第35話迷宮ホウリョー2

「なぁ!ヴァイス?」


「わかります!痛っ!僕も同じ考えです!」


「キュゥン…」


「大部屋って言ってたよな?」


「はい!うっ!言ってましたね」「キュ…」


「・・・狭くね?息苦しいんだけど…」


「人が多いからですね!った!」


「キュン…」


「ルティは俺の頭に乗ってろ!


ヴァイスの頭じゃ圧死するから!」


「キュイ!」「先生僕も肩に…うぐっ」


「挟まれたか・・・仕方ないな…よっと!


これで大丈夫だろ?」


「ありがとうございます!息が吸えます…」


俺達は大部屋Bに入り現在立って


人の波にのまれている。


ヴァイスは子供だから揉みくちゃにされていた。


ルティもヴァイスの頭に避難してたが


避難場所には向かなかった。


俺は仕方なくヴァイスを肩に乗せて


その上にルティが座る。


波にのまれながら我慢していると


「すいません!人が多いので何人かは


大部屋AとC、Dに移動してください!」


ギルド員の声を聞いて波が揺らめく。


俺達はそのまま押されて流されていく。




「ヴァイス!どこに向かってる?」


「えっと…大部屋Cです!」


「そうか…分かった…」


大部屋Cに流されていき波が穏やかになった。


やっと落ち着ける。


部屋の中には座れる空間が確保されてる。


「やっと休めるな…冒険者ってこんなのが


日常的にしているのか?」


「今回は例外だと思いますけど…」


「キュゥゥ…」


「次回は遅く入る様にしようか…


あれじゃ依頼前に死んでしまうぞ…」


俺達は人波について話して椅子に座る。




「何でガキがいるんだ?遊びのつもりか?」


「知らねぇよ!最近子供の冒険者増えてるしな」


「ガキが大人の真似事か?指導しないとな!」


「そうだな!社会の恐ろしさをな!ガハハハ!!」


「あいつらトキを知らないのか?」


「ここに来て間もないんだろうよ!」


「可哀想にな…ボコボコに1枚!」


「賭けにならんぞ?俺も同じだからな!」


「ならヴァイスに1枚で!」


「難しい賭けだな…トキに晩飯!」


「ふっ若いな!フィルの説得に晩飯だ!」


「ありそうだな…くそ!目が多すぎる!」


・・・本人の前で賭けるなよ・・・




悪企みをしている冒険者に対して


トキを知ってる冒険者はどうなるか賭けしている。


この部屋には多数のパーティーが存在している。


『赤き虫の囁き』、『白き狼の風』、『暗き土』、


『漆黒の小鬼』、『猛る水竜』などがいる。


各自がパーティーランクD以上、最大Cランク。


個人参加も存在し知らない奴もいる。


そんな中、あるパーティーが現れて


冒険者から驚きと尊敬の声を上げる。


『暴威の盾』周りからランクAパーティーだと


囁いてるのを耳にする。




4人の男女比同じのパーティー。


巨体で背中に巨大な盾持つ男と杖を持つ女性。


眼鏡の槍を持つ男性に、手甲を着けてる女性。


・・・Aランクね・・・




堅実な動きをしそうなパーティーだなと


俺は思った。


盾職に近距離の打撃、中距離の槍、


魔法での補助兼遠距離かな?


バランスが取れてると考えた。


・・・だが武器持って現れるなよ…見栄か?




そのパーティーが現れた後にギルド員が現れる。


「ここにいるのはちゃんと受付したか?


・・・沈黙は肯定と判断した!


今回は人数が多いので各集団に別れる!


各集団A~Dとグループ分けして


4グループで砦の4ヵ所から突入していく予定だ!


私はこのCグループを担当するゾルだ!


ランクは元Aランクをしていた!よろしくな!


さて場所はべラムから1日程離れた場所にある!


その為移動手段はこちらで馬車を用意する。


専用馬車を持ってる者は後で報告してほしい!


またランクGの者は予備の剣を今回貸出すが


基本は業者や見張り、雑事と思ってほしい!


