第14話:朝食といとこたち

「レオンですの!?」

「エリーナ!?」


 お互い声をあげてしまったのは許してほしい。

 それだけ驚いたのだ。

 何せ、昨日昼過ぎに出会い、一緒に戦い、そしてまたいずれ会おうという約束をしたのだ。


 おそらくお互いに、「まさかこんな所で……」と思っている。

 いや、流石に王族とは思いもしなかった。というか、一瞬思ったが何を馬鹿なと思っていた。


 ……ガインめ、知っていたな。

 道理で何か歯に挟まったような物言いをしていたわけだ。


「はは……まさかエリーナが第二王女だったとは……」

「レオンは……ライプニッツ家の第二公子だったんですのね……」


 なんとも情けない状態である。

 そして、それ以上にまずいのが……


「……うーん、やっぱり血筋か……血筋なのか……しかもトラブル体質……」

「ウィル叔父様……?」

「お父様?」


 なんか国王である叔父上が頭を抱えているというのは、何ともシュールである。

 思わず二人して顔を覗き込んでしまった。


「む……何でもない。しかし……知り合い、だったのか?」

「え、ええ。エリーナとは……いえ、王女殿下とは昨日の件で……」

「昨日の……はぁ……エリーナ、お前また……」

「ちゃんと許可は取りましたわよ?」


 つまりなんだ。

 実は昨日背中合わせで一緒に戦った少女は実は王女で、お忍びで西通りにいたのか。

 それであの状況に直面したから、王族として立派に行動したと。


 なんて危ないんだ!

