第375話 エド、どうして黙っていた!
「エド、どうして黙っていた!」
ヤマトはエドにいきなり強いことばを投げつけたが、とくにあわてることも、萎縮する様子もなかった。ゆっくりと眼鏡をずりあげてからそれに答えてきた。
「亜空間の切れ目のことかい?」
エドが自分を取り囲む
今その五人がスペクトル遮幕に囲まれた中で、車座になって座っていた。
ヤマトは声をさらに声を荒げてプレッシャーをかけてみた。
「それだけじゃない。今回のきみの立案した計画のことだ!」
「タケルくん。きみはどうやってそのことを知ったのかね?」
エドはきわめて冷静にヤマトへ反撃してきた。
「そんなことはどうだっていいだろう?」
「そうはいかない。今回の計画はぼくしか知りえない情報が含まれる。なぜきみがそれを知りえたのか、たいへん興味がある」
エドはヤマトの顔を正面から見つめた。その視線に誘導されるように、ほかの面々もヤマトのほうへ視線をむけた。ヤマトはみんながその答えを聞くまでは、次の段階に進めないと観念したらしく、不承不承というていで口をひらいた。
「ぼくの頭に埋め込まれている『情報』は、なにか新たに不測の事態に見舞われると、更新されるようになっている。いや、更新というより元からある情報のロックがはずれて、元から知っていたかのように認識される、というべきかな……」
もちろん嘘だ——。
「ふうん。ずいぶん都合がいい脳のようだね」
エドは皮肉交じりに言ってきた。いままでそのような当てこすりをする人間ではなかっただけにヤマトは驚いた。もしかしたらストレートな感想なのかもしれないが、ヤマトはそう受け取った。だが、リンもアルもおなじように違和感を感じているようだった。
「まぁ、いいさ。そんなことは今さらどうでもいい」
いやにあっさりとエドは引き下がった。ヤマトはただエドがこの場の空気を支配したかっただけだったのかもしれないと
だとしたら、実にエドらしくない——。
「エド、亜獣が出現する切れ目があらかじめ決まっているって、本当なの?」
まず最初に春日リンが詰問するような口調で言った。
「ああ、知っていた。どこにでも出現できるわけじゃないことはね。でもそれを話したからってどうなるのかい。世界中に数十万箇所はあるって言われているんだから……」
「だったら話してくれてても問題なかったんじゃあねえのかい?」
アルが残念そうな表情で言った。
「これは責任者のぼくだけが持つ専権事項のひとつなんだ。金田日のような専門家に負けないための、ぼくの武器といっていい。そのアドバンテージをあだやおろそかに口外できるわけがないと思うけどね。そうだろ、アル、春日博士」
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