第21話:王族の務め
「宰相の元に……ですか?」
「ああ。お前とエリーナで行け」
新年の儀を終えて数日。
既に宮殿は通常業務に戻っている。
俺は突然執政宮のウィル叔父上に呼びだされた。
そして、俺とエリーナは何故か宰相の元に行くようにと言われたのである。
「少し質問が」
「なんだ?」
「なぜ、我々が
「……ちっ」
なぜ舌打ちをされた!?
叔父上の反応に心の中で叫びつつ、俺は考えた。
本来、王族は貴族を迎えることはあっても、貴族のところに出向くということはまあしない。
しかも、何か歓待という目的でもなく、ただ執務時間中に行けと言われたのだ。
本来あり得ない。
ならば、そこに何の目的があるのだろうか。
「何か、賭けでもしましたか叔父上」
「なぜバレた……」
見え見えです。
元々賭けをしているとは思っていなかったが、少なくとも試験されているのだろうなということは分かっていた。
立場的に王弟同等という勲章を得ている俺だが、言うまでもなく俺は自分で動く方が多い。
その方が楽だからでもあるが。
だが、本来王族はそうであってはいけない。
もちろん然るべき時には動くべきだが、それ以外の時は同等の王族同士ならまだしも、貴族のところに向かうというのはよくない。
それで俺としては、叔父上か、向かうようにといわれた宰相の辺りが試験をしようとしていると考えた。
だが、先ほどの叔父上の舌打ちからすると、明らかに何か悔しそうというか、負けたような不機嫌な顔になった。
そうなると、恐らく宰相とグルで、お互い気付くかどうかを賭けていたのではなかろうか。
そう思って呟いたのだが、どうやら当たりのようである。
「聡いやつめ」
「はあ……では、『銀狼の間』を使いますね」
「ああ、かまわん。好きに使え」
「ありがとうございます」
叔父上の前から退出し、星樹の間に戻ると、エリーナを呼ぶようにと王宮付きの侍女に命じ、さらに傍にいた別の侍従に宰相への連絡をさせる。
しばらくすると星樹の間にエリーナが入ってきた。
「おはようございますわ、レオン。どうしましたの?」
「おはよう、エリーナ。実は叔父上――陛下から、宰相と会うようにといわれている。二人でだ」
「まあ」
少し驚いたような反応をしつつ、エリーナはすぐに侍女であるファティマに、銀狼の間でのお茶などの手配と準備を命じる。
「流石だな」
「当然ですわ。どうせ、父上の試験でしょうけど」
ふふっ、と笑いながらも、しっかり状況と自分のすることを理解している彼女は頭が良い。
しばらくすると、準備が終わったことをファティマが伝えに来たので、俺とエリーナ、そして少数の近衛兵を付けて宮殿に移動する。
到着すると、既に宰相は部屋に入っていたようだ。
猛禽類を思わせるような鋭い目つきに鷲鼻。
顎も口にも髭があり、それを恐らく香油で固めている。
いかにも隙が無い人物、というのが第一印象である。
俺たち二人の姿を見るとソファーから立ち上がり、腰を折って礼の姿勢を取る。
「お待たせしましたか、宰相?」
「お忙しいでしょうに、ありがとうございますわ」
「いやなに、私も先程来たばかりですので。お茶を楽しませて頂いておりました」
そのまま、宰相の対面に座り、俺の横にエリーナが座る。
「宰相のクラウス・フォン・ローヴァインでございます。陛下より侯爵位を拝命しております」
「レオンハルト・オニキス・フォン・ライプニッツです。宰相のことは叔父上からよく伺っていますよ」
「エリーナリウス・サフィラ・フォン・イシュタリアですわ。よしなに」
お互い自己紹介を行う。
といっても、向こうは俺のことを知っているだろうし、俺自身もこの人のことは知っている。
クラウス・フォン・ローヴァイン侯爵。
イシュタリア王国宰相であり、元、国王の教育係。
法衣貴族で、代々内務関連の役職に就くことが多い家系の出である。
それはそれは厳しかったらしく、ハリントン家の執事が王の生活における教育係とすれば、彼は王の政治に関する教育係だった。
