第72話ゾラム領ー5

~ヴァイス、アイサ、ルティ~


「やっぱり拠点は残ってたね?ルティ!」


「キュイ!」


「こんなところにあるとは思わないわよ?


普通は地面にテントを張るんだから!」


「そう言っても有りましたからね…」


「キュゥ…」


「怒ってる訳では無いのよ!


ここに作る意味が分からないの!」


「きっと森の魔物…はいないから動物を


避けるために作ったんだと思いますよ!」


「でもねぇ…まさか木の上に作るなんてね…


物は少ないわね…寝る用にあるのね!」


「・・・いえ?ここ見てください!」




ヴァイスは現在森の木の上にある拠点にいる。


トキの行った森と同じ場所だが


トキ達はニバルの近く。ヴァイスは奥の森にいる。


探索してると変な傷を付けた木が多くあり


気になり確認すると傷に登った形跡が見つかった。


傷に土がついているのでおかしいと思い


上を見ると複数の木の上に光を遮る木材が


横に並んでいる。床面に見える並び。


地面から床面まで10mはある。


ルティが傷を足場に登るとテントを見つけた。


ルティの連絡を受けてから登り現在調査中。




「この床に切れ込みがあります!


多分・・・「ガタン!」やっぱり!」


「地面が見えるわね…」


「攻撃用に作ったのでしょうね?上で見張り


人に気づくと板を開ける。


下を通れば攻撃するそんな感じですかね?


多分ですが…魔法使いが寝床にしたんでしょうね?


地面に刃物の刺さった形跡ありませんし


ここから下見ると窪みがありますね!


気付かれないように他の凸凹と同じにしてますが


違和感がありますね!人為的な凸凹です!」


「すごいわねヴァイス!これ見てそこまで


推測するなんて!私にはわからなかったわ!」


「僕の近くに凄い魔法使いいますからね?


先生やフィル、ルティもそうですから!」


「キュイ!」


ルティは右前足を上げて使うよと上げている。




「ルティも使うの?そういえば赤と黄色の


マーブル模様してるから火と土を使えるのね?」


「キュイキュイ!」


ルティは正解と万歳して右に小さな火の玉、


左に小さな土玉を作り見せる。


アイサが見終わると消した。


流石に火事は駄目だと理解している。


トキから何度も言われたから。


「凄いわねルティ!2属性使えるなんて!


しかも火事を起こさないように消して


賢いのね!ルティは!」


「キュイィ!」


誉められて嬉しがるルティ。


「・・・単に森で火事を多く起こして


先生に消火を覚えるまで説教されたからですけどね…」


「キュゥ…」


ルティは本当の事言われて悲しむ。


咄嗟に土下座まで器用にしている。


もう言わないでと姿で表してる。




「ヴァイス?あれは前にガデルやブラッドが


トキの殺気に当てられてしてた姿勢よね?」


「そうですよ!仲間は全員出来ますよ?


先生の説教に付属される姿勢ですからね…


痺れるんですよね…あの姿勢だと足が…


しかも意図的に説教長くしてるから


立ち上がろうにも痺れて動けないんですよね…


ちなみに父様も経験者ですね!


ホウリョの件を詳細話さなかったせいで!


後で姉様にもしてもらう姿勢ですからね?」


「父様は貴族よね?トキには関係無いのかしら?」


「関係無いですね!悪い事は悪いと言うのが


先生ですからね!あの時は黙っていたせいで


冒険者全員が危険にあってますからね?


危険とはブラッドとの対峙や千の数のいる


魔物部屋、洞窟の迷路の事ですね!


報酬に目がいくように仕向けての依頼でしたからね?


先生に言われて気付いた案件ですよ?


誰もが違和感を感じてないのに先生だけが感じた。


そのお陰で先生は従魔出来たんですけどね?


完全に倒してからの忠誠心でしたね…ブラッドは…」


「キュイ!」


ルティは土下座から元の姿勢に戻ってた。


「やっぱり思うわね…トキは何者なのかしら?」


「元浮浪者で冒険者、僕の先生でルティ達の主人です!!」


「キュイ!!」


ルティは万歳している。




「・・・話戻そうかしらね…その魔法使いは


何処に行ったのかしら?


反乱軍から話がなかったのよね…


木の上に拠点作る魔法使いの話は…」


「そうなんですか?うーん…」


「キュゥ…?」


ヴァイスと共に腕を組み首を傾げるルティ。




「隠れて監視してたのかな?反乱軍の動きを?


それともニバルの動きをかな?


それとも魔法使いと思われてなかったか…


森の民だからと言って作ったか…」


「キュゥ?」


「森の民で通じるのかしらね?この床は?


森の民なんて聞いたことないわよ?


謎が増えたわね?後で反乱軍に


聞かないといけないわね!」


「あの地獄には姉様だけでお願いします…


僕や先生は行きたくないですから…」


「分かってるわ!ついでに謎へのストレス発散を


してくるわ!楽しみね!!」


「投げるの主目的なってますね?


