第49話ゾラム領の内乱ー3
「・・・で寝起きで機嫌悪い俺に
説明してくれるかな?反乱軍の人その1?」
「うるせえ!誰が喋るかよ!!」
「そうか・・・その2は?」
「俺達は話すことねえよ!早く離せ!
貴族様だぞ?不敬だぞ!不敬!!」
「・・・ん…なるほどね…常套手段使うかなあ!
ブラッド?そこら辺の大石遠くに打ち込め!」
「ブモォォ!!」
現在俺達はゾラム侯爵領に向かい途中で反乱軍らしい奴を
尋問している。盗賊が貴族だと言ってる。
服装は盗賊。気品も感じない。何が貴族なのか?
服を洗ってないのかとても臭い。血糊もついてる。
寝起きの俺には余計に苛立たせる。
仕方ない・・・喋らせる為に脅すか・・・
トキに言われてブラッドは人の頭ほどの石を見つけて
上に投げる。落下した石を金属バットで
フルスイングして大空で星となった。
・・・あ!人に当たらないように祈っとこ・・・
俺は頭が働いてなくて安全について考えてなかった。
「・・・さてとその1と2は理解したかな?
今の大きさはお前達と同じ頭の大きさだ…
つまりブラッドが武器を振ればその場で
飛んでいく!体を置いてな?それを踏まえて
改めて説明してもらおうかな?
お前らは誰なのか?
何故貴族に成れると思ったか?
アジトの居場所はどこなのか?
反乱軍なら今はどこにいるのか?
何故お前らが生きてるのか?
頭が働いてなくてな?分かりやすく教えてくれよ?」
「先生・・・最後の質問何ですか?」
「・・・なんだろうな?分からんから
教えてもらおうかと思ってな!」
「本当に珍しく頭働いてないですね・・・」
「徹夜明けの寝起きだからな!仕方無いさ!」
ヴァイスはトキの質問に呆れていた。
寝起きのトキの前に大空の星に成った石の方を
体を縛られてるその1と2は顔を向けて
呆然としている。
我に返り打ち抜いた魔物を見てスッキリした
ドヤ顔をしていて顔を青ざめていく。
汗が大量に額から流れるが目の前の人物は
欠伸してこっちをみている。
「・・・で話すようになりましたか?
その1と2は?ん?何を青ざめてる?
べラムでは当たり前の光景だぞ?一般人も
同じ様に石を打ってな!最初は慣れなかった!
あぁ…今のお前らと同じだな!同士だな!
そんなに今は珍しくなくてな・・・
楽しく皆が打ってるよ!飛距離争ってる!
まぁ…一番はこのブラッドだけどな?
さて脱線したな…答えてくれるかな?同士よ!」
俺はべラムの現状と感想を話して
笑顔で質問をし直した。
目の前の人物の笑顔とべラムに恐怖したのか素直に
ガクガクと頭を振り頷く。
「おお!答えてくれるか!同士よ!
なら一問一答で答えてくれ!1と2交互にな?
先ずは第1問!ババン!!お前らは誰なのか?
さあ!必死に考えて答えよう!!短髪が1な!」
「ルティ?なんで先生は気分が良いの?」
「キュウゥ?」
「私にもわかりませんね?」
「モオォォ?」
ヴァイス達は何故か気分の良いトキに全員で悩んだ。
答えはバッティングに違和感を共有する者がいるから。
「俺達は王国反乱軍の一員を勝手に名乗ってる盗賊だ!
末端で反乱軍ではない!名前使って脅してる!」
「なるほど!反乱軍は本当に実在するのか…
では回答権はその2に移ったぞ?刺青の2よ!
第2問!ババン!何故貴族に成れると思ったか?
頑張って答えてくれ!」
「皆?あのババンって擬音は何?」
「キュゥ?」「モオォ?」「さあ?」
ヴァイス達は擬音に関して首を傾げる。
「反乱が成功したら成功者は
貴族に成れると言われてる!
俺達盗賊を雇ってる反乱軍がダスティさんだ!
ゾラム領を今襲ってる人だ!」
「フムフム…君達は雇われていると…
末端の盗賊だから反乱軍ではないが
成功したらダスティが貴族にしてくれるとね…
なるほどな!問題を終えたら話しを纏めて
同士に話してやるよ!答え合わせ含めてね!
では第3問!ババン!君達のアジトはどこか?
