第136話 タケル、テラ粒子砲が生きてる!!

 アトンが木っ端微塵に吹きとんだとき、アスカのセラ・ヴィーナスは、シン・フィールズの元を離れ、レイを助けにむかう途中だった。すぐ近くでヤマトとリョウマがまだ戦っていたことを思い出して、サブモニタにヤマトの様子を呼び出した。

『タケル、プルートゥはどうなったの?』

 浮かんだ疑問が思念となって、ヤマトへの質問となった。

「あと一息のところで、逃げられた」

「逃げられた?」

「あぁ、亜空間に消えた。だがすぐに近くに潜んでいるらしい」

 ヤマトが片方のサムソラソードの柄を目の前で構えてみせた。柄の先端部分に淡い光がともったと思うと、するすると光の刀身が形づくられはじめた。

「しかも、あと一太刀しか振るえない」

 ネガティブな状況を説明してはいたが、アスカはヤマトがまだ諦める気などさらさらない口調なのにほっとした。次はかならず結果を残すに違いない。

 そのとき、地図データにピンという音ともに、光点が明滅しはじめたことに気づいた。

 すぐにアスカの思念を読み取ったAIが、その場所のカメラをズームする。

 アスカの息がとまった。

 

 そこにプルートゥがいた。

「プルートゥ!!!」

 プルートゥは八足の『アッカム』の上に乗っかり、なにかしていた。さきほどアスカを救うためにヤマトが操縦席を突き刺して、無理やり黙らせた機体だ。

 いやな予感。アスカの走るスピードが速くなる。

「プルートゥ?。どこだ?」

「さっき、タケルが倒したアッカムのとこ!」

 アスカの正面に見えてきたプルートゥは、アッカムの上に乗ったまま、砲台部分を両手で抱え込んでいた。手のひらから青い光がほとばしり、装甲に吸いこまれていく。

『なにをするつもりなの?』

 プルートゥの次の動きで、その疑問は即座に氷解した。両手でつかまれたアッカムのテラ粒子砲の砲口からオレンジ色の光が漏れでていた。

「タケル、テラ粒子砲が生きてる!!」

 プルートゥがやにわに両腕に力をこめ、アッカムの砲台部分を台座から引きちぎった。だが、砲口からみえている光は輝きをうしなうどころか、さらにまばゆく力を帯びていくのがわかった。耳につきささるような高周波の音が聞こえてくる。

 発射寸前をしめすシグナルだった。

 プルートゥがテラ粒子砲の砲塔部分を小脇に抱えてもちあげ、右側に砲身をむけた。まるで分不相応な大きさのガトリング・ガンを構えているように見える。

 プルートゥがぐっと足を踏ん張る。

 その砲口がむいている先に、こちらに走ってくるマンゲツの姿が見えた。

 アスカの顔から血の気がひいた。

「タケル、逃げて!」

 自分で叫んだのかどうかはわからなかった。かろうじて声がでたはずだ。だが、ヤマトはその声に呼応することなく、こちらへ一直線でむかってきていた。 

 あたしがなんとかしなくちゃ!!。

 アスカは腰から槍をひき抜いた。槍はすぐさま数倍の長さに伸びると、穂先に光の刃が形成されていく。

 発射される前に息の根をとめる!。

 目の前にあった低層のビルを踏み台にして、大きくジャンプすると、槍を大きく振りかぶった。アッカムの台座にのったプルートゥめがけて、槍を投擲とうてきした。

 が、槍が手から離れた瞬間、突然、プルートゥが砲身をこちらにむけた。砲口からは溢れんばかりの粒子に彩られ、目を射るような光に包まれていた。

「まずい」と、思った時はすでに遅かった。

 テラ粒子砲が至近距離で放たれた。


 アスカにはもう避けようがなかった。

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