それが叔父上――陛下にはきつかったらしく、ちょくちょく供を連れて市井にお忍びで出てきたり、隠れたり……
そのお供というのが、うちの父上なのだが。
「殿下の叔父上、でございますか」
「ええ。それはそれは
「……それはもう。中々大変でしたぞ」
しばらく世間話のようなものをエリーナを交えて話す。
しかし、時間は有限であるので、そろそろ本題に入らなければいけないな。
「さて、宰相。一体どのようなお話か、聞かせて欲しいのですが」
「ええ、それはもちろん。今回お伝えすることは二つ。一つは殿下方が受けられました勲章についてでごさいます。もう一つは、洗礼を授かった王族の務めについて、でございます」
勲章については、確かに詳しい説明を受けていなかった。
どのような立場の者が持つ勲章かは知っていたが、二人とも普通とは異なる勲章なので、聞いておきたいと思っていたが、良いタイミングだ。
そして、王族の務めについて。
これはいまいち聞いたことがない。
「さて、お二人ともお気づきかも知れませんが、お二人の勲章には通常と異なる共通点がございます。それは何かご存じでしょうか?」
本音、気になっている部分はあるのだ。
だが、宰相の質問に対して、考える素振りを見せておく。
「ふむ……なんでしょう。エリーナはどう思う?」
「そうですわね……恐らく、剣ではありませんか?」
「はい、その通りでございます。お二人の勲章は『剣付』と呼ばれるものでして、それは『治安に関わる者』を意味します」
治安に関わる。
つまり、警察権であったり、軍事権ということと関連するのだろう。
「古来より『剣』は、力の象徴です。騎士団、国防軍、警備隊、冒険者ギルド。これらには必ず剣の紋章が含まれている。それは彼らが、方向は違えど治安に関わるからでございます」
「確かに。騎士団は王城や領主の警護、国防軍は国の守護、警備隊は街の警護、冒険者ギルドは魔物に対する守護……という意味か」
「はい、殿下の仰せのとおりです」
今上げたどの組織も、必ず剣が用いられる。
あるいは、貴族家でも軍功で身を立てた家や辺境伯家などは剣の紋章を入れる。
これは宮殿の許可が無ければ使う事は出来ないのだ。
その「剣」が含まれる勲章。
それが意味するのは「治安に関わる者」ということ。
つまりは――
「つまり、二人とも何かそういった治安に関わる権限を持つのか?」
「まさしく。まず、『百合剣』をお持ちの王女殿下の場合、全都市に対する警察権をお持ちになります」
警察権。
つまりは警備隊と同じく、治安維持のため例えば犯罪者の検挙、逮捕、捜査などの権限を持つことになる。
通常、誰かが犯罪を犯した場合、現行犯が近くにいた冒険者に取り押さえられたとする。
だが、冒険者は取り押さえられたとしても、逮捕をすることは出来ない。
必ず警備隊がやってきて、その人物を逮捕し、取り調べを行う事になる。
だが、エリーナの場合、自分で逮捕、取り調べ全てが出来る。
もちろん、誰にも彼にもふるっていい権力ではない。
基本的に警察消極の原則といわれるように、振りかざす権力ではないのだ。
そんな事を思い出していたら、ふと気になることがあった。
「そういえば、王族が警察権を持った場合、同階位の王族に対しても警察権を発動させることができた……かな?」
「ええ、公子殿下。その通りです」
まあ、エリーナが下手に使う事は無いな。
そんな事を考えていると、今度は宰相の顔がこちらに向く。
「さて、公子殿下の場合、『双剣付』の勲章をお持ちです」
「ああ」
「これは『警察権と軍事権』を意味しております。つまり殿下は、殿下ご自身で軍の召集をすることや、ある場合、最高指揮権を執ることが出来る……そのようなお立場なのです」
なるほど。
警察権と共に、軍事権か。
軍事権。
この国でいう軍事権としては、国防軍、諸侯軍の召集、作戦決定権、軍の人事権などを総括している。
そして、この軍事権を持つということは、それだけ国に対する力を持つことの意味にもなる。