回答権はその1に移ってるからね!慎重に答えて!」
「先生楽しそうだね!」
「キュイ!」「モオォォ!」「ですね!」
ヴァイス達は楽しんでるトキに喜ぶ。
「あ、アジトはここから南に森を抜けた所にある
洞窟の中だ!収集した宝も置いてある!
牢屋にも人が入ってる!仲間もまだいる筈だ!」
「おーと!同士よ盗賊の上に人拐いなんて
いけない事だよ?仕方無いな~!
仲間を星にして宝も人も受け継いでやるよ!
嬉しいだろ?嬉しいなら笑顔にならないとな!
おいおい!怯えるなよ?悲しいよ同士よ…
では第4問!ババン!反乱軍はどこにいるか?
さあその2よ!怯えず笑顔で答えよう!」
「なんか…怒ってる先生より怖いよ・・・」
「キュウゥ…」「モオォォ…」
「戦闘狂モードより怖いです!」
ヴァイス達は戦慄している。
「は、反乱軍は各貴族の領地に集団でいる!
全部で20に別れているらしい!
本拠地は教えられてない!ま、末端だから!
でもリーダー格は王都には居ないと聞いた事ある!」
「そうなのかい?反乱軍は多いんだね!
ヴァイス?聞きたいんだがラジュマ王国の貴族は
幾ついるのかな?さあ答えよう!!」
「先生…怖いですって!貴族は確か40ぐらいだと…」
「怖がるなよ!ヴァイス!俺は機嫌良いから
許すけどな!悪かったら・・・どうなるかな?
貴族は40なら半分は反乱軍か・・・
これはこれは…完全に王国内で戦争起きるな!
リーダーもきっと反乱貴族の領地にいて指揮してるね!
どこにいるのやら…探さないといけないな…
では最後の問題だ!!ババン!何故今生きてるか?
これは難しいかな?でも答えたら褒美が出るよ!
さぁ褒美を得るためにその1よ!答えてくれ!」
「生きてる理由は・・・質問に答えるため?」
盗賊が答えると周囲に沈黙が広がる。
「・・・正解だ!!!大正解!!!おめでとう!!!
しかし問題に質問で返すのは戴けないな…
では全問答えてくれた君達に1つ目の褒美に
答えを纏めて教えてあげよう!!
君達は盗賊、反乱軍に雇われた末端のね!
しかし実際は一員ではないから貴族になれない!
残念だね!ダスティも捨て駒としてるだろうな!
次にアジトは南にある洞窟!俺のご褒美に
盗賊を終わらせて宝を回収しよう!
反乱軍は完全に戦争を起こそうとしている…
長い時間掛けて計画したんだろうね!
そして反乱されてる貴族は反乱軍に加担しないから
狙われた!もしくは王国への嫌がらせかな?
一斉に貴族に反乱したと報告受けて暫くは
作戦を練る!そして爵位の高い者から救い出す!
その間に各地の反乱を終えて規模を大きくする!
爵位の高い者の中に反乱軍もいて諜報仕事する!
それが狙いかもね!反乱軍は考えてるよ!
そして君達が生きてる理由は話させる為!
さあ!褒美が1つ消えたな!では!次だ!
一緒にアジトに向かう案内をしてもらおう!
簡単な褒美だ!同士諸君は俺とフィルとブラッドと
アジトに行き全てを差し出すんだ!嬉しいだろ?
生きてるんだからね!喜ばないと!
では!ヴァイス、ルティ、ラグ3人は先に
行っててくれ!ラグを起こさないようにな!
フィルとブラッドがいれば追い付けるから
安心してゾラム領に行ってくれな!」
「分かりました!分担ですね!先生!!」
「正解だ!ヴァイス!それじゃ後で!」
「ちょっ!ちょっと待ってくれ!案内するとわ~~」
トキとフィルとブラッドは盗賊のアジトに向かった。
ブラッドに担がれてる2人はあまりの速さに
理解が出来なかった。風と同化している。
トキは機嫌が良すぎて加減を間違えてた。
数秒後には森を抜けて洞窟を見つける。
見張りが2人いてアジトだと確定。
案内に聞こうとしたら意識を失ってたので聞けなかった。
現在アジトから500m離れた叢に隠れている。
「さてフィル!ブラッド!今から人助けに宝探しだ!
盗賊は・・・潰す…分かったな?
見張りは俺が殺る!そしてブラッドは
担がれてる奴を置いて後から来い!
獲物は残してやるから存分に振り抜け!
フィルは俺と一緒で先に人を見つけて保護しろ!
