違うのはその髪の毛の色。

 私はシルバー寄りのブロンドだけど、こいつは完全なるシルバー。

 白髪みたいな色とは違って、銀色。


 その女はシルバーの髪を風になびかせて妖しく微笑んでいる。


 胸元は大きく空いていて、谷間が見えてるんだけどそれも私よりは大きい。


 いろいろな面で妖しさが凄い。

 まるで作り物。人では無いような、それでいてどこか儚い感じもする。


「ちょっとあんた何者? 私とうり二つだけど……この身体の元の持ち主の関係者?」



 その言葉に女は「くっくっ」と手の甲を口元に当てて笑いを堪える。


「何がおかしいのよこんにゃろー!」


「いえ、ごめんなさいね。私の身体に入っているのは確か男の戦士だって聞いていたのだけれど……随分可愛らしい女の子だと思って」


 そう言ってまた女は笑いを堪えるように手の甲を口に当てたけど、やがて堪えきれなくなったらしく体をくの字に折り曲げてけらけら笑いだした。


「あはっ、あははははっ、ダメ、我慢できないわおっかしい」


 私とそっくりで、私より全体的に色気マシマシな女が私を見て笑ってる。


 なんかめっちゃ腹立ってきた。


「あんたが何者かって聞いてたつもりだけど?」


「ふふふ……短気なお嬢さん、焦らずとも教えてあげるわ。その体はもともと私の物よ」


 ……うぇ? さっきもそんなような事言ってたけど、この身体の持ち主は今マリスの中じゃないの?


「……じゃあなんでこの体から出てった後も同じ外見してるの?」


「あぁ、ほんとはもっといかつい外見だったんだけれど……なんだかんだこの慣れた外見が恋しくなっちゃってね。それで全身いじくっちゃったのよね」


「要するに全身整形女って事ね」


「……その言い方はちょっとイラつくわ。元はと言えば貴方の身体が美しくなかったのが問題だというのに」


 ちょっと待て。

 待て待て待て待て今なんて言いやがったこいつ。


 私の、いや、俺の身体が美しくなかったからだと、そう言ったのか?


「何を怒ってるのかしら? 自分の身体が醜かったらそれをどうにかしようというのは女心として当然でしょう?」


 整形女はそう言って笑う。

 今度は俺を見下すように。


「という事はじゃ、……もしかしてお主あの時の……!?」


「あら元魔王様。やっと気付いてくれたのかしら? あの時は楽しかったわ。私もさすがにちょっと疲れたもの」


 どうやらめりにゃんと戦った時にはこの外見じゃなかったらしい。

 だとしたら


 だとしたらめりにゃんと戦った男というのは……。


「あの時戦った男は、セスティじゃったのか!?」


 勿論俺の身体、という意味だ。

 めりにゃんだってそんな事は分かってる。


「そうか、あれがセスティの元の外見なのじゃな……」


 めりにゃんがちらっとこちらの顔を覗き見てくる。

 なんだ何が言いたい?


「セスティ、あの外見も嫌いではないのじゃが……今のままでいいんじゃないかのう?」


「おいコラ」


「じょ、冗談じゃ冗談! ……しかし、実際問題お主の身体はもうあんな事になってしもうたみたいじゃぞ」


 それだそれ。

 問題はそれですよ魔王様。


「おいおい。ひと様の身体を勝手に女に魔改造しやがって……ちゃんとつくもんついてるんだろうな!?」


「まず気にするのはそこなの? ……ふふ、どっちだと思う……?」


 そういって整形女がスリット部分を掴み、ピラっと服を捲るような動作をする。


「こ、こらやめろ!」


「なぜ貴方がそんなに慌てるのかしら? ほらほら。気になるなら確認してみたらどう?」


 この野郎……。いや、このアマ?

 よくわからねぇがこいつのせいで俺の身体が、俺の身体が……。


「魔改造された身体に戻ったって結局女のままじゃねぇか!!」


『そうとも限らないさ』


 脳みそに直接響くような不思議な声。

 若いのか、老人なのか、それすらも分からないような不思議な声が脳を揺さぶる。


 この感覚には覚えがあるぞ。


「てんめぇ……とうとう現れやがったな!!」


 整形女のすぐ隣にいつから居たのか、男が立っていた。


『やぁ、私の名前はアルプトラウム。君らが言う所の……』


 知ってるよ馬鹿野郎!


『神様、だよ』

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