 しかし、許可を取っているというのは流石である。流石に無断で出てきていたら問題だからな。


「お、お前……許可は東側……しかも、あくまで買い物の……」

「ええ、確かに東通りで買い物をしましたわ。でも、色々歩いているうちに気付いたら・・・・・西通りにいましたのよ? 後はレオンからお聞きの通りですわ」


 口も達者のようだ。

 フード無しで見る彼女は、穏やかで、優しげであるが、どうも頭の回転は速く、かなり行動的であるという事のようだ。

 すると、横で


「はあ……本当に誰に似たんだか……まあ良い、すまんなレオン。この子が第二王女の——」

「改めて、エリーナリウス・サフィラ・フォン・イシュタリアですわ。お会いできて嬉しいですの、レオンハルト様」


 今回は王女らしい美しい所作でお辞儀してくれる。


「こちらこそ改めて、ライプニッツ公爵家第二公子、レオンハルト・フォン・ライプニッツです。お目にかかれて光栄です、エリーナリウス王女殿下」


 こちらも負けじと公家にふさわしい完璧な所作で礼を取る。


「あら、昨日と同じく『エリーナ』と呼んで欲しいですの。家族はそう呼びますのよ? それに……出来れば昨日のように話したいですわ」

「ではエリーナ、僕のことも『レオン』で。家族や親しい者はそう呼びますから。それに、僕も昨日と同じように話したいな」


 お互いに今度こそ本当の自己紹介をする。

 お互い眼を合わせると、エリーナが頬を染めてはにかむ。

 ——つい、抱きしめたくなった。

 なんというか、この表情を見ていると、どこか胸の奥が熱くなるような、そしてどこか寂しく感じるような、なんとも言えない気持ちを覚えたのだった。


 * * *


 それからは少し昨日の話をした。


「あの母娘はどうなりましたの?」

「詳しくは分からないけど、問題は無かったみたい。うちが身元保証になっているから、何かあったらすぐ連絡が来るはずだよ」

「そうでしたの……ありがとうございますわ、レオン」


 そんな風にしばらくお喋りをしていたら、横から咳払いと叔父上の声がかかる。


「ンンッ……さて、お互い自己紹介は終わったか? そろそろ皆起きてくるぞ、食堂に向かう支度をするんだ」

「はい、お父様」「勿論です、叔父様」

「こう言う時は素直なんだがな……」


 しばらくすると、何人かの子供が部屋に入ってきた。


「おはようございます父上! お? 見ない顔だな。新しい弟か?」

「おはようございます、お父様……何を言っているのヘルベルト。明らかにライプニッツ家の顔じゃない。でしょう?」

「おふぁようございます……おとうさま」


 恐らく最初に入ってきたのが第一王子で、次が第一王女。そして最後は、第二王子かな。

 兄に聞いた限りでは、それぞれうちの兄や姉と同い年で、第二王子とエリーナが俺と同い年だったはず。

 計ったかのように一緒だな。こういうのはもう少し年齢がばらついたり、王子以下は全部王女とか、王女ばかりで一番下が王子の方が定番だと思うんだが。


 テンプレなんて知らんがな、という作者が書いたシナリオなのだろうか。


 その後に、二人の女性が入ってきた。

 年齢は母と同じくらい。まず間違いなく王妃陛下である。

 ただ、二人ということは……


「おはようございます、あなた。何か、新しい子供がいるって聞こえたけれどどういうことかしら?」

「あらあらマリア。そんな事冗談でも言うものではありませんわよ……でも、うちの子と言っても良いかもしれませんけれど」


 マリアと呼ばれた女性は、ダークブロンドの髪に青緑の瞳を持っている。

 どこか、見覚えのある雰囲気だ。

 もう一人の女性は、プラチナブロンドの髪に、赤よりの紫色をした瞳だ。

 優しげで、少しおっとりとした感じを受けるその女性は、どこかエリーナを彷彿とさせる。


「おはようマリア、そしてフィオラ。心配するな、この子は……」

「分かっているわ、冗談よ。……ねぇ、貴方ジークの息子でしょ?」


 そういって、マリア王妃は俺に近づいてきた。

 しかし、国王である叔父上に対する雰囲気や、父をそう呼ぶということは恐らく……


「はい、ライプニッツ公爵家第二公子、レオンハルト・フォン・ライプニッツです。お目にかかれて光栄です、王妃陛下」

「あら、ご丁寧に嬉しいわ、でも立ってくれる? …………うん、こういうところは明らかにマシューの教育ね。ジークじゃ無理だし、ヒルデならもう少し軽くなりそうだもの」

「え、ええっと……?」


 王妃陛下に挨拶する際に、片膝をついて挨拶する。

 すぐに立てと言われてしまったが。


「きちんと貴女も挨拶しませんと、マリア」

「そうね。——改めて、第一王妃、マリア・アメティシア・フォン・イシュタリアよ。現ライプニッツ公爵の妹よ。つまりは貴方の……お、お……」

「叔母に当たりますのよ」

「フィオラ!? そんなあっさり……」


 なんだろう。

 普通正妻と側室の戦いとか、そういうのありそうだけど……めっちゃ仲よさそう。

 そして、マリア王妃。そんなに叔母と言われたくなかったのか、自分で言いたくなかったのか……

 そしてそれをあっさりバラすフィオラ様。


 というか、マリア様は見覚えがって、そりゃそうだ。俺の目の色と一緒だもの。

 成る程、本当にうちの家は王家との姻戚関係がガチガチだな。


「さて、わたくしはフィオラ・ルビーナ・フォン・イシュタリアと申します。イシュタリア第二王妃ですわ。そして、エリーナの母でもあります。既に娘の事はご存じのようですわね。よろしくお願いしますわ」

