第57話ゾラム領の内乱ー11

僕達は姉様の案内で尋問部屋に移動して


偽の見張りを椅子に固定させ尋問開始する。


部屋の壁には沢山の蝋燭があり


蝋燭の灯りで部屋を照らしている。




「さて全て吐いてもらおうか!」


「アガアガアガガアガ!」


「?何言ってるのか分かんないよ?


あ・・・顎砕かれてるんだったね…」


「アガアガア!」


「なら軽い回復魔法掛けるから


縦か横に首を振ってね?ハイなら縦、イイエなら横


分かった?終わったらなおしてあげるよ」


偽者は頷いた。




僕が先生がしていた真似事するなんてね。


姉様はシーアさんに怒られて尋問出来ないから


仕方無いよね。




「嘘ついても分かるからね?


ルティとラグがいれば一発で終わるから!


終わらない様に頑張って!!」


僕は胸前に肘を曲げて両手を上に向けて握り


小指を偽者に向けて頑張ってのポーズをした。


「では質問開始するよ?1、貴方は反乱軍だ」


偽者は縦に頷く。


「2、私は女性だ」偽者は横に振る。


「3、私は男性だ」縦に振る。


「4、仲間がいる」縦に振る。


「5、上司がいる」縦に振る。


簡単な質問を繰り返してルティが集めた


情報をぶつける。


「57、ニバルの冒険者ギルド長は仲間だ」


偽者は驚き暫くして横に振る。


「58、私は嘘ついた」


偽者は再度驚き横に振る。


「残念でした!嘘ついたね?では罰受けようか?」


僕の話を聞いて驚き横に振る。




「何がイイエなのかな?何回も嘘ついてるよね?


28、31、46、57は嘘だよね?分かってたんだよね


他にもあるけど弁解ある?無いよね?


だって嘘ついたんだからね!


終わったらなおしてあげるよって言ったのに


あぁ…だから終わらせようとしたんだ!


早くなおしてあげる為に!


通じて無かったかな?『なお、してあげるよ!』


つまりもう一度同じ目に合わせるよって意味!


理解したかな?つまりこの尋問は終わらない!


終わったらなお、してあげるよだからね!」




僕は先生に教わった尋問の仕方を使った。


言葉遊びを用いた尋問。


先生の場合はこの時は力を使うが僕は言葉で攻めた。


僕の後ろにいるラグは6本の腕で空間を殴り続けてる。


シュッシュッと空間を切る音が聞こえてくる。


その光景を見て青ざめる偽者。


青ざめるなら嘘つかなければ良いのにね。


ルティには闇魔法を掛けてさせている。


人の心に感情を揺さぶり恐怖を与える。


僕は壁に掛けてある蝋燭を息で消す。


「ふぅー…今貴方の命の残り火が消えたよ?


残りは壁にある蝋燭の数だけ…


残りは39本!さあ尋問始めるよ?


1、私は反乱軍だ


2、私は女性だ・・・」




同じ尋問を繰り返して暗示を掛けていく。


ちなみに蝋燭は少なくなると火を灯す。


永遠に終わらない尋問。永遠と思われる時間。


それを子供が魔物が行っていく・・・




この部屋には誰も入らない様にしている。


たとえ姉様でも入れない。


何故ならドアノブが無いから。


そして扉も壁と接合している。


つまり密室の部屋。空気穴は作ってるよ?


だんだん偽者の目がとろけていく。


目の前にいる子供に屈した方が良いと。


早く話した方が良いと思い込んでいる。


心から望み始めてる。




「先生に教わったやり方だけど・・・


僕には無理だね…おかしくなりそうだよ…」


「キュウ…」


「人を洗脳してるんだよ?まともじゃない!


