#47 激突!白き吸血少女せつな

 

 紺とシャロットが祭りの行われていた大きな公園へ足を踏み入れた時だった。例によって例の如く、辺りの色が灰色、……モノクロの世界へと変貌していく。

 その全てが色を失った時、二人の前に一際目立つ白が存在した。白き吸血少女、せつなの姿が。


 しかし、白き、とは言ったものの、そのせつなを取り巻く瘴気は闇、つまり黒であって、白いせつなを、黒い闇が取り込もうとしているかに見えた。


「毎度のことながら…飽きないな…シャロット、せつなちゃんを解放するぞ!今すぐキッスだ!」


『のよよ⁉︎ロリ紺っ、どんどん頭角を現しはじめているのよ、ロリコンの!』


「ごちゃごちゃ言ってねーの!一刻を争生んだから!」


『にっしし、それではいただくのよ〜!』


 シャロットはピョンと跳ねて紺に正面から抱きつくと、躊躇なくその唇に自らの唇を重ねた。そして紺の身体に溶け込むように同化する。


 紺は無の器に神、……幼女を取り込む事で力を最大限まで引き出す事が出来る!ロリコンだからかどうかは知らないが、無属性の紺色の魔力を有する者の特権だ。逆に自分自身では簡単な拘束魔術しか使えない。


「よし、まずは……」

『エロい拘束具なのよーー!!!!』


「エロくねーわ!謝れ俺にっ!」


 そう言って紺色の鎖を巡らせると、簡単にせつなを捉える事が出来た。那月環奈や凪沙凪子のような上級生と違って、やはり下級生組は戦闘能力は低いみたいだ。そう踏んだ紺は一気に勝負を決めるべく、距離を詰めせつなの小さな肩に手を当てた。


 その時、紺は真っ赤に光った瞳を目にした。その瞬間、


「ぐおぉっ⁉︎……っな、んだっ⁉︎」

『のんよーーーー⁉︎』


 紺は弾き飛ばされるようにして無様な格好で地面を転がっていく。やがて止まって、何とか立ち上がった紺は目の前の吸血少女は今までの下級生組とは別格だと認識した。


「今のでわかった、せつなちゃんは中々厄介そうだ。……単純に強い。」

『本来、吸血鬼は人間の何十倍、下手すれば何百倍もの戦闘能力を有してるものなのよ…』


 話し込んでいると、せつなが鎖を引きちぎり前進を開始した。そのダメージは紺にフィードバックする。痛みに耐えながら紺は環奈戦で使用したトラップ式の拘束魔術を発動!

 しかし、それをせつなが踏んだ瞬間、あっさり蒸発してしまう。とにかく、圧倒的に、普通に強い。


「ど、どうする?」

『拘束具を封じられた変態に打つ手なんてないのよ!』


「くそ……そ、そうだ幼女!」


『幼女じゃなくてシャロットなのよ!』


「俺が体内でお前を血液に変換してやる…!」


『……へ?』


「今の俺なら、なんとなくやれそうな感じがするんだよ!で、血を吸われてやるからお前がせつなちゃんの体内から闇を討つって作戦だ!魔力と一緒に流し込んでやるから。」


『や、やめろなのよ⁉︎か、仮にも髪であるこのわたちに、お前の血になれと!……ロリコン拗らせて遂にやっちまった変態なのよーー⁉︎』


「だって、外からの攻撃無理だし。……観念して俺になっちまえよ!後で戻してやるから!」


『戻れる保証は、』

「ないけどな!……って…もう目の前にいるわ。」



 紺の目の前までフラフラと歩いて来たせつなは小さな口をパクパクさせながら近づいていく。


「こ、鯉か……」


「……ち、……血、……血。」


「いいぜ、吸えよ。」


 紺はせつなの目線に合わせ身体を低くした。せつなはそんな紺の首元を、


 カプ……チュゥゥ……


『の、の、の、のんよーーーー⁉︎』



 紺の血液に変換された神、シャロットが吸われていく。


『お、おぼえてろなのよーー⁉︎』



「……プハァ。」


 満足気なせつなは公園のベンチにちょこんと座り、


 眠った。


 紺は貧血で倒れ、遂にせつなの体内へ侵入したシャロット頼みとなったのだった。

 幼女神シャロットは無事、せつなの体内に蔓延る闇喰を討ち取る事が出来るのか。



 …………







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