スーサイド再びー6

「さて戦闘始めて30分・・・


思ってるよりも苦戦してるな?」


トキは木の影から懐中時計を見ながら観察していた。




戦闘開始時は優勢に働いていた。


トキの最初の攻撃で痺れて動けないヒュドラは


傷を負うしか出来なかった。


ヴァイスの青い炎を纏わせた剣は


ヒュドラの強固な鱗を剥がしていく。


ガデルの短刀も少しずつだが刺さり出して


鞘での打撲を当てていく。


リケラの尖らした岩を纏いブラッドのフルスイングで


打ち込まれた胴は切り裂かれ凹み跳ね返ったリケラを


再度フルスイングしていき横にヒュドラをずらしていく。


フィルも空から頭に風刃を当てて襟足が裂かれる。


ケルの土、水、風3種混合魔法もトキの切り裂いた


場所に的確に当てていき膝を落としていく。


ルティはヴァイスを乗せながら後ろ足の


左右を交互に移動しながらヴァイスの補助し


血が出た部分に電気と火でトキの真似をしていく。


土で傷痕を開いて固定させ水で電気抵抗を下げる。


そうして足がつぶれていくヒュドラだが


トキの感電時間が終わり動き出す。




「ギャアァァァァァ!!」


一方的に攻撃されて怒るヒュドラ。


怒りの声を雄叫びに変えてヴァイス達の動きを止めた。


雄叫びが止まると空へと飛び立つ。


飛ぶのを阻止しようとするヴァイス達だが


翼が無傷の為に飛んだ衝撃に吹き飛ばされる。


フィルの居る場所は100m上空。


フィルの居る場所よりも高く飛び上がり、


500m上空からヴァイス達を見下ろし確認するヒュドラ。


先ずは身近にいるフィルへと攻撃が始まる。




ヒュドラの左の口から炎の玉が現れ


徐々に大きさを変えていき直径50mの玉が出来上がる。


炎の玉がフィルへと高速で飛ばされる。


避けようとしたが真下にはブラッドがいる。


ブラッドは見上げて動けない。


ブラッドへの直撃を避けるために敢えて受けるフィル。


全身に水と風を纏い軽減しようとしたが


あまりの高熱に水が沸騰し高熱の水蒸気となり


フィルの体に纏わりつく。


高熱に耐えきれず外側に風を放出するが


ヴァイス達にも高熱の水蒸気が襲い掛かる。




地面は一気に蒸し風呂状態となり


汗だくになるヴァイス達をヒュドラは逃さない。


右の口から水の玉を、左の口から炎の玉が現れ


同時に地面へと吐き出される。


フィルは防ごうと汗だくの体で風を放出しながら


前に向かうが水と炎が融合し


再度高熱の水蒸気を作り上げて視界を奪われる。


霧の中にいる状態で上から水の玉が落下してくる。


突如現れた水の玉に耐えきれずフィルは地面に激突する。


水の玉が地面に当たったお陰で周囲の温度が


下がるがまだ蒸し風呂と同じ状態。




その中でガデルは短刀と鞘を投げて狙うが届かない。


蒸し風呂の中で動いた事で体力が奪われていく。


ブラッドの金属バットや甲冑も熱を持ち


籠手に戻ってるが籠手は外せず火傷を負う。


リケラは岩を飛ばして対抗するが炎の玉が


岩を溶かして溶岩がヴァイス達に降り注ぐ。


高熱地獄にさらされるヴァイス達。


なんとか水を撒いて冷まさせるが焼け石に水。


再度高熱の水蒸気に変わり襲い掛かる。


ケルやルティは耐えきれず膝を付く。




上空から笑顔で見下ろすヒュドラ。


真ん中の口から10mの電気の玉を止めと吐き出す。


避けようにも高熱で動けないヴァイス達は


感電してしまいその場で倒れる。


倒したと喜ぶヒュドラ。


そんなヒュドラを見て油断してるとトキは思った。


そしてヴァイス達の日頃の鍛練が足りないと


厳しく思った。


弱者ばかり相手していると弱者になる。


それが顕著に見えたトキだった。


それを見た時が30分過ぎた頃だった。




さてどうなるかなと見ていたトキの前で


ヴァイスがルティから離れて立ち上がる。


痺れがとれたのだろうか?


