第75スーサイド再びー1

「起きたがとりあえず・・・無いよな!?


昨日みたいな朝は?疲労から始まる朝は?


・・・大丈夫みたいだな!


そうだよな?一人部屋だし、あいつらは外だ。


なにもなく行けるはず・・・」




俺はログハウスの自部屋から出た。


俺は1階の部屋で寝ていた。


部屋から出るとメイドのシーサが朝食の準備をしている。


キッチンは俺の魔力で動く。


俺が居れば自然に流れる。貯蓄も可能。


魔力タンクがある為、俺がいなくても稼働できる。




「おはよう!シーサ!よく寝れたかな?」


「おはようございます!緊張しましたが


寝れましたよ!この台所凄いですね?


魔法使わなくても火が起きて、水も綺麗で美味しい。


村みたいに井戸からや川から汲まなくても良いですね!


火も火打ち石で起こさなくても


突起を回して火を起こして、火力も自在!


お陰で楽に朝食作れましたよ!」


「喜んでくれて良かったよ!


滅多にない機能だからな?大事に使ってくれよ?


ほかの皆はまた寝てるのか?」


「・・・外で皆呆然としてますね…理由は・・・」


「あぁ、良いから!朝から疲れたくない!


もう少ししたら皆を起こすとかして食事にしよう!」


「・・・分かりました!では放置しますね?


流石に慣れてますね?日常的なのでしょうか?


朝から大きな音が聴こえてヴァイス様が


見にいくと橋・・・」


「・・・後で聞くから止めて…」


俺はシーサの言葉を遮った。


大きな音に気付かないほど寝ていたのだろう。


安心して寝てなかったからな…最近。


しかし予想外だな?橋・・・か…


後で直そうかね…嫌な予感しかしないから・・・




俺は皆が集まり食事を始めた。


全員が沈黙している。


フィルでさえ言葉を話さない。


うん、無視して食べよう!そしてべラムへ帰ろう。


俺は何事も無かったようにすると決心した。




「先生・・・」


「ん?ヴァイスか?早くべラムに帰るぞ!」


俺は食事を終えて外に全員が出たのを確認して


ストレージにログハウスを戻す。


戻し終えてフィルに馬車を繋ぐと


ヴァイスから言葉が出たので遮る。




「先生?何もないようにしてますよね?


無理ですよ?あれは先生でも無理です!」


「ん?橋が壊れたんじゃないのか?」


「え?何言ってるんですか?先生違いますよ?」


「ん?大きな音がしたんだろ?


そしてシーサの橋・・・で言葉を止めたから


詳細知らんぞ!橋を直すのは後にしようと考えた!


確実に厄介事だと理解したから無視した!以上!」


俺は強引に話を終わらした。




「・・・先生?駄目ですよ?


もう巻き込まれましたから・・・


シーサさんの言葉の続き言いますね?


大きな音がしては橋にリケラが流れて来ました。


川は繋がってますからね?こっちは下流ですよ?


今は川から上げて橋の所で待機させてます…」


「・・・リケラか…同窓会始まるのかな?


食事はシーサに任せて彩り良く・・・」


「先生?思考を飛ばさないでください!


リケラが傷だらけで流れて来ましたから!


フィルの翻訳で判明しました!


スーサイドに危険が迫ってます!」




「ヴァイス君?何言ってるんですか?


あそこは危険が一杯ではありませんか?


迫ってるのは日常的ですよね?」


「先生!気持ち悪いです!現実逃避はやめてください!」


「いやよぉ?だってさあ?依頼途中だぜ?


アイサの安全を確保してからべラムに送らないと


行けないのにさあ?今から行くとすると邪魔だぞ?


アイサとシーサがな?一般人だぞ?


ゾラム侯爵の約束は反古にしないぞ?」


「・・・それは理解してますよ!約束は守ります!


でも・・・スーサイドに4体の幻獣でもですか?」


「幻獣?リケラ事態が幻獣だろ?竜だぞ?竜!」


「・・・先生・・・確かにそうですけど・・・


分かりました!べラムに着いてから説明します!!


絶対に!絶対に逃げないで下さいね?


スーサイドは我が家の領内なので


べラムにも依頼が出る案件ですからね?


特別指定依頼が一瞬で来ますから


覚悟してくださいね?」


ヴァイスがトキに権力を当てる。




「・・・あぁ分かったよ…まさかここでスーサイドが


来るとは思わなかったよ・・・


くそ!くそがあ!!鎮圧終わったばっかりだぞ?


