第74話墨洲の告白5


 で、真夏も近づくお日頃。


 日が沈む前に解散となった。


 ぶっちゃけ服飾とアキバ系の店をまわっただけなんだけど。


 前者は秋子がはしゃぎ、後者は夏美がはしゃいだ。


 なんでもそろそろアニメのシーズン転換点。


 新作のガソダムが始まるとのこと。


「へぇ」


 ってなもんだ。


 でアキバ系の店では色々と夏美が解説してくれて色々と染め上げられた。


 なもんで古今のアキバ系の知識について、僕と秋子は明るくなっていくのであったけど……閑話休題。


 僕と秋子は僕の家にあがる。


 量子?


 途中で解散。


「ただいま~」


 誰もいない空虚な屋内に入りながらそう言うと、


「お帰り雉ちゃん」


 ルンとした声が聞こえた。


「うっふん」


 猫耳スク水ニーソ姿の量子が、グラビアアイドルのような(というか量子もグラビアはしてるんだけど)ポーズをとって出迎えてくれたのだった。


「…………」


 僕は嘆息する。


「…………」


 秋子は嫉妬する。


「あれ? 駄目だった?」


 量子は困惑する。


 ともあれ、


「却下」


 僕は量コンで家の投影機を切った。


「ああん。雉ちゃ~ん!」


 思念言語で語りかけてくる量子。


「秋子。今日の御飯は?」


「ほうれん草のお浸しとカボチャの煮物のつもりだけど大丈夫?」


「うん。美味しそうだね。まぁ秋子が作って美味しくなかった料理が無いんだけど」


「雉ちゃん褒めすぎだよ~」


「えへへぇ」


 と照れ照れ。


 何この可愛い小動物。


 モフりたい。


 しないけどさ。


「じゃあ魂をかけて夕ご飯作るよ! 花京院の魂もかけるよ!」


 勝手すぎるかな?


 ていうか僕にしろ秋子にしろ夏美のフィールドにハマっていってるような……。


 悪い事じゃないけど。


「雉ちゃ~ん」


 相も変わらず思念言語がうるさい。


「まともな姿になった?」


「うん!」


「嘘だったら絶交するからね?」


「あ、ちょっと待って……」


 やっぱりかい。


「ん。大丈夫」


 その言葉を信じて投影機をオンにする。


 現れたのは当然量子。


 ただし瀬野三の制服。


 ニーソは変わらず。


「どう?」


「頭を疑うくらいしかできないなぁ」


 ちなみに土井さん家に着いてから量子はいつものアバター(ブラックセミロングツインテール)と相成っている。


 つまり正真正銘の大日本量子ちゃんアバターと云うことだ。


 こんな民家を盗撮しようとするパパラッチもいないだろうけど、アイドルとしては減点対象に相違ない。


 元より幼馴染だから遠慮が要らないと言えばその通りなんだけど。


 ともあれ、


「仕事は良いの?」


「今日のデート」


 デートだったの?


 初耳だ。


「途中で解散したでしょ? その後グラビアの仕事を請け負って休憩時間」


 でっか。


「じゃあ仕事を頼みたい」


「一件につきキス一回」


「そんなに僕に嫌われたいの?」


「いいじゃん! それくらいの役得はあっても!」


 う~、と量子が唸る。


「わかったよ。電子世界でね。で、このプライベートルームの安全の是非を確認して」


 昇降口の下駄箱。


 そに入っていたメモ用紙の切れ端。


 そこに記されたプライベートルーム用のアドレスの画像を量子に送る。


「うぇ……」


 量子は顔をしかめた。


 量コンを使っているため検索なぞ一瞬だろう。


 そして口をへの字に歪める。


「誰主催のルーム?」


「スミス……墨洲総一郎……」


 総一郎か。


 何かしら一対一で話したいことでもあるのだろうか?


「…………」


 チラリと。


 今朝総一郎がイラッとした感情を表に出したのを思い出す。


「あんまり楽しい話じゃなさそうだなぁ」


「無視すれば?」


「禍根を引きずるのもどうだか……」


「根絶するって言うのは?」


「見逃してくれる?」


「無理」


 でしょうね。


「ついでにもう一つ頼みがあるんだけど……」


「二回もキスしてくれるの?」


「ディープな奴をしてあげるよ。で、ものは相談なんだけど……」


 とりあえず未来の禍根を無視して、現在の禍根に対処するよう努める僕だった。

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