まぁ後で説教は変わらないですけど…」


「キュゥ…キュイ!?」


ルティは気配に気付いて気配のする方向に振り向く。




「ルティ?何かあったのかしら?」


「・・・家の持ち主ですかね…


ルティ?この家の主人の匂い分かる?」


「キュゥ…」


「そう…流石に消臭してるのかな?


大きな痕跡残して小さな痕跡は消す…


賢いのか分からない人ですね?


ルティ?気配はどうなったのかな?


分かるなら追ってみてくれる?


僕達ここに残るから!必要なら合図出してね!」


「キュイ!」


ルティは気配の察した方向に向けて走り出した。


木上から跳んで回転して地面から体への衝撃を防ぐ。




「ルティだけで大丈夫なの?あんな小さいのに?」


「・・・あれ?元の姿を朝見てないですか?」


「元の姿?もしかしてフィルぐらいの狐かしら?


あれってルティなの?気付かなかったわ!?」


「普段は変化してますからね…


あの可愛さでも危険度ランクAの魔物ですよ?


固有特性ですかね?狐は化かすよと・・・


まぁ何かあれば合図きますから!


僕達はもう少しここを調べてみましょう!」


「信頼してるのね・・・ルティの事をね…


あら?これは・・・」


アイサはヴァイスがルティに信頼している事に


感心して調査に戻り何かに気づく。




「気付かれないようにしていたんだけど


まさか狩りして戻ったら人がいるなんて…


新しく変えるかな?気に入ってたのにな…」


全身森の緑色と同じ服装してる小さな男が


嬉しそうに背中に狩猟の成果を担いで


拠点に戻ると人がいるのに気付いて走り去る。


その後ろ姿を追いかけるルティ。


「キュゥ?」


思っているよりも強そうに見えないが


森を熟知している様な動きで地面を走り


木の上に上がったり跳び跳ねたりしている。


アクロバットな動きに翻弄され


姿を見失ってしまった。




「キュゥ…キュイ!」


落ち込むルティだが逃げる姿の匂いが判断出来たので


頑張って追い掛けようと意気込む。


「キュゥ…キュゥ…キュゥ!」


回りを嗅ぎながら探してると匂いの行き先が


判明し追い掛けていく。緑の姿を見つけては


失い嗅いで探して追いかけるを繰り返す。




「・・・さっきから森にいない狐が


いるけどなんだろう?しかも追い掛けてる?


何かしたかな?もしかしてこの前の狐の子供?


まさかね…あの狐は1匹で大怪我していてたから


保護して今は居場所与えて回復してるんだけど…


なんだろう?気になるなあ?


もしかしたら反乱軍の?猟犬じゃなく猟狐?


珍しいけど・・・可哀想だ…


もし不憫な待遇されてたら解放しなくちゃ!


よし!首輪外して解放してあげよう!」


緑の姿は狐と対面することを決意する。


ルティは追い付き対面している。




「姉様、本当なら急がないと!?」


「分かってるわ!これならヒールじゃなくて


ブーツで来るんだったわ!走りづらいわよ!」


ヴァイス達は拠点の主人を判明して


ルティを探して走っていた。


「けどルティも器用よね?魔法の土玉を作って


道に置くなんて…お陰で迷わないわ!」


「これも・・・先生の教えです…


以前森で狩りしてる時にルティを


先行させたんですけどルティの場所が分からなくて…


ルティが居場所の合図に空に魔法を打ち上げたら


気付いた魔物がルティを囲んで襲ってて・・・


大変でしたよ…倒すのが・・・それから試行錯誤して


今の土玉になりました。土なら地面へ変わりますし…


火の玉では燃やして、水では飲まれて・・・」


「頑張ったのね…ルティは…


トキも苦労してるのね?あの年でね…」


アイサはヴァイスの話を聞いて


トキの気苦労とルティの苦労を理解した。




「あ!居たわ!けど…どういう状況?」


「多分緑の人と対面して向かってきたので


元の姿に戻り手足を踏んでると・・・」


ヴァイス達は土玉の跡を追い掛けルティを見つけると


ルティが元のゼクスマーブルテイルに戻り


言葉通りに地面に倒されていた。


緑の人は怯えて泣いていた。


ルティも捕まえたが泣いたので困惑している。


「ルティ!離して良いよ!敵とは違うから!!」


「コオォン?」


「ルティ?その人は住民ですわ!だから大丈夫よ!」


「コオォン!」


ルティは姿を変化させ緑の人の体に


ポンっと仰向けの体に乗った。


「うぅ…うぅ…なん…なんですかぁ…た…食べられると…


うぅ…おも…思いま…したよぉ…うえぇぇぇん…」


「キュゥゥ…」


ルティは思われていた事に落ち込んだ。




暫く時間をおいて泣き止む緑の人。


「姉様?改めて説明をお願いします!」


「分かったわ!ルティ?この人はね?


ニバルの森のレンジャー!


