第134話ソレナンテエロゲ?5


 とりあえず。


「今日はここまでだね」


 と言って僕は、


「解散」


 と宣言した。


 オタクショップ巡りも、メイド喫茶も、堪能したのだ。


「また来ても良い」


 そう思わせる、街並みだった。


「エロゲとか買わなくてよかったのですか?」


 これを本気で言ってくるからなぁ。


 夏美は。


 ちなみに……本人は、エロゲ買ってます。


 しかも結構マニアックな。


 恋人として、再現すべきか……。


 難しい問題である。


 そして意識が、現実に回帰する。


「…………」


 現実の瞳を、開いた。


 見慣れた天井が見えた。


 僕の寝室だ。


 それくらいはわかる。


 さてさて。


 僕はキッチンに立つ。


「雉ちゃん?」


 量子が、声をかけてきた。


「何でっしゃろ?」


「料理するの?」


「まさか」


「だよね……」


 そこで頷かれるのも、何だかなぁ。


「今日は何を注文するの?」


「和牛のステーキ」


「私の分は?」


「無論」


「ならいっか」


 そんなやりとりをしていると、


「雉ちゃん」


「春雉……」


 秋子と夏美が、現れた。


「春雉が料理するんですか?」


 キッチンに立った僕に対する、夏美の疑問。


「違います」


 否定。


「なら何……?」


「夕餉の準備を」


「料理しないのに?」


「量子変換で、外に注文するだけだから」


「ふーん」


 あっさりと納得する夏美。


「雉ちゃんはまたそうやって……!」


 憤激したのは、秋子である。


「いいでしょ別に」


「雉ちゃんの事だから高価な買い物をするつもりでしょ?」


「まぁそうだね」


 節税対策だ。


 ネットマネーは、寝かせていたら、それだけで徴収の対象になるからね。


「そんなの受け取れないよ」


「別に秋子のためってわけじゃないし」


「それでも……!」


「どういうこと?」


 夏美は、ついていけないらしい。


「美味しいモノを食べさせてあげるってだけ」


 僕は、気楽に、そう言った。


「ふうん?」


 納得したのかしてないのか。


 それは、夏美のみぞ知るところだろう。


 で、僕は、量子変換機を起動させる。


 ネットマネーと引き換えに、料理が現れる。


 ジュージューと焼けたステーキ。


 物理が三つ。


 データが一つ。


 後者は量子の分だ。


 そんなわけで、


「いただきます」


 と相成った。


 白米とステーキ。


 それから、秋子の用意したコンソメスープ。


 肉はスルリとナイフを通し、口内に入れると、柔らかく溶けた。


 さすがに和牛のステーキ。


 油の乗り方が芸術的だ。


「これ。高くないんですか?」


「さほど」


 夏美の憂慮に、淡々と返す。


「一万で済めばいいんだけど」


 これは秋子。


「高級料理じゃないですか!」


 狼狽える夏美。


「別にこれくらいじゃ僕の懐は痛まないし」


 事実だ。


「ふぅん?」


 と訝しがる夏美だった。


「だからお金の心配はしなくていいからね?」


「いえ」


 却下された。


「金銭の都合は自分で出来ます故」


「秋子みたいなこと言うね」


「金目当てで春雉に近づいたって思われたくないんです」


 その志は立派だけどさ。


 恋人に寄りかかることも、覚えてほしい僕だった。

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