第百三話:星月乙姫の場合2。
そして彦星アルタ。問題はこいつだ。
こいつだけは見舞いになかなか来ないなぁ~。まぁアイドルだし仕方ないか、むしろもう俺なんかとは関わる気なんて無いのかも…なんて思っていたのだが…。
「私アンタの妹になる計画、諦めてないから」
俺の病室を開け、目が合うとそれだけ言い放ち帰っていった。
…はぁぁぁぁぁ?
あれはどういう解釈をすればいいやつなんだかわからん。
あの女が妹になるって言ったらほんとにそう出来るだろう。その気になればどうにでもできるだけの力がある。
もしもだが、本当にアルタが自分の妹になったらどうだろう?
毎日の生活に白雪と、アルタと…多分ネムさんもついてくるよな。
なんだそれ最高かよ。
いや、良く考えるとトラブルの種が増えるだけのような気もする。
ネムさんはきっと俺にからかいと言う名の嫌がらせをしてくるだろう。これは白雪が倍になったと同意だ。
そしてアルタという妹が出来た場合きっとあの女は俺を罵倒する日々を繰り返す。
それをご褒美として享受できるほど出来た大人ではない。
だがメリットもある。
なにせ家にアイドルがやってくるのだ。俺の妹として。
そのシチュエーションという意味では最高ではある。
可愛いし。素直じゃないけどまぁ、いい子だし?
デメリットとメリットを秤にかけた場合どちらに傾くのだろう。
いや、無駄だ。
俺がどう思っていようと、仮に反対しようともあいつがやると決めたらどうせやる。
それに母親が大歓迎してしまう。
だから俺が考える意味など無い。
どうなるか解らない以上、その時になってから考えるしかないのだ。
そもそも、今後起きるかもしれないあれやこれよりも今考えなければいけない事がある。
「のう、ここでずっと寝ているのも退屈じゃろう?ここは一つ女医を…」
「やめろっつの。俺は動けないんだから!」
今は白雪だけで手一杯である。
「なんじゃ。看護婦の方がよかったかのう?」
そう言うと、ポンっという音と共に白雪がナース姿になる。
…そういうのもあるのか
「お、なんじゃ?やっぱりナースが好きなのじゃな」
「べ、別に…そういう訳じゃ…」
とは言うものの、肌も髪も真っ白なこの悪魔には真っ白のナース服がよく似合っていた。変な意味ではなく、変な意味ではなくだ。
「ほうほう。そんな状態でもわらわ相手に欲情できるのなら心配は無用じゃな」
「そんなんじゃねーって言ってるだろ!」
「こらこら、他の患者さんの迷惑になるから大声出しちゃめっ、ダゾ☆」
誰だてめー。可愛いから腹立つ。
「ひゃっひゃっひゃ。面白いのう。少しからかうだけでお主からエネルギーが流れてくるわい」
こりゃ退屈しなくてすみそうじゃ、などと言いながら白雪が元の姿に戻る。
別にもう少しナース服でいたってよかったんだからねっ!
そんな感じで俺の入院生活は続く。
平和なのも残り数日。嫌なカウントダウンだが、実際それを楽しみにしている自分もいるわけで。
まぁ何はともあれ、終わり良ければ全て良しってやつだ。
なんだかんだ言って白雪がいて、みんなとドタバタやってるのが俺の日常になってしまっていた。
それに、そんな日常がいかに素晴らしい物なのかというのを思い知らされてしまった。
なら俺は今後もこの日常を続けていこう。
何か問題が起きるようならこの日常を守れるようにがんばろう。
いろいろ面倒な事もあるしやっかいな事も山積みになるのだろうが結局なるようにしかならないのだ。
「なるようにしかなんねーならそれを楽しまなきゃもったいねーよな」
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