第26話街べラムー11

「泊めていただいてありがとうございました!」


「トキ君は恩人なんだからお礼はいいよ!


本当はここにずっと居て欲しいけど…


冒険者として生活していくんだよね?」




「えぇ…外の世界を自由に見たいので!」


「そうか…残念だよ…せっかくヴァイスも


ルティと仲良くなったのにね…」


「たまに顔を出すので許してください…」


「顔を出してくれるなら問題無いよ!


何かあればギルド通して連絡するしね!


今から動くならクルス隊長を随伴させるよ!


フィルとルティも一緒だし


色々面倒事は避けられるから!」


「ありがとうございます!


では30分後に入口に向かいますね!」




「分かった!クルスに伝えるよ!


後、フィルもオブに頼んで連れてきて


貰うように伝えるよ!


まさかあのオブと仲良くなる魔物が


いるとは世界は広いね…」


「・・・迷惑掛けました…」


「いやいや、謝らないでくれ!


嬉しい事なんだからさ!


それでは良い冒険者生活を期待してるよ!」


「ありがとうございます!


お世話になりました!!」




俺は応接室でクリプス辺境伯と別れの挨拶を


済まして部屋に戻る。


最後に確認を済ませてクリプス辺境伯の入口に


向かうとルティを抱いたヴァイスと


フィルと楽しく話すオブさん、


クルス隊長が待っていた。




「おはようございます主殿!遅いですよ!」


「キュイ!」


「時間通りの筈だかな…」


フィルとルティが不満を漏らす。




「トキ君と言ったかな?私はオブだ!


昨日は挨拶出来なかったな!


フィルと離れるのは名残惜しいよ!」


「トキです!フィルの世話していただき


ありがとうございました!


たまに顔を出すのでその時に


話してやってください!


フィルも嬉しいと思いますので」


「それはありがてぇな!


んじゃ!フィル元気でな!」


「はい!オブさんも元気で!


ダルシアさんとベルゼさんにも


伝えてください!」




俺はオブさんと挨拶して


フィルの別れの挨拶を聞く。


・・・仲良くなってよかったなフィル…


少し嬉しく思ってしまった。




「トキ君!それでは行こうか!」


「はい!クルス隊長!」


「ハハハ!クルスで良いよ!


朝は良いもの見れたしな!」


「ありがとうございます…」




俺はクルス隊長の先導でべラムの街へ歩き出す。


遂に冒険者へとなるのだと心が踊る。


俺達がどこまで出来るのか分からないが


期待を裏切らない様に行動しよう!




べラムの街は様々な人で溢れていた。


ごつい体の人や肥えた人、


小さいが動きにムラの無い人、


馬車が道を走る。


旨そうな匂いを出す屋台の人や


大きく宣伝する店の人、


昼間から酒を飲む冒険者、


不釣り合いな武器を持つ青年や


際どい服装の女性。




色々な人が街の中を動いており


まるでテーマパークに来たみたいだ。


俺達が歩いてるとやはり驚く声が聞こえる。


怯えて立ち止まる人も悲鳴も様々。


そりゃグリフォンが街にいるんだもんな。


仕方ない事だ。




当の本人は屋台に興味を持ち


顔をキョロキョロと動かしてる。


「主殿!屋台ですよ!屋台!


何か食べませんか?」


「フィル…さっき朝飯食べたばかりだろ?


ギルド着くまで我慢しろ!


下手したら討伐されるぞ?」


「討伐は嫌ですな…我慢します!


その後は良いですよね?」


「あぁ!一緒に行動したら問題無い!


それまでは我慢だ!」


「了解です!主殿!」




涎を垂れ流しながら喋るフィル。


・・・お前グリフォンだよな?


たまに忘れそうになるが危険度Aの魔物だ。


その魔物が涎を垂れ流してキョロキョロと・・・




俺はフィルに我慢をさせて先を行く。


喋る光景に顎が外れそうになる人がいたが


無視だ!無視!


気にしてると進まない。




そして俺達は大通りの一画にある


高い石壁(高さ3m)の囲いに囲まれた


大きな2階建ての建物に着いた。


建物の名は『暁の夕凪亭』。


木と石で出来た古い建物。


豪華ではないが歴史を感じさせる建物だ。


俺達が今後暫くは拠点となる場所。




入口は足元が見える空間がある


両開きの扉。(内開き)


土地の中に厩舎が存在する。


中には入口側に1個の机に対して5台の椅子。


それが12組あり奥にはカウンター。


カウンターの後ろには開放的なのか


広いキッチンが存在している。


カウンターの両隣に奥に繋がる扉と


2階に上がる階段がある。




フィルに外で待つように伝えて


クルス隊長の後に宿に入る。




「いらっしゃいませ!!ってクルス兄ちゃん!?」


「久しぶり!!ルーラ!」


「クルス兄ちゃんが来るなんて・・・


お姉ちゃん!!兄ちゃんが来てるよ!!!」


「騒がしいね!!ルーラここは宿だよ!


や・ど!!静かにしないか!!」


「ごめんなさい…


でもクルス兄ちゃんが来たんだよ?」


「クルス?本当だね!久しぶりじゃないか!」


「久しぶりです!アウレ姉さん!


2人とも昔から変わりなくて!」


「クルスこそ!全く顔出さないし


何様だよ!あんたは!!」


「いや…俺、警備隊の隊長だよ?


そう顔出せないよ!?」


「知るかいそんな事!


ってあれ後ろの人はお客さんかい?」


「あぁクリプス辺境伯の大事な恩人でね!