日常パートが来るんじゃないのか?


新たな商店がべラムに出来て悪事を起こして


俺が巻き込まれて退治するとかじゃないのかよ?


もしくは季節限定イベント始まるんじゃないのかよ?


ハロウィンとかクリスマスとか七夕とかなあ?


・・・ヴァイス?後悔するなよ?


巻き込ませた幻獣の原形無くすからな?


後で久しぶりに楽しませてもらうからな?


怒りの焼き加減何が良い?ミディアム?ウェルダン?


レア?無いぞそんな選択はな?焦がしてやるよ!」


トキは不満を爆発させた。




「ヴァイス君?だから言ったんだよ…


べラムに着いてからが良いって…」


「どっちも一緒ですよ…怒りが


父様に来るか、ハリーに来るか、クルスに来るか、


僕に来るかだけです…父様達は怒られてますからね…


なら僕が甘んじて受けないと…」


「そうか…立派だな…尊敬するよ」


ガデルに励まされるヴァイス。


トキは怒りに関して大人も子供も関係ないと


理解してる。同情は仕方無いだろう。




「ヴァァイィスゥ!!急ぐぞぉ?依頼を終わらせて


報酬貰って直ぐにスーサイドに向かう!!


言っとけよ?スーサイドの危険が迫ってるとな?


俺に言えとなあ?ギルドにぃ、スーサによお?


フィルゥ?何してるんだあ?早く準備しろよ?


速度を緩ますなよ?10分だ!10分以内に着かないと


・・・楽しみだなあ?楽しみだよなあ!!


楽しい楽しい褒美が待ってるぞお?


俺の褒美がなあ?早くぅ?全員乗れやあ!!!」


トキは怒気を発して全員が馬車に乗り込む。




フィルは駆け抜けた・・・ではなく翔んだ。


浮いた馬車にアイサ達が落ちそうになる。


ガデルとブラッドが抑えて落ちずにすんだ。


全力で飛ぶフィルは馬車に気を付けていない。


風がもろに来ている。


トキが苛立ち足踏みしてるのを見て


ヴァイスが馬車に風を纏わせ前からの風を霧散させる。


トキの足音が止まりホッとするが


顔を見て怯えて震えてしまう。


後ろには死神が構えて左右に2つの角を生やし


犬歯が異常に伸びて歯全体が鋭く


鬼の形相しているトキの様な存在がいた。


後ろからは死神がこっち来いと招いてる。


どす黒いオーラが体を纏っている。


全員が一斉にトキから目を離した。


見てはいけないと青ざめ震える体を抑えて外を見る。


外もフィルが全力で飛んでるので


一瞬で風景が変わり心の切り替えが出来ない。


ふぅ…


トキの深い息に一気に周りが冷えた。


あれは人間じゃない。人間の姿をした違う存在。


全員が同じ認識をした。




寒気と怒気に震えが止まらない間にフィルが


べラムに辿り着いた。


やっと解放される。そう思ってたがまだだった。


警備隊がフィル達に武器を構えたのだ。


尋常ではない怒気を、異常な速度で飛ぶフィルに、


馬車の上居座る異形の3体の死神に気付いた門番が


急いで警備隊を呼んだ。


「おぉいぃ?何のぉ?まぁねぇだあ?」


暗い底から響く様な声。


聞いてはいけない。返してもいけない。


そんな雰囲気を纏う声が警備隊に届く。


一斉に震えだし怯えて座り込む警備隊。


唯一クルス隊長だけは震える足で踏ん張る。


生まれたての小鹿みたいに…




「君・・・達に・・・っとフィルか!!?」


怯えて出ない声を頑張って出した


クルス隊長はフィルに気付いた。


「クルス隊長?すいませんが主殿、


完全にお怒りなので馬車の中の人だけでも


通して貰えませんか?お願いします!」


早く馬車の中から逃がしてあげたいフィルは


事情を説明して、何度も頷きクルス隊長は許可する。


トキは残りヴァイス達が慌てて出てくる。


一刻も早く出たかった。


馬車から出た人の中にアイサがいて驚くクルス隊長。




「い!今は良いから!早く!早く父様の元に!


