第367話 二つの事件の共通点

「それでは、わたしからもう一度、時系列で説明します」


 草薙がたちあがって、会議室の端から端までを見渡しながら言うと、中空を操作して3D映像を空中で再生しはじめた。

 映像はナポリで撮られた『魔法少女』を口にした男の様子だった。

 男は悲鳴をあげたのちに、そばにいる『誰か』にむかって抗議の声をあげる。

『ちょ、ちょっと待て。おれはどうする。こんなに心拍数があがって脳波が乱れたら「AI管理官」に通報される。これじゃあ、俺がバラバラ殺人を犯したことになる……』

 そこで映像がストップされた。

「これはわたしたちがはじめて『魔法少女』の存在を知った映像です。金田日先生はそれより早くにつかんでいたようですが、わたしたちはこの時、等身大の亜獣がいる可能性に気づきました。そしてその対応として人間が使える亜獣撃退用武器を用意した」

 草薙は金田日のほうに目をむけると、金田日はすこし得意げな顔つきをしてみせた。

「だけどそれに撹乱かくらんされて、実はもうひとつ重要な情報を見逃していたと、今回気づいたんです。『これじゃあ、俺がバラバラ殺人を犯したことになる』と男が言っている部分です。この映像には映っていませんが、どうやらこの男の視点の先には、ばらばら死体が転がっているようなんです。ただの死体ではなく、ばらばらの死体が……」

 そこまで言ったところで、草薙は再生映像を切り替えた。

 ばらばらの死体を見て腰を抜かしている男の映像が、今度はフリートウッドの倉庫で見つかった、ばらばらの死体そのものをクローズアップした映像に切り替わった。

「そして先日起きた『フリートウッド』の倉庫で400体もの死体が見つかった事件でも、そのばらばらの死体がかなり混じっていたという情報を秘密裏に入手しました。あの事件はどうやって誰にも気づかれず、死体をあんなに運び込んだかというの謎でしたが、もしその犯人が魔法少女で、『移行領域(トランジショナル・ゾーン)』を経由して亜空間から運び入れたとしたら、つじつまがあうのではないかと考えたのです……」



「先日の亜獣戦のあと、ちぎれた部位すら見つからなかった魔法少女の死体のようにね」


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