第31話街べラムー16

トキ達が冒険者登録して2ヶ月が経ち


ある場所で数人が会合をしていた。


「まさか本当に登録するとは思ってなかったよ」


「こっちも驚きました!考えてたんですか?」


「いやまさか!?自由にとは言ったけど


付いて行くと聞いたとき驚いたよ!喜んだけどね」


「彼は何者なんですか?貴重な物出して…


あのあと大変でしたよ‼情報規制したりと…」


「私もまさか人の死を教材にするとは…


将来が心配になりましたよ?本当…」


「・・・私もそれを聞いて失敗したと


本気で後悔したよ・・・」


「で!?何者ですか?2ヶ月の依頼達成率100%!


全て魔物討伐でたまに盗賊の討伐も成功して!」


「私も知りたいよ・・・浮浪者って言ってたけど


そんな感じしないし魔法も凄いし・・・」


「魔法ですか?使って無いですよ?彼は…


全部ヴァイス様の教材として後ろで見てると…」


「・・・何者なんだろうね・・・」


「ヴァイス様も昔以上に強くなってますよ‼


複数と闘って勝ってますし・・・」


「引き籠りした時は心配したが今は逆に心配だよ」


「分かりますよその気持ち・・・今のヴァイス様


見たこと有りますか?変わりましたよ?」


「ああ・・・この前帰って来たよ・・・


金髪が白髪に変わってたよ・・・」


「何をしたらああなるんですかね?修行だと


数日街から離れただけであの姿になって…」


「彼は何がしたいんだろうか?


あんな事もしてるしね・・・


この街べラムはどうなるんだろう?」


「「・・・・・・」」




場所はクリプス辺境伯の執務室。


クリプス辺境伯とクルス隊長、ハリーギルド長が


集まっていた。




トキが現れて2ヶ月が経ち街に変化が起きてた。


喋るグリフォンのフィルが有名になり


馴れた人たちが生き物相談をしている。


マーブルテイルのルティは愛らしさに


ファンクラブが出来、可愛がる人たちが続出。


クリプス辺境伯の1人息子ヴァイスが


冒険者登録して活躍する。そして、


数日の修行してから金髪から白髪へ変わった。




トキは街の子供達を集めて孤児院を作り


勉強を教えている。道徳や文字、算数など。


べラムで土地を買い、自分達で家を建てた。


その場所が孤児院になり孤児が住んでいる。


職の無い大人も雇い勉強を教えてる。


覚えた大人は教師として子供に教えてる。


1画にはフィルの相談部屋と


ルティの触れ合い部屋を作り小遣いを稼いでる。


冒険者としても確りと信用を得ている。


今では昔からいる人にとって知らない人はいない。




何故そんな事になったのか?


理由は・・・フィルが原因である。


危険度の高い魔物のグリフォンが街で喋る。


街の住人も怯えていたがある時、


落ちぶれた屋台を見つけて串焼きを頼んだ。


屋台前で飯を食べてると旨そうに食レポをして


話を聞いてた人の腹に空腹をもたらし


屋台に人が集まった。


そこからその屋台は大繁盛!


