第138話意外と馴染む生活3


「春雉、起きてください」


「んあ?」


 ハイラブリーフェアリー夏美ちゃんの声が、聞こえた気がする。


 夢か現か。


「起きてくれたらキスしてあげます」


「おはようございます!」


 カッ、と、覚醒してしまった。


 因果な渡世である。


「おはようございます。と云うかこんにちは」


 こんにちは?


 そちらを見やると、スクール水着にエプロン……と云う完成された出で立ちの、パーフェクトグレード夏美が居た。


「おはよ、夏美」


「もう昼ですよ。昨日もあの後オドで?」


「まぁちと夜更かしして頑張ったことは否定しない」


 それにしても、夏美(と秋子)が「同棲したい」と言い出した時には、どうなるものやらと思ったけど、杞憂に終わった。


 意外と、馴染んでいたり。


 夏美は秋子の指導のもと、家事全般のスキルに、リアルスキルポイントを割り振り始めているらしく、料理に洗濯に掃除にと……着々と女子力(死語)を積んでいた。


 は!


 これが積んデレ!


 とまぁ冗談はともあれ、


「昼飯は?」


「ざるラーメンですけど、良かったでしょうか?」


「良きかな良きかな」


 僕の好物だ。


「夏美が作ったの?」


「インスタントですから、誰が作っても変わりないですけどね」


「いやぁ準備してもらっただけでも高得点。頭を撫でてあげよう」


「ふえ? いいんですか……?」


 ポッと、夏美の頬が、桜色に染まる。


「いい子いい子」


 よしよし、と夏美の頭を撫でる。


「ふえや……」


 トロンと双眸を蕩けさせて、恍惚とする夏美であった。


 本当に可愛い子だ。


 ついでに言質をとったキス。


 中略。


 ダイニングで昼食となった。


「…………」


 僕は無心で、ラーメンを手繰る。


「あのう……」


「ツッコミが無いと辛いんだけど……」


 秋子と量子が、たわ言を述べ奉っていたけど、


「美味しいよ夏美」


 サラリと無視。


「ありがとうございます!」


 向日葵のように笑う夏美。


 やっぱ良いなぁ。


 ナツミン可愛いなぁ。


「「雉ちゃん!」」


 何でっしゃろ?


「私の水着姿どう?」


「私も私も」


 ちなみに、今ここにいるかしまし娘は、全員が水着姿だ。


 夏美は、先述したスクール水着。


 秋子は、扇情的なビキニ。


 量子は、V字型の水着。


 であるから、


「どうも何も、頭を疑うくらいしかできないけど……」


 心底ぶっちゃけた。


 一緒に風呂に入る仲だ。


 今更水着で誘惑アクションされてどんなリアクションを返せというのか。


「雉ちゃん冷たい」


「そうだそうだ」


「エアコンが効いてるからね」


 僕は、ぞんざいに言って、ラーメンを手繰る。


「今日の予定はちゃんとわかってる?」


「?」


 首をクネリ。


 僕は素で忘れていた。


「皆でプール行くって言ったじゃん!」


「言ったっけ?」


 ラーメンを手繰る。


「これだから雉ちゃんはぁ……」


「まぁ別にいいけど墨洲総一郎は?」


「セクハラで検挙されるのも忍びないので不参加で」


 哀れ総一郎。


 まぁ存在自体が、パイオツスキーへと汚染された、総一郎を連れれば、プールは狩場と変わるだろう。


 基本的にイケメン(死語)であるため、一夏のアバンチュールを楽しむことも、出来るかもしれない。


 今回は不参加らしいけどね。


 というか、


「今回は」


 とか言ってるけど、参加させる予定があるのなら、聞いてみたいものだ。


「移動はランドアークで良い?」


「そのつもり」


「あんまり水着姿になりたくないんだけど……」


「雉ちゃん……既に裸の付き合いをしておいて今更じゃない?」


 それはそうだけどさぁ。


「なんというかプールに来るだろう腹筋の引き締まったリア充バディとVRオタクのもやしっ子バディを比較してしまうと凹むとか何とか……」


「私は気にしませんよ?」


 軽い調子で、夏美は言った。


「ありがと」


 ズビビと、ラーメンを手繰る僕だった。

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