第10話「食堂にて」

 という訳で、今は食堂にいる。

 私の目の前には志賀さん、その隣に大嶽さんが座って口をもぐもぐ動かしている。


「話には聞いていたのだけれども、結構、たくさん食べるのね」


 と、大嶽さん。隣にいる志賀さんは苦笑いしながら私のことを見ている。

 大嶽さんは普通(?)の人間。

 志賀さんは念力で水をコントロールする異能者。あんまり食べなくても大丈夫みたいだ。

 というか、ものすごく小食。小さなお皿に盛られた煮物を小さなスプーンでちびちび食べている。

 お盆には小皿が三つ。これで事足りるようだ。

 まぁ、志賀さんはモデルさんをやっているからね。あんまり食べられないんだろう。


「力を使うためには、その……一日にだいたい12,000キロカロリー摂取しなくてはいけないので」


 私のようにたくさん食べる女性ヒーローはここにはいない。ハンバーグカレーを6皿平らげる女性ヒーローは、この事務所で私だけ。

 ふたりとも箸が止まっている。


「よく食べますって、さっきのレクリエーションで言っていたけど、これはちょっと食べすぎじゃない?」

「ごもっともだと思います、大嶽さん。でも、食べないと私は力が出ません」

「そ、そう。それは大変ね」


 それで結構ムチムチなのねと、大嶽さんがつぶやいた。

 ……私の体は、ムチムチなのだろうか?

 気になる。

 新作のスーツの胸元はかなりきつい。ウェスト周りが特に。こんだけ食べているからか、おなかもちょっと出てきたせいかな? リハビリが終わった時からたいぶ体型が変わっているのだろうか?

 ダイエットしたいんだけどね。異能の特性上、難しいというか。たくさん食べていないと戦えない。それがもどかしい。

 いや、たくさん戦ったらいいってことかな?

 一発めちゃくちゃカロリーを消費するから……うん、バリバリ戦おう。


「大食い番組とか、出られそうだよね?」

「あははは……そうかな?」

「そうなったら、応援するからね」

「ありがとう、志賀さん」


 たくさん食べて、おなかいっぱいだ。

 これで衝撃波を打つためのエネルギーは十分に補給した。お昼からやる合同訓練で打ちまくってカロリーを消費しまくろう。

 しかし、朝の9時からお昼までのお化粧の練習は楽しかったな。

 楽しかったけど、いろんな意味で疲れた。精神的に……。

 化粧の作法を間違えるたび、大嶽さんが甲高い声を出す。甲高い声で檄が飛んでくるのが、怖い。いっつもびくっとしてしまう。


「あの~大嶽さん。お昼からなんですけど……」

「昼からの予定ね。カイと一緒に訓練よ。がんばってね、ひーちゃん。戦闘関係は私の専門外だからね、あとは全部、あなたのお父さんに任せているわ」


 にっこり笑うと、大嶽さんは立ち上がった。


「2人ともお昼からの訓練、がんばってね。あっ、明日もメイクルームに集合よ。きれいになりましょうね~」


 にっこりした後、お盆を返却口へと持って行く大嶽さん。

 今日はここで解散みたいだ。


「先に格技場に行っているから、ゆっくりしてきてね」


 志賀さんは携帯していたサプリメント数種類を一気に飲むと食器を返しに行ってしまった。

 志賀さんって、結構フランクな人だなぁ。

 さて、少しゆっくりしたら私も格技場に行かなきゃね。水をゆっくり飲んで、落ち着いてからにしよう。

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