第75話「なんか足りました」
「んな!」──まだあるのか!?
そんな顔でベンが驚いているが、それはビィトも同じだ。
諦めかけていた解放への道が見えて──────あれ?
「お納めください。
些少って……ホントに些少だな。
「
「回収量が多かったので多少は色を付けております。ギルドからの礼だと思っていただいて結構です。昇格への査定にも影響します」
いや、俺──仮免許。
「ぶははは……! ぎ、銀貨が30枚か! ははは! た、足りなかったな器用貧乏ッ」
ぐ………!
金貨8枚に……銀貨198枚ッ…………銅貨51枚──!!!
あ、あとちょっとなのに!!
※ ※
「さ、さぁ、もうどけよ! あ、あああとは、お、おお俺の報酬計算だッ!」
ぐぐぐ!
そんなバカな話が──……!
あと、銀貨2枚……!
「べ、ベン!」
「うるせぇ! 引っ込んでろ」
ベンは取り付く島もない。
ならギルド──!!
確か、このギルド員はテリスとか言ったな、
「な、なぁ! て、テリスさん。その、お金を──」
「なんですか? ギルドは仮免許に融資なんてしませんよ」
ぐ……!
Sランクだったら多少は融通も効いたはずなのに!
「いいからどけ! 奴隷はすっこんでろッ」
「くそ、ベンんんん!!!」
あとわずかと言うところで、引き下がれるものか!
ベンの命令に真っ向から反対しているので、呪印がギリギリと痛みを与えてくる。
それでも──────。
「あ、あの!!」
割って入ったのは、ハラハラと事態を見守っていたエミリィ。
ここに来てからほとんどしゃべらなかったのに、急に大声を出すものだから驚いていた。
テリスだけは訳知り顔で微笑んでいる。
「なんだガキ! テメの出る幕じゃねー! すっこんでろッ」
口汚く罵るベンに一瞬怯えたような表情を獲るエミリィだが、……意を決したように言う。
「べ……ベンさん。その──」
「あ゛!?」
グっと一度口を引き結ぶエミリィは、
「い、今まで……その──ありがとうございましたッ」
…………。
「はぁ? 何言ってんだガキ……」
急に礼を言うエミリィにベンも──そして俺も「?」顔。
テリスだけはニコニコしている。
どゆこと?
「テリスさん……お金──引き出してもらっていいですか?」
「いいわよ。……言ったでしょ? 貯金しなさいって」
「はいッ!」
え?
は?
え?
…………。
あ!!!!!!!
「銀貨2枚でいいかしら?」
「はい!」
「んな!? あ゛あ゛ん゛!? 何だその金は!!」
顔を真っ赤にしたベンが怒鳴る。
怒鳴るが────。
「はい……。お兄ちゃん」
「エミリィ──…………これって」
そうだ。
蟻の巣を殲滅した時のドロップ品の換金。
確かにあの時、残りお金を貯金していた。
──していた!
だけど、これはエミリィのお金で……。
「あ、あげるんじゃないよ────か、貸します!」
「────ああ。ありがとうエミリィ」
ベンは真っ赤な顔をしているも、二の句を接げないのか口をパクパク。
「これで──────金貨8枚。銀貨200枚」
ジャリン! とベンの前に金を突き出す。
「俺の身を買うッッ!」
奴隷の身柄代──金貨10枚。
その代金だ!!!!!
「ぐ!」
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