「レオンハルト・フォン・ライプニッツです。よろしくお願いいたします、フィオラ殿下」


 一応敬称について言うと、第一王妃は陛下で、第二王妃以下は殿下と呼ぶ。

 公式な場であればそう呼ぶ必要があるし、一応今回が初対面だからな。


「私もフィオラも、丁寧な挨拶は嬉しいけれど、レオンにはそんな堅苦しくは呼ばれたくないわ」

「そうですわね……わたくしは『叔母様』と呼ばれて問題ありませんわよ?」

「いえ、もし差し支えなければ『マリア様』『フィオラ様』とお呼びしたく……」


 下手に女性に「叔母様」なんて言えない。

 明らかにマリア様は嫌がっているし、いくら本人の了承があってもフィオラ様だけをそう呼ぶと、それはそれで問題だと思う。


「あら、ありがとうレオン。良かったわ」

「ふふっ♪ 構いませんわよ」


 お墨付きゲットだぜ。

 そんな事を話していたら、後ろから声がかかった。


「本当は子供たちも自己紹介すべきだが、今はとにかく朝食だ。早速行くぞ」

「はい、ウィル叔父様」「勿論ですわ」

「本当ね。行くわよ」「ええ、そうですわね」

「「「はーい」」」


 こんな感じで、王家と共に食堂へ移動する。


 * * *


 「大地の間」。

 これは王族のみが立ち入ることの出来る、プライベートな食堂だ。

 王家の人々は、ここで朝食を摂る。


「さて、今日はなんだろうか……」


 まず、上座に座る叔父上が、食事の上に被せられている銀の蓋を取る。

 メインとなるのは、卵料理とベーコン、ソーセージなどの保存の利く肉類である。

 合わせて、白パンやスコーンを食べるのだ。


 これに、野菜のスープとサラダが付いてくる。

 まあ、王族といえど朝に食べる量というのはそれほど多くはない。

 ……いや、この世界では十分に食べることが出来ているという話なのだろうが。


「さて、揃ったかな。では、七柱神にこの糧への感謝を捧げ、この日に祝福があらんことを願う」


 その叔父上の一言から、朝食が始まる。

 うーん、今日は普段より遅めだが、だからこそ特に美味しく感じる。

 サラダも美味しい。だが、そろそろ冬になれば葉物野菜は取れないからな……

 だけど最初は慣れなかった。ドレッシングがないんだもの。


 まだこの世界ではビニールハウスなんてあるわけないので、確実に年中同じような食事を取れるわけではない。

 多分この食事も、しばらくすればキャベツの酢漬けなど変わっていくのだろう。

 それもそれで楽しいので好きではあるのだが。


「レオンは、好き嫌いがないようだな」

「ええ、ウィル叔父様。これと言って苦手はないですね」

「そうか。それなら良かった」

「残すとマシューから何を言われるか……」

「ふふっ、確かにあの家ならそうね」


 現状苦手なものはない。

 ピメント(ピーマンらしきもの)も問題なく食べられた。

 大体子供の頃の舌だと、苦手に感じるものだがそれがなくて良かった。


 そして、マリア様はマシューの怖さを知っているからか、うんうんと頷いて同意してくれていた。

 確かにこの世界では、多くの人が農業を営むものの、大規模農場があるわけではなく。

 だからこそ、野菜などが大切なのだ。それを残そうものなら……思い出したくないな。



 * * *


 朝食が終わり、今度はお茶の時間となる。

 この時間までが朝食であり、この時間は家族での会話の大切な時間だ。

 メイドの一人が紅茶を準備してくれている。


 しかし、本当に俺がいていいのだろうか?

