第13話「なんてこった、エミリィを探さないと!」
パカァァアン!
何度目になるか分からないゴーレムの撃破。
エミリィ捜索中のビィトを邪魔をする面倒くさい奴らだ。
湧き出たドロップ品も魔石やら古代の硬貨やら、石切りのノミだったりと、いまいち過ぎるものばかり。
ドロップ品を入れる袋は、すでにそれらでぎっしりだ……。
「エミリィ! どこ!?」
通路はほぼ一本道。
しかし、通路を行くまでは気付かなかったが、緩やかに湾曲しているらしく、見通しがさほどよくない。
均一に掘られた石壁と所々に残るむき出しの岩肌が、不規則かつ規則的に続いているため目の錯覚がおこっているのだ。
延々と長く真っ直ぐに伸びているようで、その実態はさほど真っ直ぐ伸びているわけではないらしい。
勢い込んで走り抜けようとすると、湾曲した通路の先にいるモンスターに出くわしてしまうということ。
実にいらやしい作りだ。
突如ゴーレムの集団に遭遇するのはザラにあり、加えて溜め池やら空洞がポッカリと口を開けて待ち構えている。
それらも、ビィトを飲み込まんと虎視眈々と狙っていやがるのだ。
「くそ……! エミリィ……まさか、穴に落ちたのか!?」
水の溜まっていない空洞が、恐ろしいくらいの垂直孔を見せている。
その底は様として知れず……真っ暗。一体どこに続いているのやら。
「いや、エミリィがそんなドンくさいはずもないか……」
絶対とも言い切れないが、ビィトよりも遥かに身体能力の高いエミリィが、何の痕跡も残さず穴に落ちるなんてありえないだろう。
だが……ならばどこに?
ゴーレムは前方からも来る。
どこから沸いて出てくるのか不明だが、エミリィはこいつ等もやり過していった?
……わからない。
本当にどこにいったんだ?!
「エミリィぃぃぃぃぃぃぃぃい!!」
はぁはぁ……。
いったいどこに。
そもそも、この通路はどこまで続く──?
一見して真っ直ぐに見える通路も、所々横穴がある。
朽ちた扉がついていたり、板で封鎖されたりしているが、中を確認する気にもなれない。
扉がない所を覗き込んでみれば、中は狭い空間でボロボロに崩れたベッドか何かがある。
その様子を見るに、元は居住空間だったのかもしれない。
こんなところに誰がとも思うが、ドワーフのような山好きの種族は、坑道に住み着くこともままあるという。
このダンジョンはそうした坑道のなれの果てか……はたまたダンジョンを作ったなにがしかがここに住んでいたのか。
いずれにしてもダンジョンについて分かっていることなどほとんどない。考えるだけ無駄だ。
ただ、そこに魔物と宝が沸いているということ。そしてそれが人を──冒険者を引きつけているという事。それくらいだ。
そして、誰もダンジョンそのものは特に深くは考えていない……。それが普通。
いつもの如く、普通のことなのだ。
そして、普通については少し逸脱した考えを持つビィトだったが、ダンジョン内のその部屋を一つ一つ調べる暇もなかった。
余裕があれば探索の一環として調べたかもしれないが、今はエミリィを探すことにのみ心血を注いでいる。
不気味なダンジョンで女の子が一人……。それは想像だにするに恐ろしい。
ならば早く見つけてあげなければ。
部屋の中にいるかもしれないという考えはもちろんビィトにもあった。だから最初は調べていたのだ。
しかし、いくつかの部屋を調べていくうえでそれがいかに非効率的であるか知ることになる。
扉のノブにうず高く積もった埃はビィトが触れるまでは誰も触れていないとわかった。
部屋の中にも、ビィト以外の足跡はない。
つまり、明らかに痕跡が見つからない以上、そこにエミリィはいないのだ。
ならば横道を探すときは痕跡の有無を確認した方がいい。
そうして通路をいきつつ、横道はチラりと確認するくらいで、随分と捜索していたのだが──。
「ん?」
閉じられている扉が多い中。
時には奇妙な場所もある。
まるで封鎖するかのように、外側から板を打ち付けられた扉や、はなっから扉などなく、なぜか厳重に板で塞がれた場所。
その先を捜索する気にもなれなかったが、ある場所にて────。
「ここ、封鎖板がない……?」
誰かが飛び込んだようにも、何かが蹴破ったようにも見える痕跡。
元は厳重に板を打ち付けて封鎖していたのだろう。
近くには古代の硬貨が二つ……。
近くの溜め池には砂埃が浮いていた。
「ここでエミリィが交戦したのか?」
少なくとも2体のゴーレムがいたらしく、溜め池に浮いた埃から察するに3体……いやそれ以上か。
3体目は水の中に落ちたのだろうか? そうすると、もっと多くのゴーレムがいた可能性がある。
ここで全てのゴーレムを仕留めていたならばエミリィはそれ以上進んでいないはずだが……。
予想するにここで追い詰められたのだろう。
やむを得ず一時的な避難先として、仕方なく封鎖を破って中へ入った。
そんな所だろう。
ここに他の冒険者がいるとは思えない。この痕跡は間違いなくエミリィだ。
その確信とともに、チラリと覗きこんだ内部。
(暗いな…………)
その封鎖の先は薄暗く、そのままでは内部がよくわからない。
ただ、蟻の巣と繋がった壁の穴以上に入り口は狭く、ゴーレムは入ってこれないだろう。
エミリィを追い詰めたゴーレムは、ここの入り口に陣取っていたのかも知れない。
そのうちに迫りくるビィトに気付いてエミリィを諦め、矛先をビィトに向けたのだろう。
つまり、さっき倒した何体かはエミリィを追いつめた連中らしい……。
「頼むから無事でいてくれよ──」
薄暗い内部……。
何かを封鎖していたと
小柄な人物が飛び込んだであろう痕跡を抜け、ビィトも内部へと踏み込んでいく。
だが、ビィトはもう少し確認するべきだったかもしれない。
風化してボロボロであったとはいえ、封鎖板の上には古代の文字で注意書きがある──。
『静かに! 死人が目覚める』
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