第75話墨洲の告白6


「一応忠告しておくけどスミスくんのルームにアクセスするなら覚悟しておいた方が良いよ?」


「なして?」


「口にしたくない」


 そんなやりとりの後、量子は裏技画策のために量コンを操作するのだった。


 ちなみに今日の夕ご飯は、白米とほうれん草のお浸しとカボチャの煮つけとワカメの味噌汁。


 当然秋子作。


 それらを胃に収め、


「ご馳走様」


「お粗末様」


 言ってニコリと笑いあう僕ら。


 それから秋子の準備した風呂に入ってベッドに寝転がる。


「雉ちゃん……本気?」


 これは秋子の言。


 まぁイリーガルなことをしている自覚はあるけども。


「そうじゃなくて……」


 どうじゃなくて?


「私と夏美ちゃんに……その……」


 口をムズムズさせる秋子。


「あんまり良い未来は想起出来ないけどさ」


 それっぱかりは本音だ。


 必要なことだとも思う。


「じゃあ二十時に」


「うん……」


 最後まで躊躇いながら秋子は我が家へと帰っていった。


「悪党」


 これは量子。


「耳が痛いね」


 飄々と僕。


 その程度で畏れ入ったりはしないのだけど最近、


「欠点じゃないかな?」


 とか思い始めてます。


 別にいいんだけどさ。


 そして量子とアドレス先のプライベートルームに策謀して準備は万全。


 時刻は二十時。


 僕はベッドに寝て電子世界にログイン。


 アドレス先のプライベートルームにアバターを出現させた。


 疑似的なクオリアが転移先を捉える。


 所謂一つの(語弊を承知で言えば)喫茶店だった。


 ただしテーブル一つの椅子二つ。


「よ!」


 金髪碧眼の総一郎の扱う美少年アバターが二つの椅子の一つに座って紅茶(データ上のである)を嗜んでいた。


「………………どうも」


 うんざりとして僕は答えた。


 なるほどね。


 量子の言った覚悟の意味がようやく分かった。


 喫茶店故に女性アバターのマスターと女性アバターのウェイトレスも存在する。


 テーブルが一つしか無いのにウェイトレスアバターは五人ほど揃っている。


 皆ニコニコ笑顔。


 そしてマスターもウェイトレスたちも………………例外なく美少女で巨乳だった。


 しかも夏美に教えてもらったアニメキャラを基に再構築したものだ。


 壁にはアニメやマンガの巨乳キャラのポスターが貼られており、額縁に、


「おっぱい命」


 と達筆な楷書が飾ってある。


 アタマのズツウがイタくなるのは必然と云えよう。


「ここは?」


「俺のプライベートルーム」


 容易く総一郎は断じた。


 巨乳美少女アバターの奉仕を受けて、巨乳美少女キャラのポスターを貼って「おっぱい命」の額縁が飾られている時点で切り出されずにはいられない。


「君……おっぱい星人なの?」


「おおよ」


 ………………肯定したよ。


「おっぱいこそ人類の至宝。人はおっぱいを求めて探求してきたし進化してきた……!」


 その解釈はどうかなぁ?


「で? なんで僕を此処に?」


「お前も俺と同じおっぱい星人だからだ」





 ………………いえ………………あの………………誤解なんですが。





「そうでなけりゃ秋子さんを籠絡したりしないだろ?」


 概ね誤解を招いてる気がするけど反論材料が見つからないのはどうしたことだろう?


「秋子ちゃん良いよなぁ! 可愛いし! おっぱい大きいし! おっぱい大きいし!」


 二度言ったよ……。


 それだけ大切なことなんだろうか?


「改めて聞くがな。本当に春雉は秋子さんと付き合ってないのか?」


「先にも言った。付き合ってないよ」


 単なる一方通行。


 言っても意味ないから言わないけどさ。


「じゃあ俺が手を出してもいいか?」


「どうぞご自由に。犯罪に抵触しない限りにおいてはね」


「秋子さん良いよなぁ。あの大きなおっぱい。タユンとしてて張りがある。あれほどの美乳を俺は見たことが無い」


 僕は幾度も見たけどね。


「春雉から口利きしてくれないか? 秋子さんに『総一郎と付き合えば』って」


「当人の自由意思に任せるよ」


 無難な回答。


「とりあえず春雉は秋子さんと付き合ってないんだよな?」


「まぁね」


「じゃあ今後は?」


「さてどうだか。縁は異なもの味なものって言うしね」


「あのおっぱいを独占するつもりか……!」


 そういうことは言ってて悲しくならない?


 いいんだけどさ。


「とりあえず秋子さんのおっぱいは譲ってくれ」


「愛を囁くことに抵抗を覚えたりしないよ」


「本当だな?」


「天地神明に誓って」


 僕はデータ上の紅茶を飲む。


「ちなみに秋子についてはソレでいいとして夏美についてはどう思ってる?」


「ああ、貧乳には興味ないから」


 バッサリと切り捨てる総一郎だった。


「でも春頃に夏美とぶつかって優しくしたって……」


「美少女であることは認める。実際点数稼ぎのために優しくはした。けどまぁおっぱいが無いなら美少女でも……なぁ?」


 同意を求めないで。


「とにかく俺は無乳の夏美さんに興味はねえよ。興味があるのは秋子さんだ。あのおっぱいは手に入れたい。手伝ってくれないか?」


「干渉はしない。後は総一郎の手腕次第じゃないかな?」


「なんだよ。ギルメンのよしみでさぁ」


「秋子に刺されたらことだから」


 有り得ない話でも無い。


 だから手伝うわけにはいかないのだ。


 そんな僕らの会話の裏で、


「……っ!」


 総一郎のルームを監視していた意識存在の一つがログアウトしたのが感知できた。


 というか量子のおかげなんだけど。


「とりあえずお前の不干渉の言質を取れただけでも収穫だ。俺が秋子さんを落としたらあのおっぱいは好きにしていいんだな?」


「どうぞご自由に」


 うんざりといって電子紅茶を飲む僕だった。


 あーあ……どうすんべ?

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