スーサイド再びー18

「この部族潰させて頂きます!


覚悟を決めてくださいね?


手荒な真似はしたくなかったのですが・・・


無理だよなあ?馬鹿だからなあ?ああ!!」


トキは女性達の態度に激怒して宣戦布告した。




「ペットの分際でなに言い出すかと思えば…


馬鹿よね?やっぱり!


私達はこの森の民のアマゾネス!


アマゾネス5部族あるうちの一つの


アマゾネスのアニア族なのよ?


しかもこの森は危険度ランクSSスーサイド!


その民が弱いわけないでしょ?」


「だろうな?だから練習相手してもらおうか?


アマゾネスか・・・なんとなく予想してたがな?


5部族あるうちの一つがこれなら


全部潰しとかんとな?拠点を守る為にな?


とりあえず外行くか?家壊されても嫌だろ?」


若干怒りを収めてトキは女性に告げる。




「馬鹿にしてるわね?良いわよ!


外に出ましょう!お誂えの場所があるから


そこで躾をしてあげるわ!


アニア族族長の私アーニアがね!


メリハ!そいつをコロシアムに連れていくわよ!


全員にも伝えて頂戴!!全員集合よ!


ペット達の反抗心をへし折らせるからってね?」


「分かりました!姉様!!


そこのペットは大人しくしときなさいよ?


姉様が連れていってあげるんだからね?」


メリハと名の女性は家を出た。




「あんたは大人しく待ってな!


着いてから泣きついても知らないからね!


見せしめだからその武器は回収するからね!


私達は槍や斧で戦うから


必死に逃げて命乞いするといいわ!アハハハ!」


アーニアと名の女性はリビングから出て


部屋で戦闘準備行うためにリビングから離れた。


「・・・いやいや、まさか仮にも人間のペットが


一人で待たされるのかよ!逃げたらどうすんだよ?


考えてねえな?罠もないし…


捕まった俺が考える事でもねえよな?


スーサイドの情報は持ってるってことは


統治者知ってんのかな?その知り合いだと言えば…


戦うときにボソッと話してみるか…」


トキは悪巧みを考えながら勝手に台所を使い


ストレージからお茶の葉を出してお湯を沸かしていた。


コップも持参している。


・・・こんなペット居るか?・・・


・・・不法侵入だよなあ?・・・


リビングの椅子に座りお茶を飲んでると


リビングにアーニアが戦闘服で現れる。


アーニアはポニーテールをしている。


身長は170cmぐらい。


さっきまでは大きな胸を強調していて


割れた腹筋が見えている布の服。


魔物の皮で巻いたようなスカート。


黒いベルトで固定していた。




現在は両腕の前腕を魔物皮で纏いその上から


手首を守るように紐が巻かれている。


上腕にも紐を巻き付けている。


普段着が長袖なので気付かなかったが


筋骨隆々の体付きをしている。


身体を守る服は外套と布のみ。


豊満な胸全体を隠すだけの服装。


留め具は首輪と繋がっている


スカートは先程と変わりがない。


膝当てにすね当てを着けている。


どちらも魔物の骨で出来てる。


頭には鉢巻をしており部族の紋章を刻まれている。




「遅かったな?お茶飲んで大人しく待ってたよ?


台所使わせて貰ったから!注いだお茶飲む?」


着替えに30分は掛かっていた。


「反抗心あったのに、なに落ち着いてんだよ!


お茶に何か仕組んで無いだろうな?」


「そう思うなら1人にさせるなよ!


何もないからな?毒味してやるからよ!」


トキが用意したコップにお茶を注いで飲む。


「な?無いだろ?あったら俺に何か起きるからな!


戦いはしてやるから今は冷めないうちに飲め!」


リビングにあるカップに茶を注ぐ。


カップの上部からは湯気が漂っている。


「・・・こんなペットは初めてだよ…


・・・苦い!これ仕組んでるだろ!?」


「そういうお茶なんだよ!


作るのに手間かかるからな?ちゃんと飲めよ!


じゃないと注いだ意味無いからな?」


「仕方ない!これ飲んだら行くからな?


苦いし熱いし茎が一本浮いてるし…


強気に出てる自分が馬鹿に感じるわよ?」


アーニアはお茶を飲んで茶柱を見て呟く。


「お茶には落ち着く成分あるからな…俺の考えだけどな?


茎はあれだな?茶柱と言ってな?


運が良いと言われてるんだよ!俺の故郷ではな?」


「ふーん…運が良いねぇ…


私には関係ないけどね!運に頼る戦い方はしない!


私達は戦う部族!アマゾネスだからな!!


強さには美しさが宿る!それを見せてやるよ!」


お茶を飲み干してトキへと告げる。


「まぁ、俺と戦えるなら問題ない…


最近は暇でな・・・まともに戦った事がない…」


「もう負けた時の言い訳してるのか?