次々に屋台を旨そうな食レポで繁盛させ


食通のフィルと言われて馴染んだ。




その頭に乗ってるマーブルテイルの


リスのような食べ方、動きの愛らしさが


広まりファンを増やしていく。




フィルの言葉は食レポから相談解決と変わり


次々に泊まらない客が宿『暁の夕凪亭』に集まる。


暫くは我慢していたが流石にアウレとルーラも


生き物が集まる厩舎を見て営業妨害だと怒り


追い出されてしまった。


ちょうど更新時期が相まって宿泊拒否された。




俺達は暫くはべラムの外で生活していたが


ずっと手加減していたせいでストレスが溜まり


ヴァイスも連れて今まで暮らしてた森


スーサイドへ移動した。


スーサイドは危険度SSランクの森で


強靭で俊敏な魔物と肉食植物が跋扈する森。


久しぶりに岩竜のリケラ、


アシュラグリズリーのラグ、


ロックケルベロスのケルと再開する。




森を見ると新たに橋が掛けられており


畑も広く野菜の種類も増えていた。


生活する魔物も増えて進化した魔物が多く


懐かしい気持ちになった。


リケラ達主催で宴会が開かれ


全員で楽しんだ。1人震えたままだったが…




宴会の次の日から久しぶりに5割の力で


俺とフィルとルティは狩りをした。


俺は全力で魔法を使い直ぐに山が抉れた。


フィルは大空へと飛び上がり魔物を


サーチアンドデストロイしていく。


ルティも久しぶりにフュンフマーブルテイルへ戻り


肉食植物を狩り尽くす。


俺達が全力を出した場所は木々が消えて


地面は溶岩地帯へと変化していた。




俺達は久しぶりに5割の力を出して


スッキリしてると


バタンッ!後ろから倒れる音が聞こえた。


振り向くとヴァイスが倒れてる。


ヴァイスには何も伝えず修行だと告げて


無理矢理連れて来ていた。




初めての修行が領地にあるスーサイドで


魔物と仲良く宴会している先生達。


警戒していたがそれをすり抜け攻撃してくる。


俊敏な魔物や蔓の動きが見えない。


疲労していく中で先生達の異常な力を


見てしまった。ルティも大きくなってる。


全員が以前ヴァイスが朝練で受けた殺気を


越えた気を放ちながら立っている。


3人の動きが一切見えず気付いたら


前の木々が無くなって熱い溶岩地帯にいる。


思考が停止して分からない感覚に襲われ


意識を失ってしまった。




トキはヴァイスを介抱していると変化に気づく。


ゆっくりとだが魔力が上がっている。


そしてそれに合わせて髪の毛が変わり


金髪から白髪へと変化した。


理由は分からないが起きたら伝えて


どうするか判断してもらおうかと考えた。




5日間、ヴァイスが起きず交代で介抱していた。


最初はトキ、次にフィル、ルティ、


ケル、リケラ、ラグの順に。


そして6日目で目を覚ました。




目を覚ましたヴァイスは体の異変に気づく。


寝ていた体を起こすと前より軽い。


先ず髪の毛が白い。長さも腰まである。


力に違和感を覚えてトキと共に体を動かす。


ヴァイスは軽く跳んだつもりが上空まで跳んだ。


慌てるがトキが目の前に現れてトキに掴まり


無事着陸する。


木に軽くつついただけで倒れる。


ケルの全力にも追い付き見れる様になった。


自分の力に怯えていたがトキから告げられる。




「ようこそ!俺達の世界へ!!」


まぶしい笑顔で言われた。


フィルとルティも同じ笑顔で・・・。




ヴァイスはトキ達の過去を知った。


・異世界人である事。


・1年半この森で暮らしてた事。


・この森の大ボス『グランドラ』を倒してる事。


・神様が存在している事。


・神様をテイマーギルドの様に怒鳴った事。


・フィルとルティはもらった卵から産まれた事。


・先生の本気はまだ先生でも分からない事。


・実は初めて会った時に馬車が飛んだのは


先生達が原因である事。


・普段の生活は5%の力で生活してる事。


・魔法は我流であまり名前を知らない事。




ヴァイスはトキから告げられて納得してしまった。


先生の根元はこの森にあると。


死に対しても厳しく指導する。


この森では生きるか死ぬかの2択のみ。


弱肉強食の世界で生活したから今がある。


今までの生活が生ぬるく感じるほど


シビアな世界がここにある。


そして今自分は先生のいる領域へ足を入れたのだと。


嬉しくもあり悲しさもあり感情が渦巻いた。




トキはヴァイスの力を調整する為に


一緒に行動した。


ヴァイスは今俺の領域に足を入れたが


足の親指だけ入ってる状態だ。


俺達との力の差は近いようで遠い。


天と地ほど離れている。


掴めるようで掴めない蜃気楼と一緒だ。


一度は通った道だからこそ教えれる。


俺はヴァイスに一度全力を出されて


調整をさせていく。その繰り返しを行う。


成長期だが気にしない。力に溺れない為に厳しく。


何回か体が耐えきれず靭帯が切れたり


骨が折れたりしたがトキが治していく。




森での数日が経ちヴァイスは力に慣れて


普段の生活が出来る様になった。


動体視力は変化出来ないがそれ以外は


調整を完了した。2割の力で生活出来る。




調整している間もリケラ達と修行をさせる。


今まで通りの力の感覚が7割らしく


その力なら森で生活出来る。


ケルと追いかけっこ出来、ラグと打ち合いが出来、


リケラの攻撃に耐える。


10歳ながらも恐ろしい人間が出来てしまった。


心は常にトキから説かれて溺れる事はない。


傲る事もなく誠実な人間性を得た。




ヴァイスが修行と調整を終えたので


最終試練としてトキが見てる前で