トキが思ってるとヴァイスは地面に剣を突き刺す。


まだ取れてないようだ。


杖代わりに使ってる。膝が震えていた。


「負けて・・・負けてたまるかあぁぁ!!!」


ヴァイスは叫び膝の震えが止まった。


ヴァイスの叫びに奮起されたのか全員が


弱々しく立ち上がる。


震える膝を抑えながら立ち上がる姿に


ヒュドラはふん!と鼻息を吹く。


3つの首が吹いたことで風が強風となり


ヴァイス達は地面へと戻されてしまう。




トキはヒュドラは馬鹿な事してると思った。


鼻息をしたせいで水蒸気が霧散して消えている。


蒸し風呂からヴァイス達は解放された。


だが消耗した体力は尋常ではない。


2倍、3倍の消費量で奪われた体力。


持ってあと少しとトキは判断した。


全員が声を掛けれないほどに疲れている。




ブラッドは甲冑を纏い金属バットを持つ。


ガデルはブラッドに向けて20の短刀と鞘を投げた。


時間差で当たるようにしている。


リケラも習って短刀と鞘の前に丸くなり


ブラッドへと進んでいく。


「ブモォォォ!!」


ブラッドはリケラから順にヒュドラへと


打ち出していく。体力奪われてまともに


触れなかったが力任せに狙っていく。




ヒュドラは大した事なかったと何処かに向かいかけた。


まだ戦闘中だが終わりと判断していた。


首が全て地面から空中へと向けている。


そのまま羽を羽ばたかせる前に攻撃に気付く。


咄嗟に地面を向き避けようとするが遅かった。


胴にリケラが刺さり上に飛ばされた。


その後のガデルの武器全ても腹下に刺さる。


ガデルはケルに武器に繋がっている金属糸を


巻き付かせて同時に引っ張る。


体の制御が利かないヒュドラは地面に向かっていく。


羽を羽ばたかせ空へと抵抗をするがリケラの岩は


銛の様に返しを付けて離れないようにしており


リケラの重量が掛かり地面へと近づいてしまう。


それでも空中に飛んでいたヒュドラだが


上空からの思わぬ衝撃に耐えきれずに落下した。


フィルが上空に飛び上がり全体重と


大量の水を作り胴に攻撃をしていた。




落下してくるヒュドラを見てガデルは


ケルに巻き付かせていた金属糸を外して


全てを自分が受け持つ。


その金属糸を足場にしてケルとルティが


ヒュドラへと駆け上がる。


ヒュドラ手前でルティは強固な鱗が無い腹下に


火、水と雷、風、土、闇の属性を持つ槍を作り放つ。


火の槍は白炎をしており高温で焼き焦がしながら


ヒュドラの内部を貫通していく。


水の槍は刺さるとヒュドラの水分を吸収し


大きく形を変えていき雷属性を含ませて


痺れ焦がして貫通する。


ヒュドラの動きが止まり落下速度が上がる。




風の槍は胴に刺さると胴の内側に風が拡がっていく。


土の槍は同じ場所に刺さり砂利へと変化させて


胴内部の竜巻に砂利が混ざり内部から刻んでいく。


闇の槍はヒュドラの痛みを増加させる。


ヒュドラの内部を貫通していく痛み、


焼かれる痛み、抉り裂かれる痛みが増加される。


「ギャ!?ギャァァァァァ!」


怒りの雄叫びと違い痛みの悲鳴。


異常な痛みに暴れようとするが体が痺れて動かない。


首の痺れは叫べるぼどに回復してるようだ。




ケルは金属糸の上を跳んで羽を見据えた。


土含ませた水の刃を放出する。


風で押し出し纏わせて推進力と殺傷力を上げていき


ヒュドラの二翼が胴から切り離され赤い液体が


大量に噴出される。


ヒュドラは空に逃げることが出来なくなり


地面へと近づいていく。


ヒュドラが地面へと衝突する前にガデルは


短刀と鞘を金属糸で引き抜いている。


ガデルはヒュドラの正面へと回り


武器全てを3つの顔へと向けて放つ。


金属糸で操られる武器は大きな目へと


吸い込まれるように直撃した。


目を潰されたヒュドラは首を前後左右に


振るいガデル達へと当てようとするが


腹に刺さっていたリケラが地面に衝突し


ヒュドラの骨を粉砕し内蔵に直撃する。




「「「ガァ!!」」」


ヒュドラの三つ首から大量の空気が放出される。


正面へと移動していたガデルは暴風に飛ばされる。


後ろにある木に当たる前に引き抜いた武器を


左右の木々に刺して衝突を防ぐ。


だが完全には防げずに何本かは木から外れ


バランスを崩して地面に衝突する。


「カハァッ!!!」


ガデルも同様に肺の中にある空気が


強制的に出されて地面に背中が抉られ


赤い跡を地面に道として作る。


ガデルはヒュドラから離れた場所で気絶する。




ヒュドラは抵抗として二股の尻尾を使う。


左の尻尾は体の上にいるフィルへと振り掛かる。


当たる距離に居ないフィルは避けようとせずに


胴の上部の鱗を風刃で剥がし赤く染め上げていく。


ヒュドラの右側の地面に着地しているルティとケルは


同じ場所のブラッドの補助しにいく。


胴を大小違う大きさのバットで打撃するブラッド。


気力を振り絞り青あざを作りあげ


打撃した場所からはバキボキと骨を粉砕していく。


ルティとケルは石玉を作り撃ち込む。


そんな3匹に右の尻尾が振り掛かるが