森の守護して徘徊してるの!


一時期ニバルの森に密猟が増えてね?


それを防ぐ為にと立ち上げた組織の人なのよ!


密猟や動物の保護、伐採等して森で暮らしてるの!


あの床も密猟者や間引き動物へ


攻撃する為にあったの!弓矢を見つけたわ!


調べたら組織の3つの木に弓の紋章見つけてね!


だから大丈夫よ!離れて大丈夫だからね!」


「キュイ!」


ルティはヴァイスの頭に登り乗った。




「しかしよく反乱軍に見つからなかったですね?」


「木上から見張りしてましたからね!


人間は下ばかり見ますから気づかれなかったです!


時折、間引きはしてましたよ?離れた場所でね!


反乱軍の情報得てもニバルに息の掛かった見張りが


いて戻れないし…なら僕達は隠れて監視しようと!」


「なるほど・・・この森に熟知してないと出来ない


監視ですね?地面に刃物の跡が無いのも


弓矢だから…木の傷は拠点場所の撹乱ですね?


探索中に見つけた墓や夜営の跡は


あなた達がしたんですね?」


「そうですよ!間引きした人には墓を!


死んだら埋めたりしないとニバルに疫病出しますし…


夜営の跡は奴等の後片付けですね!


奴等は雑に森を扱ってて下手したら火事でしたよ?


森の守護者として当たり前の事です!


そいつらも間引きして墓に入れてますよ?


死んだら反乱軍の肩書き無いですからね!」


「勉強になる考えですね!火事か・・・あ!?


来る前に調査した関所の火消してない・・・


先生調べたって言ってたから…説教される…」


「キュイ!」ポンポン!


ルティはヴァイスも仲間だと頭を叩いた。




「ヴァイスも大変ね…


レンジャーの方も大変でしたね?


森の守護して頂きゾラム侯爵の夫人として


心から感謝します!」


「滅相もない!私達の仕事ですから!頭を上げて下さい!


その言葉だけでも仕事している甲斐がありましたよ!!


ですからこの…ルティですか?トラウマなりかけたので


けしかけるのは止めて貰えますか?


魔物なんて居ないのに驚きましたよ!?」


「キュゥ…」


トラウマと聞いて落ち込むルティ。


アイサはレンジャーに言われて頭を上げる。


そのときに魔法が上げられ合図がなった。


レンジャーは反乱軍!?と驚いてたが


事情を説明して納得しヴァイス達はニバルの入口へと


向かった。




~ガデル、フィル~


「何もないですね?ガデル殿?」


「平和で良いじゃないか!見ろよ!


動物がいて人に慣れてるぞ!可愛いな!」


ガデル達はトキとヴァイス達の反対側の森で探索。


何の痕跡や違和感を感じずに動物達と和んでいた。




「今頃、主殿やヴァイス殿は何かしら発見を


しているのでしょうね?


私達は楽で良かったですね!」


「全くだな!一通りフィルが上空から


俺は地面でそれぞれ反対の回り方して


森の守護してる人と触れ合い真ん中や奥なんて


何も起きなかったからな!あいつらは大変だろうな!


俺達は楽だし発見ないから寝てても問題無いだろ?


レンジャーから得た物は知ってる内容だったしな!」


「そうでしたね!向こう側の内容ばかりでしたからね!


合図がなるまで寝ましょう!


ではガデル殿お休みなさい!」


「おう、見張りもレンジャーに頼んだしな!


俺も寝るとするかね!」


フィルはしゃがみ背中にウサギや狸達が乗っている。


ガデルも胡座でフィルに寄りかかり


足の上には動物達が寄り添う。


午前までの緊張感を忘れてほんわかとした空間で


二人は夢の中に進んでいった。




「あれ魔物か?喋るグリフォンなんて初めてだぞ!」


「俺も初めてだがあの動物達みてみろ!


なついているぞ!恐怖してない!


あの人にもなついて安心しているな!


寝てる間は俺達も和みながら見張るとしようか!」


「そうだな!俺達にも来てるしな!和もう!」


ガデル達の見張りにいるレンジャー達も和みだす。




時間が経ち何事もなく起き上がり見張りと動物達に


別れの挨拶を交わしてニバルの入口まで向かった。


「良い人達だったな!動物と一緒に寝る経験なんて


滅多に無いからな!貴重な時間だった!」


「そうですね!あれには和みましたよ!」


森の中で会話しながら向かって行く。


本当になにも起きなかった・・・


街に入り各自報告しているとトキとヴァイスから


2人は睨まれて不満を告げられた。


「良いよな…触れ合い出来てよ!」


「こっちは調べるの大変だったのに!」


「知るか!報告終わったから家に戻るぞ!


他も睨むな!悪くないからな?なぁフィル?」


「悪くないですね!良い時間でしたよ!」


トキとヴァイスは密かに行う予定の説教を長くして


八つ当たりする事を考えていた。


そう考えてるといつの間にかゾラム侯爵の家に着いていた。

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