第60話ゾラム領の内乱ー14
なあ?ガデル?」
「なんだ!この忙しい時に!」
「いやな?気になった事あってな?大丈夫か今?」
「トキ!今そんなところじゃないぞ!?
俺達は今大軍と戦ってるんだぞ!!」
トキ達は人の波に囲まれてる。
トキとガデルは一緒にいて、ブラッドは波の外。
フィルは空中から全体を見ていた。
2対複数の敵。常に死角から武器を振るい
トキ達の命を狙う。
剣、槍、斧、矢等の武器が目の前に襲い掛かる。
今は背中合わせに居るがさっきまではトキの
左から斧の横薙ぎを籠手で防ぎながら後ろから槍が突き、
体を横に右回転してかわしながら右手で斧の使い手を
殴り倒し、左手を横に構えて左に飛び矢をかわして
槍の使い手を槍と交差しながら突き倒す。
ガデルも同様に前から上段から振り抜かれる剣を
柄を交差して防ぎ、前に出ながら右へと剣を流して
剣の使い手の脇腹を左蹴りで吹き飛ばし
襲い掛かる人波を倒していく。
短刀も投げて金属糸を自在に使い弓使いを刺していく。
右で斧を振り上げた腕を見て弓使いから短刀を金属糸で
引き抜き糸ごと短刀を右に飛ばす。
ガデルと短刀の線上にいた者の振り上げた腕は
見えない糸によって切断される。
あらゆる声が響く戦場で2人は無傷で立っていた。
ブラッドも人波に押され外に出されたが金属バットを
振り抜き周囲の敵を沈めていく。
あるものは頭を飛ばされ仲間と視線を合わせて
両者の意識を失わせる。
あらゆる武器で攻撃するが一皮を切るぐらいしか
意味がなくその強靭な体には切られた皮が
直ぐに回復していく。
力任せに横に振るった斧や剣も強靭な筋肉には
内臓まで届かず僅かに食い込み抜けなくなる。
抜こうと必死になる相手に容赦なく金属バットが
頭へと襲い掛かり暗闇へと誘われる。
ぼろぼろの剣や斧、槍では逆に武器が筋肉に
耐えきれず割れていく。
そんな光景がブラッドの回りに溢れていた。
フィルはトキから言われて空中から全体を見ていた。
現在地、人の波の大きさ、ニバルまでの距離、地形、
指揮してる人間の調査をしていた。
地形はニバルが円の形で正門から両脇に森。
森の間の幅は5km。森まで人がいて波を打つ。
現在トキ達はニバルから約15kmの距離。
反乱軍は5つの集団が1km間隔毎に幅を作りそれぞれが
陣形を作っている。数は5500。
今トキ達がいる場所は陣形無し、
次の集団から正方形に並んでいるが
これは集団対集団の戦闘ではない。
魚鱗、鶴翼、雁行、彎月(偃月)、
鋒矢、衡軛、長蛇、方円等の
有名な陣形は意味を成さない。
複数対個人の戦い。2m間隔での戦い。
弓?腕に自信のある人しか使わない。仲間に当てる。
剣?斧?槍?縛られた動きしか出来ない。
それを考えたからトキから全体を見るように言われた。
各集団の後列に指揮してる者を見つける。
変わった兜している。
もみ上げから顎まで伸びた金属板。
頂点から後ろまで出っ張りある兜。
世紀末の髪型。モヒカンを思えば良いだろう。
そんな兜が指揮してる。
指揮してるそれぞれの特徴をトキは
上空500mのフィルから騒音の中で聞いていた。
戦況が把握した処で最初の会話に戻る。
「戦闘中は分かってるよ?ブラッドも離れたしな!
でもな・・・退屈なんだよ…単調なリズムでな?
眠たくなる・・・だから会話しようと思ってな!」
「・・・お前・・・そうだよな…そうだよ…
短時間しか一緒に行動してないが・・・
理解していたけどやっぱりお前としか言えないな…
仕方無い・・・でなんだ?」
「お前の復讐に手伝うって言ったろ?
特徴知りたいな~って思ってな!」
「それは今する会話なのか?
息切らして戦ってなくても必死に動いてるんだがな…
とりあえず2人の特徴だけどな…大まかで良いだろ?
1人は30代の歳で目の彫りが深くてな影がある。
右頬に一本の切り傷がある。
体格は俺は細身だが中肉中背ってところか?
諜報部隊の隊員だったメノスって野郎だ!
今はシレモ子爵の領地で統治してるだろうよ!
もう1人はそうだな・・・
口から顎まで髭生やして眉毛は太かった。
今はどうか知らないがな?
目はギョロっとしてたな!
体格はブラッドぐらい高くてゴツい体だな!