突入はF以上で行う!私達は西からだ!


各集団のギルド員の合図で開始を告げる!


べラムからの移動は準備時間を考慮し


明日朝8時とする!遅れたらそれまでだ!


馬車内の内訳も同日発表するからな!


食事関係はギルドが準備するから安心しろ!


他に何か聞く事はあるか?」


「馬車に荷物制限はあるか?」


「そんなに大きな荷物を持っていくのか?


1日程の距離で飯の準備は必要ない!


なら荷物は多く無いはずだ!考えろ!」


・・・そりゃそうだ!戦争じゃない・・・


「従魔は連れていけるのか?」


「いるなら良いが…お前はトキだったか?


使えるなら連れてきても問題無い!


ただ飯喰らいは必要ない!」


「分かった!了解した!」


「魔物の数は?」


「最初の説明聞いてなかったのか?


迷宮から大量の魔物が現れてると!


迷宮で量産されるから数を調べるのは無理だ!


ちゃんと考えて質問をしろ!」


・・・そりゃそうだ!聞いてないのが悪い!


「他に質問はあるか?


・・・沈黙は無いと判断する!


では明日8時正門の私の所に来る事!


今から受付で前報酬を貰え!では解散!」


ゾルは説明を終えて大部屋から離れる。


話を聞いた冒険者達は次々に部屋から消えていく。


残ってるのは俺達と『暴威の盾』パーティーのみ。




「先生!行かないんですか?」「キュイ?」


「今行っても混んでるだけだ!


暫く待ってからハリーに聞いて


前報酬を貰いに行く!」


「迷宮の件ですね!分かりました!先生!」


「キュイ!」


「お前さんが今有名な人物のトキ達か?」


「有名かどうか知らないがトキだ!あんたは?」


「てめえ!俺達を知らないのか?」


巨体の男性に話掛けられ答えると


眼鏡の槍男から遮られる。




「この街で活動している冒険者は多いからな!


知人以外俺は覚えきれないから


人間関係は隣のヴァイスに任せている!」


「ヴァイスだと?まだ子供じゃないか?」


「冒険者に年齢は関係無い!そうだろ?


実力主義の冒険者生活だ!実力は保証する!


実力があり俺の生徒でもある!よろしくな!」


「よろしくお願いいたします!ヴァイスです!」


「ハハハ!噂通りの人みたいだな!


俺は『暴威の盾』のリーダー!シルドだ!


よろしくな!名前と武器が似ていると思ってくれ!


普通の前衛だったが盾が相性良くてな!


今は気に入って使ってるよ!


この眼鏡はウォル!槍使いだ!無礼を掛けた!


後ろの杖の女性がマール!魔法使いだ!


手甲を着けてるのが娘のメリルだ!可愛いだろ?


メリルにウォルが惚れてこのパーティーに入ってな!」


「その話は良いだろ?リーダー!」


ウォルとメリルは20代前半、


シルドとマールは40代の年齢だ。




「そうなのか?頑張ってくれ!マールはシルドの


奥さんか?」


「いや!元奥さんだ!冒険者の生活で


2番目のな!最初の奥さんがメリルを産んで


亡くなってな…マールと付き合い結婚したが


同じ冒険者だ!いつ死ぬか分からない…


悲しまない様に別れてパーティーを解消したが


何の因果か依頼を一緒にしたのを切っ掛けに


一緒のパーティーだ!今はそれぞれが


結婚して子供もいる!メリルの弟と妹がな!」


「なんか申し訳無いのとややこしいが


重なって上手く言えないな…」


「それが冒険者って者だ!若者よ!」


「そんな冒険は要らないな・・・」


「僕も嫌です…」「キュゥ…」


「すまないね…うちのリーダーが絡んじゃって…


私達の相手同士も同じ『暴威の盾』で


活動してるが今回依頼が重なってね…


今は確か・・・ヴァーリ武国で活動してるよ!


子供達はべラムにいるけどね!」


「ややこしいが重なったよ…子供がべラムに


居るならうちの孤児院で依頼中は預かろうか?


