第3話「はじめてのアジト壊滅:前篇」

 12階建てのマンションの屋上。

 タンクの上から住宅街を一望する。

 梅雨は明けたけれども、曇っているから気分は晴れない。できれば晴れた日が良かった。


「見えるか?」


 左耳に装着しているイヤホンから、父さんの声。

 電波が悪いのか、ノイズが結構走っている。ちょっとくすぐったい。


「見える。えぇっと私から8時方向にある赤いトタン屋根。あれでしょ?」


 暗褐色の群がる屋根の中、ポツンとある。他の屋根よりも、ひとまわり大きい赤い屋根。


「そうだ」父さんは笑うと、「今日はひとりでやってもらうぞ。卒業試験だ。小さいが、そこは悪い連中のアジトだ心してかかれよ。あ~一応、人払いは済んでいるが、なるたけ被害を出さないように」

「了解」


 額の汗をぬぐう。さっきから汗が止まらない。

 今着ているヒーロースーツは、防刃防弾防爆――防防防の~その他もろもろで、自分の身を守る仕様になっている。

 そのためなのかな?

 通気性は皆無。おかげで体中が汗でベトベト、蒸れている。

 早く帰ってシャワーを浴びたいけど、帰るわけにはいかない。

 シャワーを浴びるには、あの赤い屋根の下にいる人たちを懲らしめなくちゃ。

 あの赤い、のこぎり屋根の工場は、どこにでもある町工場に見えるけど、その実は違う。

 工場の中は、きっとハイテク機材でいっぱい。悪事を働くときに使う武器――自動小銃やロケット砲といった武器がたんまり保管されている。

 いわゆる悪の組織のアジトだ。

 一見、誰もいないように見えるけど、中はきっと悪いやつらでひしめいている。そいつらが新しい悪さをする前に、やっつけなくてはならない。

 ちなみに、その悪い奴らの名前は『デスフレア』だ。


「さて、そろそろやりますかね」


 父さんは自分の後方に控えてくれている。

 この上ないくらい頼もしい援軍だ。

 でも、父さんを頼りたくない。ここはシッカリと私の務めを果たそうと思っている。もちろん父さんに認められるためだ。


「よし! 行こう」


 手のひらを地面に向け、衝撃波を放つ。

 ふわりと体を浮かせ、ホバリング。父さんほどではないけれども、何とか手のひらの力で空を飛べるようになった。

 とは言いつつも、高いところから滑空する程度。まだ、鳥のようには飛べない。


「愚直に正面突破だ。人質はいない、思う存分暴れるといい。あ、戦闘員達は殺すんじゃないぞ。彼らは洗脳されているだけだ」

「了解」


 父さんのポリシーは不殺(ころさず)。

 私もそれを守ろうと思ってる。悪人を改心させてこそ、ヒーローだからね。

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