第85話傷はまだ瘡蓋残し4


「さて」


 ブランド服で固めた夏美の手を握って、


「これからどうしよう?」


 僕は、夏美と量子に問う。


「もう好きにして」


 と夏美。


「元々夏美ちゃんは何処に行くつもりだったの?」


 と量子。


「ゲーセンです」


「あんな格好で?」


「別にいいでしょ。誰がどんな格好していようと」


「そうだけど……」


「納得いかない」


 と表情で現す量子だった。


「アキバ系の格好してないとナンパに会うんですもの」


「ああ、まぁ夏美は美少女だしね」


 ギュッと握っている手に力を込める。


「そういうの禁止」


 赤面して夏美。


「そういうのって?」


「美少女とか……云うの……」


「元々可愛いでしょ?」


「だから気安く可愛いとか言わないでください」


「別に他意はないんだけどなぁ」


「それでも」


「了解」


 僕は夏美の手を握ったまま、歩き出した。


「どこ行くんです?」


「ゲーセン」


「こんな格好で?」


「美少女を連れていけば箔がつくってものでしょ?」


「あうう……」


 夏美は、真っ赤になってしまった。


「雉ちゃん。私のこと忘れてない?」


「まさか」


 量子の抗議に、肩をすくめる。


「でも量子は立体映像だし」


「やっぱり専用の有機ロボットを……」


 ボソボソと胡乱気なことを呟く量子に、


「まぁ別にそれだけじゃないんだけどね」


 追い打ちをかける。


「………………雉ちゃん?」


 その三点リーダ、怖いんですけど。


「とまれゲーセン行こ?」


「あうう」


「駄目?」


「じゃないけど」


「何か思うところは?」


「有るし無い」


「?」


「春雉には関係ないです」


 でっか。


「夏美は格ゲーが得意だよね」


「まぁそこそこには」


「私も出来るよ!」


 この主張は量子。


 だろうけどさ。


「どっちが強いのかな?」


「負ける気はしません」


「負ける気はしないよ」


 そして、


「っ!」


「……!」


 夏美と量子は睨みあう。


 仲が良くて結構。


「じゃあ試してみますか?」


「望むところだよ」


 ちなみに、僕は、VRゲームしか得意じゃないです。


 はい。


 どうもゲーセンのインタフェースはなぁ。


 そんなわけで、夏美と量子は、ゲーセンに着くなり、格ゲーでひたすら対戦しまくった。


 ちなみに立体映像の量子が、ゲーセンでゲームが出来るのかと言えば、


「出来る」


 に終始する。


 そういうところは、ちゃんとフォローされている。


 で、キャラランダム選択で、夏美と量子は争い合った。


「よくやるよ」


 僕は、嘆息と共にこぼした。


 ポップするイメージ広告を消しながら、夏美と量子の意地の張り合いを見届ける。


 勝敗は一進一退。


 どちらが勝ち越すわけでも無く。


 総じて互角だった。


「おお……!」


 とギャラリーがざわめく。


 赤髪の美少女……信濃夏美。


 紫髪の美少女……大日本量子。


 さすがに、量子の正体が、バレるはずもないけど、美少女同士が、白熱した格ゲー闘争を繰り広げれば、注目もされるわけで。


 それもプロ級の腕だ。


 注目を集めない方がどうかしている。


「この……くそ……」


「いや……あら……」


 最終的に、互角の結果を残した夏美と量子に、憧憬の眼差しが送られた。

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