もちろん、俺は現状無役――何か宮殿での仕事を持っていない。
そのため、軍務卿を務める父であれば、仮に俺が召集しても中止を命ずることが出来る。
それと、もう一つ。
「そして……有事に動かすための騎士団を設立することが可能となります」
「ああ、そうだ。そうだった」
騎士団。
これは諸侯軍と異なり、騎兵のみの部隊である。
そして、団員すべてが貴族位を持ち、何よりも主人への忠誠を求められる部隊なのである。
これを設立できるのは、国王からの許可を得た王族に限られる。
ちなみに諸侯軍とは、各領地の貴族が集める歩兵を主とした軍で、大体志願あるいは徴兵された平民で構成されている。
冒険者なども傭兵として参加するものであり、有事にのみ集められるもの。
その上に、領主直下の騎士たちが士官として配属されるのだ。
領主直下には、数人から十数人程度の騎士と、数十人の歩兵がいる。
騎士たちは正確には「準騎士」と呼ばれ、平民階級だが、貴族の護衛や代理として貴族と接することの出来る階級なのである。
「しかし、騎士団と言っても、中々人材がいないのでは?」
「別に貴族
「なるほど」
別に元々貴族階級である必要は無く、取り立てて貴族位に付けることが出来るのだ。
もちろん彼らの爵位は基本的に名誉位なので一代限りだが、それでも功績を挙げれば正式に貴族に取り立てることも出来る。
「しかし……騎士団はいずれ考えるとして、警察権を持っていても、王城から出ない限りはいまいち用途がないな」
「そうでもありませんわレオン」
「そうなのか?」
「ええ、一つ思い出しましたが……宰相。当然私たちには『視察』の権限はありますわね?」
「……お気づきになりましたか。その通りでございます」
そうだ。
警察権は治安維持に関する権力。
そうである以上、当然都市に対する「視察」が可能だ。
もちろん、基本的にこれは警備隊の管轄なのだが、この権限を持つものは自分の警察権の及ぶ範囲で「視察」を行う事が出来る。
そうすることで、例えば都市内で隠蔽されている犯罪や不正も、その都市に対する警察権を持つ存在がいれば捜査、検挙などができる。
この方策により、例えば領主は自分の領内の治安を自分で見、仮に部下が隠蔽したとしてもそれを暴くことができるのだ。
そして……これがあれば俺もエリーナも、公的な理由を付けて外出できるようになる。
当然、視察である以上一定数の護衛が必要だが、それでも動けることに違いはない。
それに気付かれた宰相が渋い顔をするが、この権限は二人とも持っているらしい。
そうなれば、さっさと騎士団を設立した方が良いんだろうな。
「さて、次は王族の務めについてでございます。これはお聞きになったことは?」
「いや、ないです」
「特には聞いておりませんわ」
「では、ご説明いたします。洗礼を受けた王族には、少なくとも一つ、公益となる事業に参加していただくことでございます。これは所謂『持つ者の義務』でございますので」
つまりは「ノブレス・オブリージュ」ね。
公益となるということは、慈善事業みたいなものに参加すれば良いのだろうか?
「宰相、それはどのような事業を含みますか?」
「そうですな、例えば孤児院の経営に関わったり、寄付を定期的にしたり、あるいは遺跡調査のためのパトロン、魔導具開発の援助……様々ございます。例えば、ライプニッツ公爵殿下は領内での孤児院経営や寡婦への支援事業を営まれております。公妃殿下は、魔導具開発の援助で魔導具ギルドの支援をされて……そういえばレオンハルト殿下は確か……」
「ええ、魔導具ギルド所属のマイスターですね」
宰相も知っているとは。
まあ、つまりはそういった活動をすれば良いんだな。
「……殿下は異例ですが、このように様々な活動を行っていただければと」
「分かりましたわ、宰相」
エリーナはどんな活動をするんだろうな。
しかし、「この務め」をするという名目で、外に出やすくなる。
使命をするにも好都合だ。
……もしかして、神々はここまで分かっていて、洗礼を与えてくれたのだろうか?