見て見ぬ振りして打撃を止めない。


距離が離れて当たらないと判断したから。




だが二股の尻尾はフィルやブラッドに当たり


胴に激突する。


「ぐぅ!!」「ブモ!?」「コォ!!」「「「ガァ!!」」」


4匹が一斉に衝撃と驚きに声が出る。


尻尾を見ると太く円錐形だったのが


2回り細くなり縦に伸びて


尻尾の真ん中で攻撃を受けている。


フィル達は胴と尻尾に挟まれていた。


跳んだり横にと避けようとフィル達は行うが


振り掛かる尻尾の速度が何度も叩かれてしまう。


ヒュドラを攻撃をしていた時の骨の粉砕する音が


フィル達から聞こえ出す。


ブラッドは金属バットを体の横に構えて


防ごうとするがバットは耐えきれずに縮んでしまった。




全員が満身創痍の中でヴァイスは


ヒュドラの横に並んでる首の左側にいた。


息を整え剣の纏っている青い炎を伸ばしていく。


「これで・・・これでぇ終わりだぁぁ!!!」


ヴァイスは三つ首を根本から刺して貫通させた。


その状態で頭へと横に薙ぎながら


自身も頭へと駆け抜ける。


横に貫通させても縦には魔力を纏えなかった。


それを補う為に駆け抜ける。


「ウオォォォオォォォ!!!」


雄叫びをあげながら駆けるヴァイス。


青炎と共に白影が残像として残る。


揺らめく炎の中でヴァイスの姿が共に揺らめく。


首を振り防ごうとするがルティが挟まれながらも


痛み増幅ペインアップを与える。


痛みで声をあげようとしたが既に声帯が切り裂かれてる。


「~!!!」


声に鳴っていない声をあげてヒュドラは


ヴァイスの炎の剣により討伐された。


痙攣しているが徐々に収まりフィル達の尻尾が


ズシンと音をたてて落ちていった。




リケラはなんとかヒュドラから抜け出すが


力尽きて倒れてしまった。


ヴァイス達は息を荒げて雄叫びを勝鬨の声を


あげようとした瞬間にその場に倒れてしまう。


ヴァイスだけは剣を杖代わりに使い


小さくか細い声で「ウォォォ」と声を出した。


トキは懐中時計をしまいヴァイスの許に向かう。




「先生・・・ぼ…僕達…はぁ…はぁ…やり…ました…よ…」


「うん、見てた…けどな?


ヴァイス達は頑張ったがな…20点だよ?


誰が戦えと言った?殺れと言ったんだ!


機動力を削ぐ為に足を狙うは良いがな?


何故羽を狙わない?翼竜だと言ったろ?


飛ぶに決まってるだろ?考えろよな!


そしてな?痺れてんのに何故頭を狙わない?


絶好の機会だぞ?何故しない?


全体像を教えたけどな?俺は!


相手が痺れてるから慢心したか?


油断してるからそうなってんだよ!


慢心と油断はな?余裕と自信と違うんだよ!


相手がどんな攻撃をするかわからないだろ?


だから早期に殺れば良かったのに…


態態、麻痺を解くまでするか?しないだろ?


ヒュドラも油断してるから生きてるがな?


普通は死んでるぞ?お前らの戦略ミスな?


ったくよ?途中で話の途中で気絶するなよな…


まだ敵さんいるのによ・・・」




トキは気絶し前に倒れるヴァイスを左腕で支える。


トキが上空を見上げて敵を見る。


五つ首を持つヒュドラ。


さっきのヒュドラの親なのか知らないが


全部の顔が怒りの表情している。


倒れているガデル達を狙っていた。


五つの口が開き攻撃の準備をしている。


赤、青、緑、黄、茶色の光が見え出す。


トキはヴァイスを地面に寝かせる。


「親のヒュドラかな?子供の敵討ちか?


ヴァイス達が頑張った褒美に


教材となってくれた子供のお礼に


俺が相手してやるよ!10秒持てよ?」


トキの言葉の終わりと同時に五つ首をから


光が放たれかけた。


その光は地面に向かわずに上空へと放たれる。


五つ首をトキがフルバルを伸ばして上げさせた。


驚きが顔に出るヒュドラだが・・・


ドドドドドン!!!ドスン!!!


五つ首を地面に切り落とされて地面に落下した。


頭を失った体も羽の羽ばたきが止み


同じく地面へと落ちていった。




「・・・たくよ?もう少し頑張れよな?


時間は…一応10秒はいったのか…


予定通りと言ったところかな?」


現在ヒュドラを切り落とす為に空に浮いてるトキ。


懐中時計を見て時間を計り納得していた。


フルバルの柄は長く巨大な斧になっている。


トキがフルバルを元のサイズに戻して地面へと降りる。


「・・・グランドラより強かったんじゃないのか?


やっぱり世界に綻びあってスーサイドにあんのかね?


子供も何気に強そうだしな…よく勝てたよ!


あぁ…この後どっすっかねぇ?」


フルバルで肩を叩きながら考えてた。


直径3km以内にヒュドラの死体が2個。


ヴァイス達も分かれて倒れている。


スーサイドの魔物の餌にならないように


ヴァイス達を担ぎ上げ一ヶ所に集めた。


ヒュドラも同じ場所に置いてある。


起きるまで待つかと机を出してお茶を用意して


一人でティータイムを楽しんだ・・・

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