ラキュって奴だよ!くそ!!」
手足を動かしながら特徴を話すガデル。
少し額から汗流してるが傷は無い。
トキは軽快なステップで攻撃してる。
まるで踊ってる程に見える。
その姿に苛立ちする反乱軍。
まるで苦にもしないと言われてる様に思えた。
実際そうだろう。会話しているのだから。
そしてその会話に出てきた単語に驚く人が少しいた。
それを見てトキはニヤリと笑う。確定したと。
「そうか!特徴ありがとな!助かったわ!
それじゃお礼に・・・ここにいるぞ?
ラキュって奴がな?」
「はあ?本当か!?」
「仲間に嘘言ってどうする?本当だよ!
フィルの指揮してる奴の特徴とガデルの特徴、
周りのラキュって言葉に対する反応あってな?
少数だったが一瞬動きが止まったからな!
戦闘中にだぞ?あり得ない!なら何故?
知ってる奴の名前が出たからしか答え無いだろ?
って事でな・・・道作ってやるよ!
フィルからは最後列つまりニバルの近くにいるらしい。
良かったな?早速復讐の機会が訪れた!
なら仲間としてどうするべきか?簡単だな!
花道作ってやるよ!真っ赤に彩られた道をな!
ただ文句言うなよ?ずらして作るが道は凸凹だから!
さて・・・仲間のお通りだ!!開けて貰うぜ!
詠唱しますかな!『青い光線』っと!」
「はあぁ?そんな詠唱ねえよ!!
って…と・・・トキさん?」
トキはフィルから聞いた場所より10m右に離れた
場所目掛けて右手を前に出した。
右手は何かを掴む様に手を開き掌から
掌サイズの水のレーザーが撃ち出される。
途中で腕を少し上下に動かして波打つ様に直進する。
目の前にいる人間の上半身は
縦に掌3つ分の長さの水が貫通する。
当たった場所から大量の血が吹き出し倒れていく。
そのまま進んでいき壁を見て右に掌を動かして
水のレーザーを消して地面に赤い道を作り上げた。
ガデルは突っ込み入れて呆然として
トキをさん付けで呼んだ。
反乱軍も空いた空間を見て驚き唖然とする。
トキは振り返り笑顔で左手を横に上げながら
右手を左胸に当て頭を下げた。
「さぁ!ガデル様?花道が開きました!
真っ赤に彩られたガデル様専用の道でございます!
今の内に進んだ方が宜しいでしょうね!
フィルも上空からエスコートしますので
存分に復讐を果たしてくださいませ!
復讐は一騎討ちとさせますのでお気をつけて!」
「トキ・・・執事の役に入ってるな・・・
しかしありがとな!一騎討ち?楽しまないとな!
花道通って行ってくるぜ!お前も楽しめよ!!」
ガデルはトキの執事役に若干引きながらも
一騎討ちへと駆け抜けて行った。
途中で我に戻った反乱軍はガデルに襲い掛かるが
上空からのフィルの風刃に倒れていく。
「さて・・・皆様お待たせしました!
ガデル様は行かれましたので今から私がお相手します。
存分に…存分に楽しませてくれよなあ!!
屑ども?もう少し骨あると思ったが
大した事は無いな!全て肥料にしてやるよ!!」
トキは執事役から元に戻り籠手のギミックを発動した。
両手共に鉤爪を見せて反乱軍を切り裂いていく。
まるで空中に赤い花を咲かせる様に。
消えることの無い赤い筋が交差して花を咲かせる。
1人また1人と数が減っていく。
反乱軍は目の前にいる者に恐怖した。
目の前にいる者は笑顔で赤く染まっている。
回りの者も気づけば切り裂かれて倒れていく。
動きは踊ってる様に回転しながら魅せる。
動きに引き込まれれば最後。裂かれるだけ。
逃げようにも後ろに人がいて逃げれない。
横に避けて逃げようにも牛の魔物が
金属の棒で振り抜いてくる。
徐々に牛の魔物と切り裂き魔の間隔が狭くなる。
1人の反乱軍は気付いてしまった。
前方を見ると全ての頭が無く倒れており、
立ってる者は顔同士がぶつかり霧散する光景を。
全ての頭が切り裂き魔に当たらないように振り抜いてる。
金属の棒も1本から2本に変わり両手を使い
後ろに逃げる人を倒していく。
気づけば切り裂き魔は目の前にいて周りに人は居ない。
地面を見ると赤く染まって地面が高くなっていた。
最前列で生きてるのは自分だけ。
そう理解した途端に目の前に赤い花が見えて
意識を失った。綺麗と言い残して…
次の集団は最前列が壊滅したのを見て
逃げるや現実逃避、泣き出す、錯乱、気絶、
立ち向かう等の姿を見せる。
殲滅したものは笑顔で赤く染まっている。
隣の牛の魔物も両手に赤く染まっている棒を持ち
雄叫びを上げている。
雄叫びに悲鳴をあげる人も現れた。
「なあ?ブラッド?」
「モォ?」
「これは早く結果出るよな?圧勝で…
これって周りから見るとさ?・・・弱者虐めだよな?」
「ブモオォ…」
「まだ12時15分だぞ?後4つの集団があるらしい…
で軽く計算するとな?