やったのは僕なんだけどね・・・」


ヴァイスは後悔していた。


尋問する事に暗示を掛ける事に洗脳する事に。


人の心を無くしていく気持ちが溢れる。


10歳には重い出来事だ。


しかしヴァイスは気を持ち直す。


これ以上しなくて良いから。


もう僕はしないと決心した。


だが運命は賽を投げている。


奇数か偶数か、やるかやらないかは


心とは離れて動いてく。


賽は転がり結果を見せていく。


ヴァイスの賽は死ぬまで何度投げられるのか?


それは・・・賽子のみが知る。




僕は偽者からの情報とルティの情報を纏める。


・反乱軍は既にニバルで暗躍している。


・ゾラム侯爵のニル補佐官、ラキュ隊長、


冒険者ギルドのラレギルド長は敵。


・ニクルが率いる偵察部隊がいて村を襲撃してる。


(偵察部隊なのに?)


・遅くても1週間でニバルに反乱軍が来る。


・ニバルを攻める反乱軍はダスティが指揮してる。


・兵は盗賊採用して増加の為5千以上と考えられる。


・ダスティが到着時、暗躍部隊が反乱軍を入れる。


・僕達は警戒されている。


こんなところかな?




見張りの偽者は牢屋に入れている。


もう反旗を起こさない様にしているから大丈夫だろう。


尋問部屋の隣に牢屋がある。ちなみに地下。




「フワァ~ファァ…眠いね…今何時だろ?


1日は経ってるかなあ?流石にきついね…」


「キュウ…」「ガァ~ガァ…」


僕達は眠気に襲われてる。


部屋から出て見ると午前4時。


ニバルに入ったのが昼過ぎだから・・・


8時間以上尋問していたらしい・・・


「こんな時間なら仕方無いよね…眠いのは…


ラグ?今日は偽者の牢屋の前で寝てくれる?


口封じに来るかも知れないし…


僕達をか、偽者をか分からないけどね!


まぁ犯人は特定出来るし?


