ぼっち姫、貞操の危機。
『我が主。起きて下さい』
メディファスの声が聞こえる。
一体何が起きた?
あのピンキーキャットとかいうふざけた名前をした奴が部屋に入ってきて……。
そうだ。急に攻撃してきたからそれを受けて……俺はちゃんと受けた筈だ。
なのになんで?
『あの者は自分の靴に毒針を仕込んでいたようです』
そういう事か。
だとしても、今も体がまったく動かない理由がわからない。
口を開こうとしても唇がかすかに震える程度でまったく声を出せない。
一歩間違えれば心臓が、血液を送り出す為の動きすらやめてしまいそうだ。
それに俺の体は状態の変化を許さない。
仮に毒を受けた所で、数分もすれば体内から毒など消え去る筈だ。
『我もその点が気になっているのです。主の身体の件については詳しく存じている訳ではありませんが、以前聞いた話ではどんな外傷も内傷も元に戻ると……』
そうだ。俺にこういう類の攻撃は効かない筈だ。
それがどういう訳か全く動けなくなってしまっている。
それにしてもメディファスがこちらの心を読めるというのが初めて役に立った気がするな。
『初めて、というのは心外です』
拗ねるなよ。それで、今はどういう状況なんだ?
どうやら俺は目隠しでもされているらしい。
視界は真っ暗。
手足は全く動かないので縛られてるのかどうかも分からない。
『分かる範囲で説明をしましょう。あの後意識を失ったデュクシと主はそれぞれ檻のような物に入れられ運ばれました。ちなみに意識を失ってから既に丸一日以上経過しております』
なんだって!?
じゃあナーリアをそれだけ放置してしまってる事になるし、ライゴスはともかくめりにゃんをずっとお留守番させてる事になる。
心配してるだろうな……ナーリア大丈夫かな。
『主を運び出そうとしていた連中の話によればナーリアは無事であるかと思われます。どうやら今日、競売にかけられるとか』
……そうか。カジノに乗り込んだあの時点でかなり遅い時間だった。そこから丸一日以上が経過しているとなると、オークションは今日……俺も商品の一つという事か。
大体今の状況は分かったけど、結局この毒の事は何か分からないのか?
『それが、我のデータベースに存在しない成分で生成されています』
どういう事だよ。そもそもそのデータベースってやつはどんだけ信頼出来る物なんだ?
『少なくとも自然の物であれば全て分かります。合成物についても成分解析で何と何を合成しているのか、というのは判別可能なのですが……』
それでも分からないって事か。
『肯定。成分の幾つかまでは把握する事が出来たのですが残り四割ほどが不明です。我の力で解毒するのはかなり時間を要するかと』
またそれか。
お前何かっていうと時間を要するとか言うよな。
さっと何かできた事の方が少ないんじゃねぇか?
『否定。誤解があります。どちらかというと主が特殊な状況に直面する機会が多すぎるだけなのでは』
うるせぇよ。
しかしいつまでこの状態が続く?
時間かかってでもいいからなんとかしてくれ。このままじゃ本当に売られちまうぞ。
まぁその場合売られた先で回復し次第暴れるなり逃げ出すなりすればいいんだけど、その場合問題もある。
まず、他のメンバーが散り散りに売られていった場合探すのが非常に面倒になる。
非合法で購入した奴隷なんて周知するもんでもないし、辿り着けるかどうか分からなくなってしまう。
もう一つの問題は心身の無事だ。
デュクシはともかくナーリアは売られて行った先で何をされるか分からない。
それに俺だってこの身動き取れない状況が長引くようだと買い手に何をされるか……。考えただけで怖気が走る。
『それを見ていなければいけないとしたらこちらとしてもなかなかキツイ物があります』
いや、お前は助けろよ。それくらい出来るだろう?
『肯定。しかしながら相手を行動不能にする事ができたとして、それ以上の手助けができませんから結局のところこの症状を解毒しない事には餓死を招くかと』
うげ……。
そんな事言われたら急に腹が減ってきた気がする。
全く感覚がなくてこれが空腹なのかどうかも自信がないけれど……。
なんか自分の体が麻痺して、むしろ首から下が切り落とされてるんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。
……ん?
なんだか周りが少し騒がしくなってきたような気がする。
もしかしたら本当にこのまま俺は売られてしまうのか?
だんだんと恐れていた事が現実になりかけている。
そんな事になってしまったら……。
嫌だ。さすがに怖い。
私……このまま成金の糞野郎に買われて……。
『……』
私は誰がどう見たって美少女なんだから買主が放っておくわけないし……。
『……』
そんな事になったら絶対ひどい事される。
私キモデブオヤジの性奴隷なんて絶対に嫌よ!!
『……』
ちょっとアンタもなんか言いなさいよ!!
『きつい』
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