俺は・・・宝探しだ!獲物は痺れさせ捕縛する!
理解したな?」
「ブモォォ!!」「了解です!主殿!!」
トキはさっきまでと雰囲気を変えて盗賊退治を行う。
完全に殺気を纏わせ隙を作ってない。
フィルとブラッドは瞬きすると
トキが目の前から消えていた。
探すと見張りの居た場所に立っている。
スーサイドと同じ速さで一瞬で見張りを葬る。
右の手刀で意識を失わせる予定が鋭すぎて
見張りの頭が体から落ちていた。
「加減間違えてたな・・・5割にしてた・・・
1割で制圧だな・・・」
右手を振り血を落として呟く。
呟き終えるとフィル達が急いで現れる。
「早いです!加減間違えてますよ?主殿!」
「ブモォォ!」
「遅かったな!加減は・・・そうだな!
分かってるさ!初めての盗賊潰しに
高揚してるみたいだ!さっきまでと同じだったな…
だから・・・切り替えた!!さぁ!始めるぞ!
ブラッドも来てるから俺と行動だ!
奴等が目覚める時には全て終わってる…」
ブラッドが担いでる盗賊を置いたのを見て
トキは目が座り静かにアジトに入る。
アジトを探索しているトキ達。
アジトの角を曲がりある一画を偶然見かけたトキ達。
トキは纏う殺気が消え、静かに呼吸する為に息を吐く。
後ろのフィルとブラッドはその低く静かな息を吐く音が
偶然聞こえた。当たり前の無意識の呼吸音。
呼吸する生き物にとって無意識に行う行為。
普段から息を意識して行動する生き物はいない。
だがトキから聞こえた低く静かな吐く音に
感じた事の無いほどに心から恐怖した。
自然に流れる風の音よりも小さくか細い音。
その音が他の音よりも大きく耳に残る。
「フゥ…」この音がトキの感情を表していた。
2人は立ち止まり体が動かなくなる。
トキは自分でも今までと同じくも違う感情に気づく。
これは怒りだか今までと違う怒り。
今までの怒りは自分への行動に対する怒り。
坂口先生、グランドラ、クリプス辺境伯等は
その類いからの怒りだった。
しかし今回は悪行に対する怒りだった。
この世界に飛ばされた時には考えてなかった。
自分の事で精一杯だったから。
今は余裕が出来、人と触れ合い人道を重んじてる。
人の道は野生の道と違う。
弱肉強食の野生の世界なら『生きる為に』が通用する。
だから盗賊の行為も許していた。
相手が弱者だったからと。
だが今は『人にとって正しく』を目指している。
人とは自分、他人を意味する。
基本理念は変わらない。弱者は死に強者は生きる。
スーサイドで学んだ理念だ。変わる事はない。
単なる弱者なら助けないが
悦楽の為に弱者を蔑ろにし虐めるのは許さない。
野生の世界には存在し無いから。
食べる餌の弱者を何故虐めて蔑ろにして
楽しむのか理解が出来ない。
だから今は盗賊の行為は許さない。
物を奪う?当たり前だ!人拐い?生きる為だろ?
人を売る?生活の為に!それは理解出来る。
だが目の前にあるのはなんだ?
10人以上の盗賊が悦楽に浸ってる。
人の悲鳴で喜び、聞くために虐める。
老若男女問わずに暴力を振るう。
牢屋に枷をされ傷を負ってる老人と子供達。
男性からの暴力に無理矢理悦ばせる為に
声を出させられる半裸の女性達。
逆の立場で女の暴力を受ける男性。
その行為を見させられ枷を嵌めた嘆く男女達。
枷と鉄球を付けられた親子の年離れた
2人による剣での死闘を見て喜ぶ男女2人。
刃物で切り裂かれ悲鳴をあげる男性。
それを行い悦ぶ女。
それらをつまみに酒を飲み食事する男女の集団。
・・・ナニヲミテイルンダ?ナゼヨロコンデル?・・・
・・・ナゼワラッテル?ナゼキズツケテル?・・・
・・・ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?・・・
・・・アレガ・・・アク・・・ナノカ?・・・
トキの心に黒く濁る感情が芽生える。
盗賊達の行為に決して理解出来ない。
考えても考えても考えても考えても答えが出ない。
人間は醜い生き物。分かってる。俺も人間だ。
だが目の前にあるのはなんだ?
醜い魔物よりも醜い。あの生き物はなんだ?