牢屋に偽者を殺そうとした人来たら躊躇なく


気絶させてね!僕達も地下の前で寝るから…」


「ガアガ!」


僕達は地下の近くに寝た。


途中で気配を感じて起きたけど


下からラグの声が何度も聞こえたので再度寝た。


僕達はゾラム侯爵の家で2日過ごした。


アイサ姉様を守る為。ゾラム侯爵を待つ為に。


その間侵入者の数は増えてたけど全員牢屋に入ってる。


ゾラム侯爵は領地の鎮圧の為明日には帰ってくる。


先生から離れて5日が経った。


その頃トキ達は各村の鎮圧を行っていた。




~~~~~~~~~~~~


冒険者ギルドのギルド長室で夜中に


反乱軍の暗躍部隊が集まっている。


「おい!何故皆戻らない!


1人を殺るだけに時間掛かりすぎだぞ!」


ドン!と机を叩いて怒りを表すラキュ隊長。


「それほどの強者と言うことだな…


ニバルに入れなければ、いや、


見張りが対応間違えなければ良かったのだ!」


冒険者ギルドのラレは険しい顔で腕を組む。


「ニルからは連絡無いのか!」


「連絡はある…だが牢屋に見張りがいて出せない…」


「ただの見張りだろう?何故だ!!」


「・・・見張りはあの熊だそうだ…」


「魔物風情が人間の真似事だと!?


ふざけるなあ!!」


机を下から持ち投げようとするラキュ隊長。


だが几は床と固定されており投げれなかった。




「くそ!くそ!くそがあ!!」


「落ち着け…まだ大丈夫だ!」


「何が大丈夫なんだ!?暗殺失敗してるんだぞ!!


しかもこの2日間で12人も失敗だ!!


何故落ち着けるのか!ラレ!!」


失敗の怒りをラレに向けて怒り狂うラキュ。


「落ち着く理由ならある!


考えてみろ!何故俺達は生きてる?


何故話が来ない?ニルにもないそうだ。


そしてニルから全員顎砕かれたと聞いてる。


尋問したんだろうけど最初の捕まった奴は


どんな捕まり方をした?どんなやられ方をした?


思い出せ!顎を砕かれた!言葉はまともに喋れない!


そして今もそうだろう!全員同じく喋れない!


そんな奴にどう尋問するんだ?


アガアガしか話せない!そうだろう?」


「確かに・・・あの顎なら無理だ・・・


ハハハ!あいつら馬鹿だな!尋問失敗して


侵入者も同じく喋れないなんて尋問の意味がない!!」


ラレに諭され落ち着き余裕を出すラキュ。




「そうだろ?魔物といえ人間じゃない!


尋問の仕方なんて分からない!倒すだけだ!


いくら従えようが野生には無いんだよ!


情報を聞き出すって考えはな!!


だから皆顎砕かれた!そして喋れない!


だから俺達は暗躍部隊は無事に生活してるんだ!


だから送り込むのはダスティが来るまで止めとけ!


今ならヴァイスの命を狙った奴に思われる!


そして頃合いを見て・・・ハハハ!ハハハハ!」


ラレは作戦を上手くいくと確信して笑い出す。


それは誰もが高笑いと思える笑い方。


完全に反乱は完了すると思い込んでいる。




「分かった!暗殺は止めよう!ハハハ!


これであいつらは油断するんだ!


ヴァイスが狙われたと思い込ませ本当の意味を隠す!


ならそれまでは戦力を温存するとしよう!


反乱軍はいつ頃ニバルに着くんだ?


ニクルから報告着てるのか?あいつは堕落してるから


怠慢してなければ良いんだがな?」


ラキュは反乱軍を迎え共に戦う為に温存をさせる。


ニクルについてもあれが何故偵察部隊隊長なのか


理解出来てなかった。


「反乱軍はそうだな・・・ニクルの部下からだが


ダスティは大きな鎮圧完了と思わせたゾラム侯爵を


ニバルに入れてから攻め込むらしい!


つまり籠の中の鳥作戦で行くと!


だから明日ゾラム侯爵がニバルに戻る。


軍も疲弊していてまともに動けない!


こちらも集めた情報の擦り合わせするから


2日後に戦力確認、3日後には反乱開始する!


念のために2日後までは軽く反乱軍は動く。


主に偵察部隊が動くそうだ!遠くの村を襲う!


主戦力はニバルの近くの森に隠れて過ごす!


反乱の時には警備隊、ギルド員、盗賊、住民が


表に顔を出すんだ!今までの我慢を放つ為にな!!


長かった・・・長かったよな・・・それが解放される!


もう嫌みや妬みを言われず大量の書類を捌かなくても


誰にも言われないんだ!!ワハハハ!!ワハハハハハハ!!」




ラレはギルド長としての仕事に嫌気を差してたのだろう。


途中から不満を言葉にするが反乱は確実に起きる。


そしてゾラム侯爵は死にダスティが統治する。


決まっている出来事を口に出して大笑いした。


確実に行われる反乱は誰にも邪魔されないと確信して!


ラレの不満に同意見なのかラキュも笑い出す。




「キュゥ・・・」


そんな2人を監視する黒い影。


月に照らされて赤と黄色の模様が外の壁にいた。


~~~~~~


話はトキが偵察部隊を殲滅した頃に戻る。


テントで一夜過ごして朝日が登ってる。


この日は反乱軍がゾラム侯爵の街ニバルに攻める。


「主殿!おはようございます!


今日ですね!反乱軍の最後の日は!」


「おはよう・・・ゾラムでのだな…厳密に言えば…」


「おはよう・・・反乱軍の鎮圧は確定事項なんだな…」


「ブモオォ!」


「あぁ…おはよう…ガデル、ブラッド…眠いな…」


「仕方無いですよ!ここ暫く動きまくりでしたから!


後、気になってた事があるんですけど良いですか?」


「ん?どうした?フィル?」


「疲れてるなら何故広い場所なのに


テントで寝たんですか?