案内して頂戴!!」




慌てて話すアイサ。ヴァイス達も勢い良く頷く。


事情をなんとなく察したクルス隊長は


アイサ達をクリプス辺境伯に案内する。


フィルは門から離れていく。馬車にトキを乗せたまま。


通行の邪魔になると判断して動く。


警備隊は離れた馬車を見ながら震えが止まり


ホッと息を吐いた。




クルス隊長案内でクリプス辺境伯の家に戻った


アイサ達はスーサから烈々な歓迎されたが


今は後で!と制止させて事情を話す。


事情を知ったスーサは急いで執務室に戻り


冒険者ギルドに特別緊急指定依頼を


送り出した。書状を持ってるのはヴァイス。


急がないとべラムが壊滅すると考え


身体能力制限を解除して全力で向かう。


尋常な汗を流しながら1分で冒険者ギルドに着く。


本来数十分掛かるが仕方無いと判断した。




冒険者ギルドに汗だくで現れたヴァイスに


新たに着いた素行の悪い冒険者が絡むが


時間の無駄だと地面にめり込ませた。


ヴァイスに怯える受付に急いでギルド長にと


書状を渡して読んだ受付はギルド長室に


ヴァイスを案内する。


ギルド長は書状を見て驚き説明を受けようとするが


今は先生の機嫌が最高に悪いと告げると


逸る気持ちを抑えて乗り出した体を戻し


自分の机に向かった。


依頼を書くためだ。


ハリーギルド長は以前トキの怒りを受けている。


汗だくのヴァイスと機嫌の悪さを告げられ


早くしないとべラムが壊滅すると感じた。




書状を貰い急いで依頼書を書き上げて


ヴァイスにヴァイス名義で受注完了をして


クリプス辺境伯にいる仲間の元に向かわせた。


あっという間にいなくなるヴァイスに


呆然とするギルド長。


一瞬で元に戻りそれほどまでに


トキの機嫌の悪さが計り知れないと感じた。




ヴァイスは急いで戻り仲間の回収と


アイサとシーサに別れを告げて


クリプス辺境伯に戻るから


姉様歓迎していいよと話して


トキの元に戻っていった。


ここまでの所要時間10分も掛かっていない。


5分以上は掛かってしまったことにヴァイスは


トキがどんな状態になってるか考えてしまい


早くしないと!と駆け抜ける。


クルス隊長は案内を終えたあと急いで


門に戻りべラムに厳戒態勢を早急に開かせた。


門に居たクルス隊長に気をつけてと言われて


門から出て馬車が無いことに気づく。




ヴァイス達はフィルの声に呼ばれて


馬車に戻りトキに知らせた。


馬車の入口にヴァイス、ブラッド、ルティ、


ガデルが横に並ぶ。


「先生!完了しました!!ニバルの報酬は


スーサイドの件に上乗せすると話を通してます!


これで待つことはありません!!


待たせてしまい本当に申し訳ありませんでした!!!」


「「申し訳ありませんでした!!」」


ヴァイスの言葉に合わせて


ガデルとブラッドも謝罪の言葉を告げて


全員が一斉に土下座を行った。


綺麗に整った動きに門に居た通商は


何かの練習かと思ってしまった。




「良いから!入れ!!行くぞスーサイドに!!!」


なんとか元のトキに戻ってるが


後ろの死神がお茶を飲んでいてまだ残っていた。


フィルは急いで発進しヴァイスが風を霧散させ


馬車で橋の近くに戻る。


リケラの回収をするために。


「リケラー!!もういいよー!!早く出て来てー!!」




ヴァイスが声を出すと橋の近くにある


不自然な山から鳴き声が聞こえた。


聞こえた途端に近くの山が動き出す。ドスン!


リケラが擬態して隠れていたのだ。


リケラは馬車に近付きトキに挨拶する。


「グルァ!!」


「久しぶりだな?リケラ!元気ではないか・・・


安心しろ!今からスーサイドに戻り


お前の仇を討ってやるから!


久しぶりに一緒だからな?楽しもうぜ!!」


「グルァァ!!」


久しぶりにトキと行動出来ると嬉しく鳴くリケラ。


地面は声の大きさに揺れる。


「落ち着け!リケラ!では行くか!!


スーサイドに着いたら新しい仲間を


教えるからな!楽しみにしてろよ!!」


「グルァ!!」ドスン!!


リケラの足踏みに揺れる地面。


「その傷で動き回るなよ?


後でスーサイド入るときに治してやるからな?


では行こうか!第2の故郷スーサイドへな!!」


トキ達はリケラと共に馬車で地面を走って


スーサイドへと向かった。




「俺の怒りを味わえよ!!幻獣ども!!!」


トキは怒りながらまだ見ない幻獣どもに告げた。

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