第381話 対魔法少女戦・渋谷スクランブル交差点

「まじかるぅぅぅぅ」

 

 その声とともに魔法が放たれた。

 その光を浴びた重火器兵器や歩行型兵器のネジや接合部分が、目にもとまらない早さではずれていく。と半分くらいまで分解され、動力部分の内部構造がむきだしになったところで大爆発がおきる。青山通りのほとんどのビルの一階から火の手があがり、爆煙がふきだす。堅牢ではないビルのいくつかのビルはその爆発の衝撃で、一階部分がおおきく崩壊する。その損傷は上層階を支えきれないほど甚大だ。

 数棟がそのまま一階部分を押し潰して下に沈む——。

 またほかの数棟は二階部分からおおきく傾いで前方の青山通り側へ倒れそうになる——。

 

 魔法少女の群れは渋谷のスクランブル交差点へ流入してくる。真っ黒に塗りつぶされているため、そこが交差点なのかがすぐにはわからない。だが、そこには黒塗りの『電磁機雷装置』が配置されている。上を通りかかったものはなんであれ、電磁波が捉えて身動きできなくする。

 そしてその交差点を取り囲むように、ビルの上階部分に数百人の狙撃部隊、狙撃ロボット、狙撃アンドロイドがスタンバイしている。その指揮はバットーだ。バットーは『エア・バイク』の操縦アンドロイドに人格を憑依して、高層ビルの屋上でスタンバイしている。バイク部隊は全部で100台ほど。半数は銃のほかに対・魔法少女用の剣を帯刀している。


「バトー。この中間点でおおきく戦力を削ってもらわんと、本部内に相当数の魔法少女が到達してしまう」

「大佐。任せてください。と言いてぇとこだが、ちぃっと残りすぎだ。まぁ、できる限りそっちへいかせないようにしますぜ」

「できるだけ?。努力目標では困る」

「へいへい。全滅させてみせますよ」


 交差点の上を滑空していた魔法少女の先陣が、電磁機雷の電磁波に捕獲される。まるで『蜘蛛の巣』にひっかかった小さな虫のように、空中に釘付けになる。後続の魔法少女たちも次々と自由を奪われていく。

 周りのビルから一斉射撃がはじまる。

 耳を聾さんばかりの銃撃音、火花が漆黒に沈む交差点を色とりどりに彩る。なすすべもなく銃弾に撃ち抜かれていく魔法少女。器用に移行領域(トランジショナル・ゾーン)のベールを駆使して銃撃に耐える者もいる。だが、あらゆる方向からの銃撃に、やがて対抗しきれずに倒れていく。


 ベールの隙間やベールで覆いきれなかった箇所からの銃弾が、魔法少女を一気加勢に駆逐していく。

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