ログハウス使えば回復機能ありましたよね?」


「・・・あぁ…孤児院暮らしが長くて忘れてた…


あったなぁ・・・そんな物が!ハハハハハ!」


「忘れて誤魔化さないでくださいよ!


ヴァイス殿が居ないから私がツッコミしないと


いけないんですからね!」


「いや?お前は似合わないよ?ツッコミ…


そういえばガデル?ゾラム侯爵の街は


情報無いのか?知った方が良いだろ?」


「もうため口なんだな?まぁ良いが…


そうだな・・・ずっと肉の近くに居たからな…


警備隊と冒険者ギルド、侯爵の補佐官、


一部の住民が暗躍部隊だな!主要人物の


名前俺知らないんだよ…


何故か教えてくれなかったんだよな?


調査しようにも肉から離れなれなかったし…


街の名前はニバル!ここから東にある。


街の四方に塔が建っていてな


北から時計回りに赤、青、黄、緑の屋根で


物見矢倉としての役割つまり見張りが出来る。


そんなところかな?肉の奴隷だからか知らないが


あんまり話が来なかったんだよな・・・


ゾラム侯爵についてはな?他のは来てたのによ!」


「ふぅん・・・大変だったんだな!


これからは俺のため、人のためによろしくな!」


「同情は理解したが…なんだ後半の言葉?


お前のためにしか聞こえないぞ?」


「流石だな!おいフィル!


ヴァイスが居ない時のツッコミいたぞ!」


「良かったですね!主殿!私もボケに専念出来ます!!」


「ヴァイスって子供大変だな…」


「ブモオォ…」ブラッドがガデルの肩を優しく叩く。


「さてと一通りの漫才終えたし走りますかね!


体を温めて戦闘準備だ!きっと着いたら


反乱軍がいるからな?選び放題だぞ!


あ!ガデルの武器は槍なのか?」


「ん?違うぞ?短刀の両手使いだ!


ほら、肉から回収したものだ!」




トキにガデルが短刀を見せる。


短刀は長さ1尺(30.3cm)以下の刃物の総称。


短刀を見ると刀身20cm、柄10cmの物。


鍔は無い。鞘は30cmあり短刀と同じ長さ。


「なあ?何で刀身より鞘が長いんだ?


滑り止めも付いてるし?」


「あぁ!言ったろ?両刀使いじゃなくて両手使いって!


つまりは・・・見せた方が早いな!


トキ、腕がなまって無いか


確認したいから手伝ってくれ!


お前の実力も軽く見たいから!」


ガデルはトキから短刀を返してもらい


戦闘準備に入る。


ガデルは左右の腰に短刀を帯びる。


短刀付けるベルトにも何らかの機構が


ギミックが付いているらしい。




「ハハハ!良いねぇ!鎮圧前の運動か?


どうせなら身体能力確認の為に走りながらするか?


その方が早く着くしな!


終わったら少し休憩して良いぞ?」


トキは笑いながら籠手を着けて構える。


ギミックありの白と黒の交互に蛇腹状の前腕を纏う籠手。


「あの重い武器は腰にあるままか?


つまり格闘術だけかな?


確認としてはありがたいかな?


あの武器は後の戦いに響くからな!」


ガデルは言い終わるとトキに一瞬で近づく。


左手には短刀、右手に逆手で柄を持ち攻撃する。


「成る程…切ると撲るか?面白いねぇ!!


ではニバルへと進みながら楽しもうか!!」


トキはどちらも籠手で防ぎ走り出す。


ガデルとトキの模擬戦闘がニバルに向かいながら


始まった。人間が全力で走る速さで向かう。


どちらも肩で勢いしないで音をたてずに駆ける。


「愉しそうですね?ブラッド殿!」


「ブモオォ!!」


2人も距離を保ちながら追い付いていく。


全員で戦闘前に体温めている。

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