 そんな俺の思いは口にできず、叔父上がエリーナ以外の子供たちの紹介を始める。


「さて、紹介がまだだったな。まず、第一王子のヘルベルト」

「ヘルベルト・エスメラルド・フォン・イシュタリアだ、よろしく! ハリーとは同い年だ!」


 アッシュブロンドの髪を短めにしており、ブルーグレーの瞳が爛々と輝く、好奇心の強そうな彼が第一王子。

 いかにも「アニキ!」って感じである。下手するとガキ大将とも言うが。


「そして第一王女のルナーリアに――」

「ルナーリア・マルゲリッテ・フォン・イシュタリアよ。セルティとはダンスレッスンで一緒になることが多いわね。話はよく聞いてるわ、レオン」


 ストロベリーブロンドというのだろうか。

 光の加減で少しピンク色を含むブロンドの髪をポニーテールにしている。

 瞳は……緑色。


「――第二王子のアレクサンドだ」

「あ、アレクサンド・オリヴァ・フォン・イシュタリアです……初めまして」


 この子はダークブロンドにグレーの瞳だ。

 どの子供も、両親である両陛下の特徴を受け継いでいる。


「ライプニッツ公爵家第二公子、レオンハルト・フォン・ライプニッツです。王子殿下、王女殿下にお会いできて光栄です」


 初対面だからね。

 きちんと礼に則った挨拶をする。


「ははは! そんな堅苦しい挨拶は必要ないぜ、なあ? レオン、お前は俺の従弟なんだからな! ベルトって呼んでくれ!」

「そうよ。私はルナだからね? セルティからも話を聞いてたけれど、本当に年齢以上よね……エリーナもそんな感じだけれど」

「う、うん……ね、ねえ、レオン……くん? レオンさん? どっちで呼んだらいいかな……」


 それぞれ特徴的な三人だが、親族として、幼馴染として仲良くできそうである。


「ふふっ、僕のことはレオンと呼んでほしいかなアレク。これからよろしくお願いします、ベルト兄上、ルナ姉上」

「あら、わたくしはどうなんですの……?」

「勿論、エリーナも。これからは一緒にいてくれるかい?」

「当然ですの!」


 こうやって、一緒にお茶を楽しみながら、宮殿での朝は過ぎていった。




「……ところで、甥っ子が速攻でうちの娘とのフラグを立てているのだが」

「あら、問題あるかしら?」

「何か、ご不満なんですの?」

「…………」



 * * *


 さて、朝食とお茶を楽しんだ後。

 叔父上は国王としての務めがあるので、「執政宮」に向かった。

 背中が非常に嫌そうであったが……


 国王はそこで様々な案件の処理を行う。

 特に、地方からの陳情や大規模な工事の承認依頼など、大きな案件から処理していくのだ。


 勿論、所謂重臣という者はおり、彼らでも処理はできるのだが、最終的な承認は国王が行う。

 当然国王のワンマンでは出来ないし、確実なチェックのためにもそのような仕組みなのである。


 それは大体3つの段階を経て、許可が下りるのだ。


 例えば大きな街道を、2都市間で結ぶとする。

 だが、当然ながら利権や安全の確保、軍事面での問題をはらむので、領主同士では決められない。


 そういう案件は、必ず内務閥でも工務卿管轄の部門に渡される。

 その中でも街道を取り扱うところでプランが出され、それを工務卿が承認する。

 ただ、街道の安全だけではなく、陸路というのは軍事行動とも関係するため、軍務卿の確認が入る。


 そしてその承認を経て、統括を行う宰相と国王が承認するのだ。


 内務閥は工事関係の利権、軍閥にとっては警備隊などの役職、そしてそれぞれの領主にとっては、その街道での商売や宿屋による収入という利益が生じるのだ。


 なんとも生臭いと思うが、こうでもしないと貴族社会も回らない。

 ニート貴族が溢れると、今度は無駄に馬鹿をするのが出て社会が混乱するからである。


 有り難いことに、ライプニッツ公爵家は軍閥のトップで、国防軍の総指揮を執るのはうちの父である。

 そして、当然実力があってこそだが、一族の男子は大体騎士になり、軍の士官になり、そして軍での更なる役職を得て独立貴族になることが多い。


 と、ここまで説明した理由は……


「それでどうするんだレオン! 俺と訓練するだろ!?」

「なに言っているのよベルト。当然お姉ちゃんと一緒にダンスでしょ?」

「レオンはわたくしと一緒に視察に行くんですの!」

「えと……えと…………うぅ、おかあさま〜……」


 単なる現実逃避である。

 そして、一人ベソかいているのもいるが気にしない。


 これからの予定について、いとこたちに揉みくちゃにされているのだ。

 ……これに兄や姉がいたらもっとカオスになるな。

 そんなくだらないことも考えたくなる。


 と言うよりも、この子たちは自分の勉強とかあるだろうに。


「あのですね……ベルト兄上は勉強とかレッスンはないんですか? ルナ姉上もそうですが。普段ハリー兄上は勉強、セルティ姉上はこの時間ならダンスレッスンでしたよ? エリーナは……まあ良いか。アレク、お前は早く顔を拭いてくるんだ。ちょっと見られない顔になっているから」

