第248話 アイ・ガッタ・ビリーブ!です
「ああ。決めさせてもらおう。私のダンスは、ロック、ダンスだ」
まずは、手を耳の横まであげて巻きあげるような動き(トゥエル)をしながら、バウンスのリズムで太ももをめいっぱい引き上げ、足を
ユウキは光が点滅している天井に狙いをさだめながら、ふたたびトゥエルを巻きはじめると、ターゲットにむけて指先をピタリと指し示す(ポイント)。すると指先からビームのような光が飛び出し、明滅するターゲットを射ぬいた。
ふいにユウキの目の前の空間に、光の文字が躍り出た。
クリティカル・ボーナス!。
ユウキの足元から、連続して光るライトがシグナルとなって、二体の蛙めがけて直進する。蛙たちはその光がからだにふれるやいなや、まるで雷に打たれたように、びりびりとからだを震わせた。
「弱ったな。これではダメージを受けているのか、アニメーション・ダンスを踊っているかわからんな」
「大丈夫、きいてる。だけど油断しないで」
「レイくん、心配ご無用だ」
「ユウキ聞いて。相手は二体。さっきは不完全だったけど、たぶんコンビネーションが決まれば、むこうのクリティカル。数倍の強さでユウキにダメージを与えられる」
「ふむ、ならば、こちらが連続してクリティカルを奪うまでだ」
そう言うなりユウキは高速でトゥエルを巻きあげながら、次は右手、左手の連続でも(ポイント)を決めた。だが、点滅の感覚が短すぎて、指先からでたビームが左方向のターゲットをヒットできなかった。
「難易度が突然あがったというのか!」
「たぶん。このステージは一人用じゃない。グループでのダンスバトルステージ」
「こちらが圧倒的不利というわけか……。レイ君、きみのほうでなにかアシストする方法はないのだろうか?」
レイがふいに押し黙った。いつもの身勝手な反応だと言えばそれまでだったが、ユウキには押し黙ったと感じられた。
レイがぼそりと言った。
「やって……いい?」
「できるのかね?」
「わからない。でも、こちらのステージのプレーヤーなら、魔導士じゃなくても、ちょっとした魔法は使えるって……」
「どうする?」
蛙越しに艦橋のほうをのぞき見ると、レイが手をからだの前に突き出して、なにやら意識を集中しているのがみえた。
ふいに蛙が動きはじめた。今度はアクロバティックなムーブを取り入れて、さらに筋肉の緊張(ヒット)は、からだが浮き上がりそうなほど強く打たれ、機械そのもののように無機質な動きを決めてくる。今度は最後の決め(フリーズ)も見事に決まる。最高にクールなパフォーマンスだった。
ユウキの足元から
まずいな。これではステップが踏めん。
ユウキは足元の動きを封じられたままだったが、すぐさま反撃を試みた。すこしでも敵にダメージを与えて、隙をつくるのが先決という判断。
高速でトゥエルをまきあげる。天井、壁、床と瞬間的に点灯するターゲットに、すばやく反応し、右と左の指を立て続けに指し示していく。記憶力とすばやい動作と直感をフル動員して、指先で光の点滅を追う、追う、追う。
だが、突然、天井と右と左の壁、離れた場所に同時に光が点滅した。
これは間に合わない……。
ユウキが歯がみした瞬間、ユウキが指し示した天井のターゲット以外の、左右の壁のターゲットに光がヒットした。目の前に電光の文字が閃く。
クリティカル・ボーナス。
ドーンとおおきな爆発がおきて、ユウキの足元から強烈な光を放つシグナルが、二体の蛙に襲いかかった。二体の蛙がうしろにのけ反り、もんどりうって倒れる。今度はアニメーション・ダンスと見間違いようがなかった。
「ユウキ、右側と左側はあたしにまかせるデス」
ハッとして正面を見ると、倒れた蛙たちのうしろにだれかが二人立っていた。
それはさきほど蛙たちに生気を吸われて紙のようにペラペラになっていた兵士たちだった。一人は顔が水分を吸われすぎて、オニオンのように顔に筋がはいっている元男性兵士、もう一人は正面から顔を潰されたのか、牛とも豚ともつかない顔になった元女性兵士だった。
その二人が蛙ののうしろ側から、ユウキをアシストしてきていた。紙のように薄っぺらくなっている体は立っているだけでも姿勢を維持できず、前後にゆらゆら揺れるたび、ペラペラとめくれあがって、見ているだけでも危なっかしい。
その遥かむこう船窓のむこう側にレイがいた。レイが指先を前に突き出して、背後から操るように指を動かしている。
「
「そうなのデス。この
「できるのか?」
「アイ・ガッタ・ビリーブ、《I Gotta believe》(やればできるさ!)デス」
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