暇なのは臆病で逃げてるからだろ?


そんな奴には負けないよ!見せしめにしてやるからな!!」


「めんどいからそれで良い…


さてとその洗い物してから行こうか!


そのカップも洗うから渡してもらえるか?」


「・・・随分真面目なペットだよね?


普通は折檻しないと動かないんだがな…」


「俺はまだペットじゃないしな!


自分の物は自分で洗うのは当たり前だろ?


なんで態々他人に洗ってもらうのか理解できない…」


トキはアーニアからカップを貰い


台所で洗い物を終わらす。


さっきまで食事してたであろう皿もついでに片付けた。




「ちゃんと食べた皿は早い内に洗わないと


汚れとして残るからな?木の皿でも同じだ!


カビたりして病気になるから気を付けろよ!


よし、此れで戦い終わる時には乾いてるだろう!


さて、コロシアムとやらに行こうか!」


「・・・気を付けます…」


トキは皿を縦に等間隔で置ける物を


ストレージから出して立て掛けた。


アーニアは思い当たるところがあるのか謝ってしまう。


アーニア案内でコロシアムへと向かうトキ。


首輪や鎖はしてない。用意されてなかった。


族長だから木材の家だったが他の家は葉で出来ていた。


各家の外に杭がある。


・・・ペットは外なのか?・・・


トキが疑問に思ってるとコロシアムと


思われる会場に着く。


柵で囲まれた地面の左右に階段状に座る場所がある。


ペットらしき人間は専用の小さな小屋に入れられている。


首輪に複数の生々しい傷痕。


絶望が張り付いた顔をしている。


中には目が虚ろで口から涎を垂らす奴もいた。


「アーニアだっけ?あのペットは


もう処分しないといかんぞ?


涎を垂らしていて飼い主の性格が分かるからな!」


「お前もそこに行くんだけどね…


なんで普通に処分って言えるのか不思議だよ…」


アーニアはトキがペットを見て憤慨すると思ってたが


まさかの処分が出てくるとは思ってもなかった。




トキはスーサイド以外なら彼らを助けるが


スーサイドでは生きてるだけも充分だと


判断していた。


彼らにも帰る場所があるだろうがスーサイドでは


危険な森の為にアマゾネスに保護されてると思えば


納得は出来た。


コロシアムには500人ぐらいのアマゾネスが


集まってトキを見下ろし騒いでいた。


華奢なアマゾネスやレスラーの体のアマゾネスもいる。


トキは開けられた柵から入り地面を見ていた。


所々が血で染められてる。


・・・これは殺菌とかしてないな?


・・・病気になったらどうすんだ?


・・・うるせえなあ…気が散るだろうが!


戦いとは違う事を考えていたトキに


アーニアの声が届き始めた。




「皆のもの!よく集まってくれた!


アニア族の諸君よ!今回集まってもらったのは


他でもない!この者の躾を行うためにだ!!


こいつは我ら誇り高きアマゾネスを虚仮にした!


更には全員を倒して他の部族にも手を出そうとしている!!」


「「「「「ブーーー!!」」」」」


会場にいるアマゾネスは一斉にブーイングを始める。


「静まれ!!!」


アーニアの言葉に全員が静まりだす。


「そんな命知らずの無謀ものには


厳しい躾が必要ではないかな?


我らに二度と逆らわないよう確りとした躾がな!!!」


「「「「「そうだ!!そうだ!!!」」」」」


「自分が強いと過信している愚か者には


更なる高みにいる我らアマゾネスがその


自尊心を粉砕してやる義務があるだろう!!


彼処にいるペットどもと同じ末路を追わせるのが


私が良いと思うのだが皆はどうかな?」


「「「「「ウォーーー!!!」」」」」


「では、始めようではないか!!!


躾を!折檻を!!一方的な力の教育を!!!


マーラ!!!開始の合図を!!!」


「分かりましたわ!!!姉さん!!!」


カーーーン!!!


マーラが大きなコングを鳴らした。


ゴングの音と共に会場に熱気が充満する。


アマゾネス達の口から男性と同じ口調で


トキへと罵詈雑言を放たれる。


・・・いつの間にゴングが?


・・・ルール説明は?


・・・見られながらやるのか?


トキはアーニアの言葉に耳を傾けずに


自分の考えに没頭していた。




「・・・うるせえなあ…気が散るだろうが…


見せ物としては良いんだろうが…


当事者には煩いだけだな…


罵詈雑言で精神攻撃、数の圧力で力が出せない…


スーサイドでの魔物や植物にやられて満身創痍…


そんな中なら普通なら躾られるだろうな…


さて意識も現実に戻ったし試してやるよ!


躾をな?どんなものなのかをな?」


「威勢が良いが分かってるのか?


この観衆の中にはアマゾネスしか居ない!


ズボンのみしか着用してない!


その相手は斧を持ってるんだぞ?