街に冒険者として来たんだ!


拠点としてここに泊まって貰おうと思ってね!」


「そうかい!だからクルスが案内をね…


立派に成ったものだよ‼


遅くなってすまないね!お客さん!


私はアウレ!この子がルーラ!


後、ここには居ないが私達の夫達と


共に宿を営んでるよ!」




・・・クルス隊長、尻に敷かれてるな…




気の強そうなアウレさんと元気なルーラさん。


アウレさんは貫禄のあるドシンとした体型で


ルーラさんは小動物的な姿をしている。


2人とも美人で夫もいる。


2人はクルス隊長の従姉妹だ。


年齢は・・・止めとこう…


とりあえず30代だと思う。


結婚してるんだしな!うん!うん!




「はじめまして!トキです!


これからお世話になりますが


部屋はありますか?」


「敬語はやめてくれないか!馴れないからさ!


普通に接してくれたら良い!


部屋は空いてるよ‼


冒険者なら連泊をオススメするよ!


割引するからさ!」


「わか・・・了解!」


敬語を話そうとしたらアウレさんに睨まれた。




「そうだ!これ使える?」


俺は蝋付きの手紙をだす。


クリプス辺境伯から貰った手紙だ。


「姉さん!後これもな!」


クルス隊長が違う手紙を渡す。




「ちょっと待ってな!って紋章入りじゃないか!?


あんたはなに・・・あぁ恩人だったね…」


「姉さんこれが紋章入りの手紙なの?


私初めて見るよ!!」


「当たり前だよ!!滅多に見ない物だからね!!


こういうのは他の高級な処でしか


使われないものだよ!!」


アウレはルーラに説明して手紙の封を切る。




・・・蝋付きは珍しい物なんだな…




アウレは2つの手紙の内容を見て驚愕する。


手紙と俺を交互に何度も見て


あり得ない物を見るような顔をしている。


ルーラも見たこと無い表情をするアウレを見て


不思議に思い、こそっと手紙を覗き見る。


内容を見たルーラも同じ行動と表情をする。




・・・流石、姉妹だなぁ…動きがそっくりだ!


俺は感心していた。


感心しているとアウレがこっちを見て話す。


「あ!あんたは何者だい!


そんな成りで強いのかい?


従魔がグリフォンとマーブルテイルって


本当かい?テイマーなんて久しぶりに見たよ‼


あとクルス!お前に言いたい事があるから


顔貸しな!!!」


「ちょ!ちょっと姉さん!な!なんだよ!?」


アウレがクルスを強引に引っ張り


奥に向かって行き怒鳴られている。




・・・何が書かれてるんだろ?




俺は手紙の事に対してと


アウレの言葉の違和感に疑問抱いてると


ルーラが両手に2枚の手紙を持って近づく。




「お客さん!この手紙は本物なの?」


「あぁ本物だ!直接貰ったしな!」


「そうなんだ!!お客さん従魔にグリフォンと


マーブルテイルをテイムしてるなんて


凄いよ!!だからスーサ様に


保証されてるんだね!!」


「ん?どういう事だ?」


「え?手紙に書いてるよ!ほら!」


ルーラから左手の手紙を貰う。




俺は内容を確認すると


スーサ=クリプス辺境伯の名を持って


この者トキとこの者の従魔グリフォンのフィルと


マーブルテイルのルティは安全であり


保証すると書かれている。




手紙を読んで違和感は無い。


ならこの違和感はなんだ?


言葉の違和感を考えてるとルーラが


右手の手紙を差し出す。




「今読んだのはお客さんが出した手紙!


こっちがクルスお兄ちゃんが出した手紙!


読んでみて!!凄いんだね!」


「ん?ありがとう…」


俺はクルス隊長が出した手紙を見る。


内容は・・・




この者トキは熟練された技術を持ち、


尋常な実力を持つ人物である。


よってこの者のランクを初期のGランク


ではなく最低でもCランクを与えよ!


直ぐにランクを上げてSへと登り得る


最高の冒険者へとなるだろう!


スーサ=クリプス辺境伯








「・・・・・・」


疑問が解決したよ、ルーラさん…


だからクルス隊長行ったんだな…


俺は手紙を読んで顔を上げ上を向く。






・・・送り先を間違うなよ…クルス隊長……




手紙で俺の従魔がグリフォンと


マーブルテイルであると。


そして読んだ手紙を見てCランクの


実力を持つ人物だと判明したと。




そして・・・


「あんたは警備隊の隊長になったんだろ?


で!大事な恩人の世話を任されて!


なのに手紙を間違えるってどういう事だい!


蝋付きの手紙は機密だろうよ!!」


「はい…言い返す言葉もありません…」


奥から声が響く。




宿の宿泊についてはルーラさんと行った。


素泊まりで銀貨2枚を30日泊まる事で割引して貰い


銀貨50枚になった。


従魔は別なので金貨2枚を払う。


1日2食、飯はフロアで頼んで食べる。


別途料金払えば部屋で食べれる。




「ではトキさん!部屋は2階の向かって左側の


個室28です!鍵は寝る前に確りと行って


外出する時は鍵を出してくださいね!」


この宿は2階が個室で1階が大部屋の雑魚寝。


個室にはソファーとベッドと机があり


衣類を入れるクローゼットも完備している。




俺は鍵を貰い部屋を確認してカウンターで


ルーラさんと話してるとげっそりした


クルス隊長がアウレさんと現れた…




俺はアウレさんとルーラさんと別れて


テイマーギルドに向かった。

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