寝室と食堂、教育など学舎があり


躾の届いたスラムの子供達や大人も一緒にいるから


安心だし安くするぞ?」


「冒険者なのに教育者…話通りだな!


まだ俺の1回りも若いのに凄いな!!」


「意識改革の一環だ!気にするな!


で…どうする?今から戻るけど?」


「私見てみたい!どんな場所か見たいし!」


「メリルが行くなら…俺も行くぞ!」


「面白そうだな!決定だ!リーダー権限で行くぞ!」


「すまないね…トキ君…迷惑掛けるが頼むよ


子供連れて来るから1時間後にギルド入口で


どうかな?滞在料金払うよ!」


「分かったなら1時間後だな!


俺達は先に戻って受け入れの準備しとくよ!


子供の数は?」


「子供はなんと・・・4人だ!男女比同じだぞ!」


「なんか…流石Aランク?って誉めて良いのかな?」


「誉めても笑顔しかでないぞ!ハハハ!」


「・・・んじゃ、入口で!俺達は行くよ!」


「ああ!よろしくな!!」




俺達は『暴威の盾』の子供を受け入れる約束して


部屋から出た。前報酬を受付で貰い


俺はフィルに話して厩舎に残ってもらい


また戻ると告げた。


フィルが屋台の飯で渋々了承して孤児院に戻る。


俺は孤児院の大人と子供を全員集めて


迷宮の特殊依頼を受ける事と街から数日離れる事、


『暴威の盾』パーティーの子供を受け入れる事を


告げた。


『暴威の盾』の子供は同じ様に生活させると伝え


人数に寝室の確保を任せる。


俺達は再度ギルドに戻りフィルに飯を食わせて


まだ時間がある為ハリーギルド長の元に向かう。


受付に聞くと今は外出してると言われて


仕方なく迷宮の話を後にした。


俺達が入口で待ってるとそれぞれが子供と


手を繋いで現れる。


子供の名前はスン、マー、タム、ウィン。


スン、マーが女の子でタム、ウィンが男の子。


全員が年子の6歳。


ちなみにヴァーリにいる『暴威の盾』に


シルドの奥さんのリリィ、マールの夫のアルト、


次女のシア、長男のルートの10代の2人がいるとか。


合計12人の集団で暮らしてる。


・・・一気に人名増えたな・・・




俺達は自己紹介して孤児院に向かう。


最初喋るフィルにシルド達は驚いてたが


子供達は直ぐに慣れて背中に全員乗っている。


ルティの可愛らしさにメリルがノックダウン!


新たに金蔓・・・いやファンが増えた。


孤児院に着いて子供達や大人が出迎える。


孤児院での説明をシルド達にする。


孤児院のシルド達からの印象も良く、


子供達も仲良くなったので預かった。


託児料金として4人で銀貨2枚貰った。


そのままシルド達も明日まで泊まる事になり


急いで部屋の準備を行ったりして大変だった・・・




現在孤児院に大人10名、子供120名まで増えて


各グループ大人1名に対して子供12名で


1パーティーが10グループが出来上がり


全員が平均で冒険者ランクFにいる。


個人だと大人で20代のダンがランクD、


子供で9歳のラカがランクEまで上がってる。


勉強に実技を組み込み各自が安いが


愛用の武器を持っている。


実技ではそれぞれの武器に似せた木武器を使う。


武器はべラムで子供用に仕入れた物を使ってる。


大人はスーサイドでの戦利品を渡している。




シルドの子供達を孤児院で上位パーティーに


それぞれ預けて外での依頼は俺達が帰るまで


禁止としてべラムの清掃や勉学に励ませる。


実技は土地内ならOK!


勉強、農業、実技、街内の依頼、休憩を


各グループの大人に任せた。


責任順位で大人が1位、リーダー格の子供が2位


として行動させている。




迷宮への出発前に改めて孤児院全員に


俺が戻るまでの事を話して


宿題に帰ったら全員に各テストを行うと告げた。


全員嫌そうにしたが元気良く返事をする。


話を終えた俺はシルド達と共に


べラムの正門へと向かった・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る