虫?虫のほうがまだ高尚に思える。
宝探し?人助け?そんな考えは静かに消えた。
トキは再び呼吸する為に息を吐いた。
もはや慈悲なんて考えはない。
「・・・フィル?・・・ブラッド?・・・
・・・済まないが俺が始末する・・・
出番は無いが・・・問題あるか?」
トキは振り向かず低く静かな声で話す。
周囲にしか分からない程の静かな殺気に
近くのフィルとブラッドは大量の汗を吹き出す。
動くものなら殺されると心から感じる殺気。
今までの知っているトキの殺気とは考えられないほどに
どこまでも暗く響く事無い静かな空間が目の前にある。
「・・・沈黙は肯定と受け入れる・・・
・・・2人は・・・待っててくれ・・・
・・・直ぐに・・・終わらせる・・・」
トキは静かに動き出す。
2人にはスローモーションの様に
はっきりとトキの姿が見えていた。
ドッドッドドドドドド!!
行為を終えた盗賊どもの正面から
全力で殴り壁にめり込ませる。
音に気付いた盗賊は音の方を振り向く。
居たはずの奴等が居なくなっている。
壁に人影らしき物はあるが本体は見えない。
トキは死闘していた2人の武器を取り
見ていた男女に2つの剣を顔面に投げる。
ザザン!!ガガッ!!ドン!ドン!
観客の男女の頭が粉砕し2つの剣が壁に吸い込まれる。
バランスを崩した体は音をあげ倒れていく。
音の方を見ると倒れる2つの首なし死体を見て
残党は襲撃だと理解する。
各自が人質や武器を持ち始める。
「そんなの意味無いよ?」
部屋に広がる若いが静かで低い声が聞こえる。
「どこにい「ドン!」・・・ぁ」
男が声を出しきる前に殺される。
そこから先は見えない影に殲滅される盗賊達。
残党の目の前に広がる醜悪な赤い花が咲く。
武器も魔法も使わず手足だけで殺戮をしていく。
残り1人。盗賊の女性が怯えて頭を抱えて縮こまる。
ドン!目の前に聞こえる音に頭を上げると
若い男性が血塗られた手足で立っている。
「あ…あんたが…わ…わたし達を・・・ひぃ!!」
睨むように顔を見ると男性の顔は笑顔でいた。
笑顔が貼り付いてる。そんな顔をしている。
手足の血と笑顔に怯える女性。
「ナニニオビエテル?」
言葉に感情が感じられない。
女性の鼓動は高まり汗が止まらない。
体はすでに全体が濡れている。
「オマエラハ…イヤ…モウイイカ」シュン!
声が聞こえ終わると女性の意識は暗闇に消えていく。
トキの手刀で横に頭を胴体から切り離れた。
機械仕掛けの殺戮兵器が動きを止めた。
囚われていた人間はトキを見てそう感じた。
一切の感情がなく笑顔を貼り付かせ
見えない速さで周囲を赤く染める。
ギギギと首を動かし体もつられて動いていく。
トキは全体を見渡し残党がいないのを確認すると
右手を顔前に上げて額から静かに下げていく。
トキの笑顔は消え去り真顔に戻る。
「ふぅ・・・スマ・・・すまない…
怖がらせたがもう大丈夫だ!
盗賊は全滅したから全員解放だ!!」
トキを見て怯えていた囚われている人達は
戸惑いを隠せなかった。
新な盗賊がさっきまでいた盗賊を倒して
連れていき同じ事をされると思ったからだ。
全員が怯えて震えている。
全体が濡れている人もいた。
「安心してくれ…って無理か・・・
これじゃあな…しゃあないな!自己紹介する!
俺はトキ!!べラムで過ごす冒険者だ!ランクはBだ!
盗賊はもういないからもう悲観する事はない!
助かったんだから!!!
怪我してる奴は回復するから遠慮するな!!」
トキは自己紹介を終えて人質を解放した。
怯えていた人質は枷を外されて戸惑う。
徐々に枷の所に手を伸ばしていき無い事に気付いていく。
少しずつ体の緊張が緩み泣きながら喜び始める。
もうあの痛みは来ないと理解したのだろう。
もうあの経験をしなくて良いと理解したのだろう。
村や街に戻れると理解したのだろう。
「もう大丈夫だ!
いつまでも!いつまでも泣いて喜べ!
囚われの身からの自由なんだから!!」
俺は高らかに盗賊からの悪行からの解放を宣言した。
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