そのまましばらく色々な話を聞き、ここまで色々情報を与えてくれた宰相に向かって、俺は礼を言う。
「宰相。色々な情報をありがとうございます。早速陛下ともお話しせねば」
「……いえ、これも務めですからな」
そう言って、俺が立ち上がると同時に腰を上げ、宰相が頭を垂れた。
だが、すれ違う時にふと、宰相が呟いた。
「それはそうと、恐れながら殿下、立場を考えますと、あまり丁寧に喋るのは如何かと存じます」
なるほど。
王族である以上、自分たちの上位に立つのは国王陛下だけだ。
だから、あまり丁寧な喋り方をするよりも、威厳ある態度を取るべきということか。
「そうか……それは
「はっ」
再度頭を垂れる宰相を見ながら、俺とエリーナは銀狼の間から出ていく。
そのまま、護衛を引き連れて一旦「星樹の間」に戻ることにしたのだった。
* * *
さて、俺もエリーナも自分たちが行わなければならないことを覚えている。
そのためには外出をする必要があるわけだが、それにしても視察の目的を考える必要がある。
「視察をするとすれば、どのような目的が良いのでしょう?」
「うーん、これといって今すぐには思いつかんが……王都であれば治安維持は警備隊がいるしな」
「そうですわね……」
これであれば宰相に視察について詳しく聞いてみるべきだったか。
だが、既に俺たちは宮殿を離れており、父たちも宮殿にいるので聞きようがない。
「あとは、母上に確認してみるのが良いかとは思うんだが……」
「ヒルデ伯母様なら、何かご存じとは思いますね」
そのようなわけで、俺たちは母ヒルデに相談しに行くことが決まった。
母ヒルデは、現在は宮殿に出入りしてはいない。
既に魔導師団を離れ、公妃となったため、普段は王宮で王妃たちのお相手として共にいる。
だが、いくら家族といえどもいきなり直接母に会いに行くわけにはいかない。
「ファティマ、恐らく竜妃の間に母上がいるはずだから、面会したいと伝えてくれ」
「かしこまりました」
ファティマはエリーナ付きの侍女だが、元々婚約前から見知っており、何よりエリーナと婚約した関係で俺も主人という扱いになる。
本来は俺も侍従や侍女を持つべきなのだが……
現在公宮にいるミリィは、今のところ正式に王宮へ上がるための階級にいないため、公宮での姉上たちの世話をしているようだ。
しばらくするとファティマが戻って来て、面会許可の返事を持ってきたので、俺とエリーナは王妃殿下や母の待つ竜妃の間に向かった。
扉をくぐると、すぐに母が出迎えてくれた。
「あら、エリーナちゃんにレオン、よく来てくれたわね~♪」
ぎゅーっ!