スーサイドの生活している強者!


そしてこの部族の中で一番強い族長だぞ?


呑気にしてられるのも今のうちだからな?


ではいくぞ!!」




アーニアVSトキの戦いが幕を開けた。


アーニアの持つ斧には円錐形の穂先が付いている。


50cmの斧を振るい闘う。


最初の互いの距離は10m。


コロシアムの柵の長さは50mの正方形。


会場は縦に150m、横に200mの大きさ。


図としては・・・


┏┳┳┳━━━━━━┳┳┳┓


┃┃┃┃┏━━━━┓┃┃┃┃


┃┃┃┃┃┼┼┼┼┃┃┃┃┃


┃┃┃┃┃┼┼┼┼┃┃┃┃┃


┃┃┃┃┗━━━━┛┃┃┃┃


┗┻┻┻━┓入口┏━┻┻┻┛上からの図。




最初に動き出したのはアーニア。


小手調べとして一瞬でトキへと近付き


刃先のない方で右手で左へと振り抜く。


・・・思ったより早いな!


トキは右からくる攻撃をバックステップで避けて


通りすぎてから元の場所に戻った。


観客から見ればすり抜けた様に見えた避け方。


「態々、戻る必要あるのか?」


「無いな!なんとなくかな?」


「ではこれならどうだ!」


言葉と同時に斧が逆再生するようにトキへと


刃物が襲い掛かる。


トキは同じ様に避けて戻ろうとした時に


アーニアは斧をトキの前に止めて突進する。


切れないなら突けば良い。


・・・なるほどね…


トキはその場で足を止めて右前の半身にし


避けようとする。


アーニアは笑いトキの半身へと斧を振るう。


思わぬ攻撃に避けれずに打撃を食らい


トキは右へと飛ばされた。


「カッ!?」


柵までには届かないが強力な打撃に


息を吐き出すトキを追い討ちするように


アーニアは突進して突いてくる。


避けようとする前に左右の上腕と太ももを


突かれて動きを阻害される。




その場で動けないトキに刃の無い柄の部分で


速度を上げながら打撃を与えていく。


トキの体に青アザが出来始める。


「どうした?余裕が無くなってるな?」


「そう…だ…な…10%…ではな!」


トキが言葉を告げるとアーニアの打撃がすり抜けた。


目の前にトキの姿が無くなり探してると


「後ろだ!・・・言ってみたかったんだよな…」


アーニアは振り向く前に膝に衝撃が入る。


決して強くはない。だが膝から落ちていく。


膝が地面につく前に後ろに斧を振るう。


だがトキには当たらずに気付けば前にいた。


アーニアは膝を地に着けてトキを睨む。


「何をした!!」


「え?膝カックン?」


トキは首を傾げながら答えた。


そして右手の人差し指をアーニアの額へと当てる。


アーニアはひざ立ちの状態から


立ち上がろうとするが立てず、


横に避けようとするが動けなかった。


「何をした!?魔法か!?」


「いや?人体の不思議だよ?


額押されると何故か立てないんだよな?


出来るのはその手にある武器を振るうだけだよ?」




人間は体重の重心移動で立ち上がる。


だがテコの原理の応用で現在アーニアは


立ち上がる事が出来なくなっていた。


「クッ!!」


トキに言われるまま斧を振るい対処する。


だが最初の動きをされて再度額に指を当てられる。


言われないと出来なかった、考えられなかった…


今の状況を繰り返される歯痒さ、


族長としての、アマゾネスとしてのプライドが傷つけられて


怒りがこみ上げてくるアーニア。


苦々しい顔をするアーニア。


「・・・楽しくないね…止めたよ!


指を離すから立ち上がり戦おうか!」


トキは告げると指を離して


元の場所に歩いていく。




・・・情けを掛けられた?


私が?男に?ズボンのみの男に?


なんなんだ?あの男は!!


私はアマゾネス!強くて美しい種族!


武器を持ちスーサイドの魔物を倒してる!


スーサイドでの生活もしている!


そんな生活で?族長の私が情けを?


アーニアは膝立ちの状態で思考する。


自分の今までの経験が通用しない。


弱いだけの男に情けを掛けられた?


同じ質問が頭に繰り返される。


苛立ち、悲しみが怒りへと変換されて・・・


「・・・殺す…あの男は殺してやる!!!」


遂に怒りに支配された体で立ち上がり


殺気を立ててトキへと斧を振るい出す。


「・・・やっと本気か?」


「うるさい!!躾なんてしない!!!


お前は私を傷つけた!!!だから・・・殺す!!!」


アーニアの怒りがトキへと振るわれる。


全ての動きがさっきまでと違い


速く、鋭くなっている。


「繊細な心持ってるんだな?


族長としては駄目じゃないか?」


プツン・・・


「ああぁぁぁああぁあ!!!・・・ごろず!!!」


アーニアは雄叫びを上げた。

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