第404話 ブリティッシュ作戦カウントダウンに入る

「形式的なものだけですよ」


 ミライが苦笑いをしながらそう言うのを聞いて、とたんに力が抜けた。ほっとする思いだったが、ふと、自分がもしこの場に恒久的に座れる権利を得たとしたら、そのときは全責任はみずからで負わねばならないことに金田日は気づいた。

 心の底から望んではいたが、はたして自分はその責に耐えられるだろうか……。

 だが、すくなくともエドは数年ものあいだ、この地位にいて、そのプレッシャーを受け続けていたのだ。

 たちまち自分がとんでもなく矮小な存在に感じられてきた。

 25世紀になっても相変わらず存在し続ける、対案もかかげず、他人の揚げ足取りに終始する人種。もしかしたら自分もそういうクズなカテゴリの人間になっていたのではないかと思えてきた。


「『ブリティッシュ作戦』。カウントダウンに入る!」

 ひときわ鋭い口調でカツライ司令官の檄が飛んだ。脳内にひびくと同時に、直接耳朶じだを揺さぶる。

 金田日はハッとして正面の大型モニタに目をむけた。すぐ前にはヤマトタケルをはじめとするパイロットたちが全員座って様子を見ていた。おそらく警備の草薙大佐もどこかでスタンバイしているにちがいない。


 背後から「いよいよね、はじめちゃん」という春日リンの声が聞こえた。だが、正面のモニタの数字が『5』を刻んでいるさなかに振り向いている余裕がない。


 数字が『0』になった瞬間、金田日は興奮をおさえきれず思わず腰を浮かしたが、なにも起きずそのまま数字はプラスをカウントされて続けていた。

「何も起きないのか」

 肩すかしをくらった気分で思わず呟いたが、それをミライの大声がさえぎった。

「光点、表示されます!」

 あわてて正面モニタに目をむける。

「その数300、いえ、350……」

 正面におおきく投影された世界地図上に、あらたに見つかった生体チップの信号が光点となって灯っていく。金田日が発見した魔法少女の発現スポットの赤い光点と、それが交わっていく。赤い光点の近くに集中的に集まっているものもあれば、まったくちがうところに一点だけポツンと穿うがたれるものもある。

 金田日はいそいで中空をタップすると、選別プログラムを実行した。

 すぐさま生体チップの場所と魔法少女の赤い光点がリンクされ、ふとい線でエリアごとに囲まれていく。

「まずは100箇所程度に絞れそうです」

 金田日はうしろにむかって声をあげた。興奮のあまり声が弾んでるのが自分でもわかる。

「その中でもっとも魔法少女が多そうなのはどこ?」

 カツライ司令官からの質問が飛ぶ。

 金田日はすぐに次のコマンドを命じた。すると投影された世界地図上に、炎がもえるようなアイコンが重なっていった。さまざまな大きさの炎。そのサイズで規模がわかるようになっている。


 そのサイズにしたがって、画面の横におおきさの順位が表示されていく。

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