第372話 だれがその魔法少女と戦うのですか?
エドがそう皮肉めいたことばと同時に、一瞬だけ金田日に視線をくれた。
「だが、電源を切ったあとどうなるかの想像に欠けている。金田日先生の調査では魔法少女は世界中に一万人はいるとされています。もし電源を切断して、魔法少女が殺した人々が隠された場所が見つかり、各地に点在する魔法少女の巣窟が特定できたとして……」
「だれがその魔法少女と戦うのですか?」
ウルスラはゴクリと咽をならした。
エドの顔をじっと見る。
この時代に不要な眼鏡をわざわざかけて、すこしでも自分を権威づけようとする姑息さが見え隠れする童顔の男——。だが、今その男からは想像がつかないほどの思慮深さが、ひしひしと感じられた。数年もの実務経験を通じて、十頭をゆうに超える亜獣との戦いの最前線にいたスペシャリストとしての研ぎ澄まされた直感と積み重ねられた経験ゆえだろう。
こうなると魔法少女をあぶり出すことを目的にした金田日の意見は、現実を前提としない学者ならではのもので、
「で、では、エド。きみはどうすればいいと?」
「えぇ。ひとつはこの計画を実行して、見つかった魔法少女の巣窟の数ヶ所を、国際連邦軍の各国支部の兵士やドロイドたちを総動員して、すこしでも魔法少女を駆逐する——。全部を殲滅するのはむずかしいですが、魔法少女の減数はぼくらにとっては有利に働きます」
「ち、ちょっとぉ、もうひとつ計画があるっていうわけ?」
ミサトがエドにその先を促した。ミサトが相当焦っているの様子がウルスラには手に取るようにわかった。
「もちろんです。カツライ司令」
エドがとくに気負った風もなく、軽く受け流すように答えた。その余裕っぷりに今度は金田日が噛みついた。
「エ、エド。き、きみにどんな対案があるというのかね!。ぜひ教えてもらおうじゃないかぁ」
エドは青筋たてた金田日の様子など意に介しもしなかった。
「魔法少女の巣窟を探すなんていう、消極的な方法よりもっとダイレクトな方法でいきませんか。亜獣が現れる前にこちらから仕掛けるんです」
「ど、どうやって……、どうやってそんなことがぁ」
エドは人さし指で眼鏡をずりあげながら答えた。
まるで『きみの誕生日は先週だったんですね』とでも言っているほど熱量もない淡泊な物言いで——。
「魔法少女をこの基地に呼び込むのです」
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