母が俺とエリーナをまとめて抱きしめる。
この癖は相変わらずなのだが、かなり締められるので少し息苦しくなるのだ。
ちなみに、王妃であるマリア様やフィオラ様は奥で笑っているのが見える。
「ちょ、ちょっと伯母様!? 息が……!」
「あらあら、ごめんなさいね♪」
ちっとも悪いと思っていないような返事である。
だが、これについては何度言っても変わらないので、本題に入ることにする。
「突然の訪問失礼いたします、王妃殿下。そして母上……本日は少しお尋ねしたいことがありましたので、二人で伺いました」
「あらレオン。そんなあっさり素っ気ない話をするなんて……お母さん寂しいわ~」
「そうよ。少しはゆっくりして行きなさい、聞きたいこともあるんだから」
「ええ、そうですわね。それにエリーナと婚約した以上、貴方は私たちの息子も同然ですわ」
王妃殿下方からの援護射撃もあり、母はチラチラこちらを見て、目元を覆いながら泣き真似をしている。
拗ねたような声と悲しそうな表情を見せているが、これはわざと。
これで「では少し……」と言おうものなら時間がロスする。
「母上も王宮での務めをお持ちのはず。王妃殿下方もこの場におられます。また別の機会が望ましいでしょう」
「ちぇ~」
マリア様、フィオラ様共に残念そうであるが、申し訳ない。ここは心を鬼にせねば。
そしてあえて言っておく。
こう見えて母は先代王弟の娘だ。生粋の王族の一員なのだ。
「……仕方ないわね。何かしらん?」
「実は先程、ローヴァイン宰相から――」
先程宰相から受けた説明について話す。
当然、母は勲章の意味など分かっているので、勲章の説明は省き、正直に外へ出るために「視察」する名目にはどのようなものがあるか、という点に絞って尋ねることにした。
「うーん、それについては色々あるわよ? それは後で教えてあげるけれど、でもその前に……少し聞きたいことがあるわ?」
「そうね」「そうですわね」
一瞬、母の気配が変わる。
同時に、マリア様とフィオラ様の気配も変わる。
普段のお茶目で悪戯好きな女性ではなく、明らかに公妃としての雰囲気だ。
「……なんでしょう、公妃殿下」
「あら……それでは公子殿下、ならびに王女殿下にお聞きします。お二人は『使徒』で間違いありませんね?」
ああ、これを聞くつもりだったのか。
実はこの数日、色々忙しく母たちと話す機会が無かった。
多分、俺が面会を求めなくとも呼ばれていたかも知れないな。
しかし、まさかそこまで知られていたとは。
おかしいな。洗礼を授けられていることは知られていると思っていたんだが、【使徒】の称号については特にセロウス様も言っていなかったぞ?
「……そうですね。間違いありません」
もちろんここで黙っていてもよかった。
だが、母の言い方からするに、既に確信があり、それを再確認するというニュアンスだ。
そうなれば正直に認める方がいいだろう。
そう思い、俺は素直に頷いた。
「やはり、そうなんですね? であれば、恐らく使命があるはず。それは、現在の立場では難しいのかしら?」
「そうですね……少なくとも、王城でじっとしているわけにはいかないというのが事実です。それで、王族の務めを果たそうかと」
「そう……なら、この手紙はちょうど良いのかもしれないわ」
そういって、母が一つの封筒をこちらに渡してくる。
「読んでも?」
「ええ、これはレオンへの手紙だから」
渡された手紙の封を開け、中を見てみる。
するとそれは、魔導具ギルドのノエリアさんからの手紙だった。
要約すると、無事王族に認められたことと婚約へのお祝いにはじまり、最終的には遺跡の調査が春頃にあるということで、参加は出来るのかどうか、出来たら来て欲しいという手紙だった。
確かに、これはちょうど良い。
俺は魔導具ギルドに所属しているし、クラスIIマイスターなので参加できるのだ。
これなら視察でなくても動ける。
「良いタイミングですね。私は必ず出なければいけませんし」
「そうね。そして、エリーナちゃんを連れて行くための理由は『古代遺産の調査を視察する』ため、かしら?」
「そうですね。それが無難でしょう」
一番それがいいだろう。
王族として、何かそのような活動を支援するのは務めなのだ。
「レオン?」
「いや、外に出て動くための理由が一つ出来た。エリーナにも一緒に来て欲しいんだが、どうだ?」
「あら、もちろんご一緒しますわ」
「良かった」
これで断られていたら、かなりショックである。
そんなことを考えていると、母上だけでなく叔母上たちまで何か言いたげにニヤニヤしている。
「あらあら、デートね〜」
「デートにしてはつまらないでしょ。レオン、天辺越えなければ少しくらい遅く帰ってきていいわよ!」
「あら、そうですわね。あの人には私たちからしっかり伝えておきますから……」
おいおい。
公認のカップルを揶揄う
「……流石に五歳に早いも遅いもないですよ」
「わ、私はレオンと一緒なら……」
キャアアアァッ!!
という、母たちの声のせいで、外の近衛騎士たちが慌てて入ってきたのは秘密である。
パソヲタはパソヲタ的なスキルで異世界ライフします! 栢瀬千秋 @kaseki_yatai
★で称える
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