57.リーゼロッテの計画

■もくてき

 ルイスとけっこんする。ずっといっしょにいる。


■もくてき、ぐたいてきに

 ろうどうしゃかいきゅうのつまになる。

 そのための、べんきょうをする。


■やること。ぐたいてき

 べんきょう(こくご、すうがく、ちり、れきし、ていこくご、なんでもやる)

 おしゃれ(おけしょう、おはだのおていれ、ヘアスタイル、ドレスのセンス)

 かじをする(りょうり、ほうきではく、ぞうきんがけ、かたづけ)

 本をよむ

 いきいきとあそぶ

 たくさんねる(よるもねて、おひるねもちゃんとする)

 やさいをたべる

 人としゃべる

 たくさんのものを見る


■やること。くわしく

 かけざんをおぼえる。十二×十二のひょうをおぼえる

 もじのかきとりをまい日する。一日、さいていノート一ページ

 カティヤにふくのそうだんをする

 りょうりをおしえてもらう(エステルとりょうりちょうにおねがいする)

 ほうきでゆかをはく(リビング、じぶんのへや)

 へやをかたづける

 せんたくをする(ミアにおしえてもらう)


 ノートからは一生懸命に目的をかなえようとする子どもの気持ちが伝わってきた。簡単にあきらめるような雰囲気ではない。計画は詳細で、執拗に感じられた。

 ルイスは複雑な気持ちでノートを閉じた。


『まず、リーゼの好きなことややりたいことを見つけてください。見つかったら、それをどうやって叶えたらいいのか、具体的に方法を書き出してみるのがよいでしょう』


 そう過去に、彼女に教えたのは自分だった。まさか、こんな目的のために使われるとは、夢にも思わなかったが。


『目的に近づくための方法は、できるだけ細かいほうがよいですね。たとえば「帝国語を憶えたい」という夢を持ったとします。「参考書を読む」などのおおざっぱな目的だと、ついさぼってしまいがちになります。「一日に参考書の一ページを書き取りする」とか「単語を十個暗記する」くらい、具体性があるほうがよいですね』


 そんなことも言った。


 あとで聞いたことだが、どうやらリーゼロッテは「どうすれば労働者階級の男の妻になれるのか?」「そうなった場合、使用人の妻は一体どんな仕事をするのか?」ということを使用人たちに聞きまわっていたらしい。


 ルイスの教えたやり方に従って、目標へ向かう道筋を作って、具体的なタスクをこなすことで夢をかなえようとしているのか。ひたむきで健気で哀れだった。


 そのあとで、二重丸のついた、三つの特記事項があることに気づいた。


◎エステル

「ろうどうしゃのつまは、ふつう、かじをする」「かていをけんぜんにうんえいするもの」

 だいじなことは、まじめにおべんきょうをすること。おぎょうぎよく、いい子にする。ぜんりょうな、しゅうきょうてきどうとくかんをだいじにする。まい日かみさまにいのる。


◎カティヤ

「おんなは、びぼうとわかさ」

 おしゃれにきをつかう。おけしょうをする。おはだをきれいにたもつ。ばらすいのコールドクリームがいい。ドレスもかみがたもきれいにする。あまいこえではなす。

 きほん、おとこは、おんなと、さけと、たべものでつる。

「それでだめだったら、ろうどうかいきゅうなんて、さつたばでひっぱたけばいうことをきく」


◎ミア

 むずかしくて、わからない。

 ミアはごちそうをくれる人がすき。

 ルイス先生にも、ごちそうとか、あげてみては。あと、おかねとか、なんでもいいものをあげてみてはどうか。


 仲良しのメイドたちからもアドバイスをもらったようだ。大事そうに別枠に表記されていた。

 しかしこの回答に関しては、彼女たちともリーゼロッテ本人とも、すこしばかり語り合う必要がありそうだ。


 そしてノートの最後には、このような一文が刻まれていた。


『ルイスのすきなものをさがす』

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