「うっ……いや、折角従弟がいるんだ。一緒に遊ばなきゃ失礼だろ?」

「そうよ。大体昨日はエリーナと外にいたんでしょ? なら今日は私たちとに決まってるじゃない?」

「ぐす……いっしょにあそびたい……」


 はぁ。

 これがこの年齢の普通なんだろうか。

 なんで俺が当然一緒に遊ぶみたいになっているのだろうか?


「いえいえ失礼なんて事は無いですよ、ベルト兄上。将来の王太子様ですから、作法に始まり作法に終わる、そういう必要な授業を受けましょう?」

「い、いやだ! あの授業は本当にキツいから! パウルスの授業はキツいから! ううっ、頭が……」


 突然頭を抱えて崩れ落ちるヘルベルト。


「パウルス?」

「ハリントン家出身の執事ですわよ」

「ああ、マシューの従兄さんか……」


 うちの家に勤めるマシュー。彼の一族はライプニッツ公爵家に仕える一家だが、ちょうどその本家に当たるのがハリントン家。

 当然執事としては超一級だし、教育も当然超一級なのだろう。

 だが、確かに子供にはきついかも……しかし、ベルト兄上よ。崩れ落ちるほど嫌か。


「お兄様は苦手なんです、作法の授業が」

「エリーナは?」

「既に合格をもらいましたわ」


 なんというか、エリーナって俺と似ているんだよな。

 大人びていたり、3番目の子供だったり、戦闘力が高かったり。

 そんな事を考えていたら、エリーナと目が合う。


「——ふふっ、何考えていたんですの♪」

「いや、似たもの同士だな、と」


 ちょっと照れくさくなった俺は、目を逸らしながら頬を掻く。

 お互い、なんとも言えない空気になってしまった。


「ちょっと、結局どうするの?」

「ルナ姉上……うーん、そうですね……」


 なんとなく別のことを考えていた頭を元に戻す。

 元々、今日の予定を考えていたんだった。


 しかし、どうしたものか。

 本音俺としては魔導具を作る材料を買いに行くつもりだったのだが、なんだかんだで王宮に入ってしまったので、これでは行けないだろう。

 かといって、この中で誰か一人を選んで行動するというのも難しい。

 身も蓋もない言い方をすれば、エリーナと行動したいが、そんな事をしては後から何を言われるか。

 こういうことを簡単に解決するには……


「そうだ。今日は折角なので、皆で同じ事をしましょう」

「「「「同じ事?」」」」

「ええ、同じ事です。例えばですね——」


 つまりはこういうことである。

 それぞれしたいことや出来ることが異なるなら、お互いを知るためにも一緒に行動するのが良いのでは、ということだ。


 特にヘルベルトは普段一緒に勉強をする相手がいない。

 基本的に学園に入るまではマンツーマンなのだ。

 折角なので体験してみようと言うことである。


 それに、ダンスならば皆踊れなければならない。

 特に王族は色々なところで踊る必要があるし、社交界シーズンの多くは舞踏会である。

 そこで婚約者を見つけるにも、ダンスが出来なくては話にならないのだ。


 流石に外へ視察は行けないだろうが、これは仕方ないので戦闘訓練にすることにした。

 既に、人を斬ることにあまりためらいのないのが二人ほどいるのは気にしない。


「さ、こんなところで油を売っていないでさっさと動きますよ」

「おう!」「そうね!」「はいですの!」「うん!」


 手を叩いて行動を促す。


「さて、まずはベルト兄上の授業からですね……」



 ふと思ったが、何故俺が先導しているのだろう。

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