第410話 アメリカ陸軍対魔法少女1
ニューヨークのソーホー地区と呼ばれた場所にアメリカ陸軍、第一大隊が集結していた。
ここは元々スラム街であったが、23世紀頃に流行した
ところがその目新しい技術のブームが去ると、21世紀風のミニマル指向のシンプルなコンドミニアムがもてはやされ、街全体がすっかりと旧時代のものと成り果ててしまった。今ではベーシック・インカムだけで生活する、『無所得者』向けとして流用されている。治安が悪いわけではないが、あたりはベーシック・インカム者向けの店舗がほとんどで、質よりも量の多さを自慢する店舗や商品ばかりがあふれていた。
すでに建造より二百年も経っているものも多く、デザインの古めかしさだけでなく、耐久性にもいくぶん疑問符がつく建物も多かった。
「ソーホー地区の自然史博物館とは、まったく因果なとこがヒットしたものね」
アメリカ陸軍の第二大隊をひきいるスージー・クワトロ中佐は、目の前の尖塔を見あげながら、ため息交じりに言った。
24世紀末頃に頻発した黒人警官による白人殺しがきっかけに起きた「ホワイト・ライブ・マター」運動が、アメリカ中に広がるきっかけになったのが、このソーホーの自然史博物館の前で起きた事件だった。
この運動の広がりで、警察官の黒人の採用枠がおおきく減らされたため、黒人である(実際にはスパニッシュとアジアも混じっていたが)スージーはその夢をあきらめ、軍人の道を選ぶことになった。
はじめて訪れる場所だったが、スージーにとってここは因縁の場所と言っていい。
そしてこのソーホーは、アメリカの人口のわずか15%程度の少数派の白人の比率が、かなり多い場所でもあった。
その建物は高層ビル街でもひときわ高い尖塔だった。
『魔法少女』によって殺された死体が、集積されている可能性があるらしいと、国際連邦軍によって特定された場所だ。すでに50年ほど前に博物館としての役割を終え、今ではAIが管理するただの倉庫と化していた。
スージーは250人の兵隊と200体の『素体』を使ったアンドロイド兵、そして50体のロボット兵の約500人ほどの大隊を、3つの隊にわけてスタンバイさせていた。
『植物園』なるものがあった南側入り口のエリアにはロギンズ少佐を配置し、尖塔の展望台からエレベーターシャフト(昇降路)内を降下する部隊長をガイル少佐に任命した。
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