午後1時にはニバルに到着するんだよ…
つまんねえな…つまんなさ過ぎるんだよな…
今頃ニバル内部でもヴァイスが活躍してると思うんだ…
で、ストレス発散してると思うんだよな・・・
こっちはさ?これでも抑えて戦ってるんだよ…
3%だぞ?武器を使用してるからさ!
でもこれなら武器を外して5%で戦ったほうが
まだ時間稼げるし楽しめると思うんだけどどう?」
「ブモオォ!」
「よし!なら互いに武器を使わないでいこうか!
体術だけな?俺は右に、ブラッドは左な?
正面からは逃がせる様にしてさ!
楽しめる奴探そうぜ!お互いにな!
さあ!楽しんでいこうか!ブラッド!」
「ブモオォ!」
トキは鉤爪を戻してブラッドは武器を背中に戻す。
血塗られた体が左右に別れて動き出した。
正面から逃げれると判断出来た者は走り去る。
徐々に走る姿が増えていき気づけば集団2つが消えた。
「・・・ブラッド?残り1つだな?」
「ブモオォ…」
「もうさ!後ろと森に逃げれないように壁作って
強制的に戦わせるか?残りパッと見て1500…
そしてニバル近くでガデルが一騎討ち途中…
ブラッド?囲んで窒息させるけど良い?
もうね・・・飽きた!
ガデルみたいな強者居ないんだよな?
もしかして強者はニバルの中に?
良いなあ・・・ヴァイスは!恵まれてさ!
全く強者は上を目指したいのに目指せないよ?
休憩に入るか!ガデルの一騎討ちを観覧しながら
飯でも食べて応援して・・・よしそうしよう!
ブラッド?囲んで窒息させてその上で見ようか!」
「モォオ!」
トキは集団に土で棺を作る。
トキ達は棺の上部に移動して釜戸を作り飯を作る。
釜戸の煙は棺に向けており燻製させていく。
穴から色々な声を聞こえるが知らないと
串焼きを片手に持ちながらブラッドと食べる。
地面では短刀と柄を使い戦うガデルと
剣を振るい戦うラキュが見える。
「今は・・・12時30分・・・
12時30分!?マジかよ‼嘘だろ?
真実は知らないほうが良いと聞くがその通りだな?
まさか15分しか経って無いなんて・・・
よし!ブラッド!全力で応援してまぎらわそう!
良い具合に焼けてきてるし…ガデル!がんばれー!」
「モォモォ!」
完全に現実逃避して串焼き焼いては食べて応援しての
繰り返しをするトキ達だった。
観戦してる中で・・・
「なあ?ブラッド?何で俺以外が主人公としての
資質持ってるんだ?
ヴァイスは天才肌で祖父が冒険者で貴族の白髪息子!
その祖父も冒険者ランクAでS間近で
めんどくさいからでクリプス辺境伯に地位譲ってさ!
ガデルは友を殺され反乱軍に復讐をする人!
全員が物語の主として構成出来るぞ?
本来なら俺は強すぎて◯◯とか放浪に出るとか
ハーレム作るとかな?きっと有ったんだと思うんだ!
でもさ?集まるの主人公資質と魔物だぜ?
賢者って程に賢く無いしさ…
チートって程神から何かを貰うってしてないんだよ…
ただライトノベルや小説読んで飛ばされてさ?
飛んだ先に間違いで危険度ランクSSのスーサイド!
英語で自殺って意味あるんだけどそのままだよ?
そんな場所で生活1年してみ?どうなる?
強者なるの当たり前だよな?確実になるさ!
だって死にたくないだろ?普通は!
そして魔法が強いが身体能力も強いってなると
単なる虐めにしかならないんだよ…
普通はよ?魔法が強くて物語が進む!
そして強者と有って破れて仲間と有って倒していく!
そんな王道があったはずなんだ・・・それがよ?
目の前にある現実は違ったよ…何か出来事起こるとさ
絶対に誰かに怒ってるんだよ…
ブラッドは知らないだろうけどな?
俺神様…この世界の管理者を正座さしてるんだよ…
次はテイマーギルドで補佐官に怒ってさ!
迷宮の時にブラッドも見てるだろ?
権力者を怒ってさ泣かしてるんだよ…
そんな主人公いる?居ないよな?絶対に居ないよ?
そしてこの後さ…分かるんだよ…定石?テンプレ?かな
誰かを怒る!決定事項だからブラッドも覚悟しとけよ?
慣れないと駄目だからな?まだ正座するの早いから!
後だよ、後!まぁ俺に付いていくんだからさ!
そこら辺覚えといてな?正座は崩して良いからさ!
今は・・・ガデルをみようぜ!気楽にな!」
俺は観戦してる中でつい愚痴ってしまった。
そして気づけばブラッドが正座慣れしている。
正座から崩させる為にガデルを見始めた。
さてどうなるかな?
俺は茶を飲んで見ていく・・・
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