第352話 おおくの兵士たちが怯えているの
「ほんとうです。わたしは頭が痛くなってきました」
リンが李子に心配そうな顔をむけてきて言った。
「ねぇ、李子。それってかなり深刻な状態なんじゃないの?」
李子は話の流れのなかで、もう一度揺さぶってくると警戒していたので、今度は即座にそれに反応した。
「だめよ。リン。わたしの見解は口にできないわ。守秘義務に抵触しますからね」
「あら、ごめんなさい。他意はないのよ。でもブライトが再起不能なら不能でかまわないの。ね、そうでしょ、ショート」
「えぇ……、まぁ……」
ふいに同意を押しつけられてショートが口をにごした。だが、リンは気にもしていない。
「あなたにはむしろ願ったり叶ったりでしょう。あなたの彼氏のにっくき
「リンさん。そんなに冷たく突き放さなくても……。そうは言ってもあなたの元彼なんだし……」
「そんな
リンはいつの間にか、ショートの感情も自在に操っていた。リンはむかしからそういう種類の女だとわかっていたし、その手練手管に
ただの人間には興味ない——。
リンはなにかあるとそのお決まりのフレーズを口にしたが、なぜか人のこころにつけ入るスキルを心得ていた。
精神科医に適しているのは、その実、リンのほうではないか、と気持ちが穏やかでなくなるときもあった。が、彼女のその能力は残念なことに、ひとのこころを壊すことにおいて強力に発揮された。ほんとうに人間に興味がないとわかった。
「まぁ……、ブライトのことは李子にお任せするわ。わたしはいまさらブライトがどうなろうと、構ってられない。目先の戦いの準備で手いっぱいだもの」
リンがすべてを『忙しい』で結論づけるように言った。
「小さな亜獣というのははじめてですからね」
その意見にショートが追随し、しんどそうにため息をはいた。
「魔法少女ね」
「あら、李子、耳がはやいのね」
「リン、冗談はよして。その魔法少女っていう亜獣のせいで、この支部のメンタルが相当にたいへんなことになってて、おかげでクリニックは毎日長蛇の列よ」
「どういうこと?」
「もう、それはあなたたちのほうが詳しいのではなくって?。おおくの兵士たちが怯えているのよ。亜獣と生身で直接対決しなければならないって」
「でも対・魔法少女用の武器は用意されてるのよ」
「知ってるわよ。でも全員に行き渡らないらしいじゃない」
「あ〜あ……」
リンはそんなこと?、と言わんばかりで、気のない返事をした。
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