1人で魔物を5種狩る様に告げる。




ヴァイスは気合いを入れて挑む事を了承する。


ヴァイスは狩る魔物を選んでたのか


真っ先に移動した。


俺も移動すると目の前にヴァイスとリケラが


戦おうとしてたので慌てて止めた。


流石に知り合いが狩られるのはな…


森の後を任せた魔物が狩られるのは


心にくるものがある。


ヴァイスへ仲間への狩りは禁止だと告げる。


ヴァイスは俺からの試練は


リケラとラグとケルを倒して後2種狩ると


思っていたらしく内心嫌だったが


先生の期待に応える為に気合いを入れて


臨んだらしい。


ヴァイスも納得して試練を始めた。




狩りは順調に進んでいた。


最初に見つけた兎型魔物エスケープラビット。


脱兎の如くの言葉通り素早く逃げる兎。


瞬きしてると追いつかない速度で


遠くに居て速度を下げない。


そいつに追い付き狩り終える。


血抜きは俺がして次に向かわせる。




次に見つけたのは猿型魔物ハンマーコンガ。


手がハンマーの様になっており


高い位置から勢いつけて叩きつける。


耐えても反対の手で叩き上げられ


挟み込む力を持つ猿。


その攻撃に耐えて一撃で切断する。


ヴァイスは武器に剣とチャクラムがある。


ハンマーコンガは挟むと体に隙が出来る。


その隙を狙って剣で攻撃をした。


俺が死体は回収して向かわせる。




3種目は猪型魔物ペインボア。


痛みを蓄積する魔物。以前伝えたが


あんまり相手にしたくない。


痛みを楽しむからだ。


そいつを見つけてヴァイスもがっかりした


表情で見るが一瞬で気持ちを切り替え


攻撃した。反撃を許すと相手に蓄積した


痛みが流れる。


下手したらショック死する痛みだ。


反撃を受けないように行動し


態と隙を作り突進させる。


その勢いを利用してカウンターで一閃する。


許容範囲を越える痛みで苦しみ倒れる。


俺は回収しようと前に出ると先に向かってた。




4種目は鳥型魔物アイアンバード。


名前の様にアイアン=鉄の固さを持つ。


一部を除いて全身が固く固さを利用した


攻撃を与える。シールドバッシュされる。


ヴァイスはチャクラムに魔力を通して


風と火を纏わせる。


修行中に俺は魔法を教えた。


得意な属性は風と火。


後2種類使えるが今は使わない。


属性を纏わせたチャクラムは青い火を纏ってる。


まだ纏いにムラがあり及第点かな?


ヴァイスはチャクラムを投げて当てる。


固さが自慢の鳥だが高温には勝てず


切られ堕ちてくる。ヴァイスは


地面に激突したのを確認し次に向かう。


惜しいな・・・


激突しても生きていた鳥。


及第点として俺が狩る。


右手の人差し指向けて圧縮した水弾を打ち出す。


周りに風を纏わせ水弾は回転していき


頭を一撃で打たれ絶命する。


回収してヴァイスの気配がある場所へ向かう。




俺が気配を探ってヴァイスの元に着くと


ヴァイスは苦戦していた。


最後の相手は熊型魔物マグメイデンベア。


全身に鋭いトゲを生やして魔法を使う。


遠距離では魔法を近距離では包容して


まるでアイアン・メイデンの様に


相手を殺す。


魔法は土属性でトゲを生やして飛ばす。


たまにトゲが長くなったり縮んだり


新たにトゲを生やすので判断力が問われる。




ヴァイスはチャクラムに先ほどの様に


青い火を纏わせ4つ投げる。


熊もチャクラムを見てトゲを生やして


対処する。輪投げを見てる感覚に近い。


トゲを直角に生やして取ろうと意識をした。


その隙を付き剣で攻撃を試す。


剣に風を纏わせドリルの様にしている。




チャクラムと剣を防ごうとした時に


トゲが生えてない場所に痛みが走る。


熊は確認すると地面から4つのトゲが


刺さっていた。叫びをあげると


上空から一気に冷気が降りてくる。


ヴァイスは熊にダウンバーストを放った。


風と火と水の魔法を使い上空に積乱雲を


作り下降気流を発生させた。


俺が修行中に見せた技の1つだ。


剣とチャクラムを囮に使い


密かに積乱雲を発生させて


土属性のトゲで体を固定させて


ダウンバーストを放ったのだ。




凍った熊の欠片が地面に落ちている。


これは換金出来ないな・・・


しかしヴァイスは無事に試練を終えたので


良しとしよう。


ヴァイスは試練を達成して力が抜けたのか


その場に座り込む。


若干息が荒い。仕方ないだろう。


思っている以上の魔力を使ったのだから。


囮の魔力に使える属性を全て使い


最後に緻密な作業が求められる魔法を


使ったのだ。慣れない作業は負担となる。




俺は合格を告げてヴァイスは喜ぶ。


動こうとするが動かない体を見て


俺は背中に乗せて森の拠点へと向かった。


最後に俺の8割の速度での風景を見せてやった。


だいぶ拠点と離れていたが一瞬で辿り着く。


背中のヴァイスは速さにやられたのか


意識を失ってた。




意識を戻したヴァイスは2日寝ていた。


起きてきたのでべラムに戻ると告げて


リケラ達との別れを惜しんでた。


また来れば良いと伝えると喜んだ。


俺達は街道までは森基準の力で走り出す。


森の奥から1分も掛からずに街道に着き


ルティがフュンフのままなので戻させた。


フィルの頭にルティが乗り俺とヴァイスは


跨がってべラムの街近くの森に向かって飛んだ。




この時点で1ヶ月と14日経っている。


まさかこの後にイベントが起こるとはこの時は


思いもしなかった・・・

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