第65話コの字デート2


 で、昼食は量子質量変換で、産地直送の刺身で握られた寿司を食べることとなった。


 場所は僕の家。


 そのダイニング。


 僕はアジを手に取った。


 秋子はヒラメ。


「それで?」


「とは?」


「雉ちゃんに予定はある?」


「予定ならあるでしょ。秋子にも」


 ちなみに先述したけど今日は日曜日。


 全国一斉休日デー。


「光あれ」


 から始まり世界を創造したヤハウェがとった休日……らしい。


「ヤハウェを理由にサボりを常習化させているだけでは?」


 とは僕の意見だけど、少なくともキリスト教信徒の前で口にするわけにもいかない。


 第一日本には年中営業の産業なぞ、配り歩けるほど存在する。


 こういうところでも、日本は宗教感が薄い。


 閑話休題。


「私が聞いているのは何処に行くかってことだよ?」


 今日は僕こと春雉……と秋子と夏美と総一郎とでダブルデートの予定が入っているのだ。


 最初は、


「近場のショッピングモール百貨繚乱に行こう」


 と総一郎が提案したのだけど、秋子にあえなく却下された。


 どうやら秋子は総一郎の下心に、嫌悪しているようだった。


 僕としては、


「今更だろう」


 と云った感想だ。


 そもそもにして才色兼備かつ美貌巨乳の大和撫子だ。


 その心を奪うことの意味と価値とを、秋子は客観的に見ていない。


 秋子を以て、


「僕は幸せだ」


 ということにさえ気づいていない。


 ただ、


「雉ちゃんのためなら何でもやるよ」


 が秋子の平常運転なのだった。


 合掌。


 二度、閑話休題。


「つってもねぇ?」


 僕はウニを食べる。


 咀嚼。


 嚥下。


「電子デートならどこにでも行けるし」


「ですよね~」


 そんなわけで妥協案がとられ、セカンドアースでダブルデートをすることに。


 時間的には十三時……正午一時に即席のプライベートルームにて待ち合わせ。


 僕は大トロを口に含んで咀嚼……嚥下。


「じゃあカイラス山の周囲を五体投地で一周するとか……」


「私にはわかるけど雉ちゃん本気で言ってるよね?」


「楽しいと思うなぁ」


「残念だよ」


 君が言うか。


 それを。


「じゃあ秋子は何処に行きたいのさ?」


「サヴィルロウとかどうでしょう?」


「イギリスねぇ……」


「雉ちゃん格好いいから三つ揃い似合うと思うな」


「…………」


 たまに、


「秋子と量子の眼は腐ってるんじゃないか?」


 と思うことがある。


 秋子にしろ量子にしろ、


「土井春雉は美少年だ」


 と言ってはばからない。


 僕としてはミスター平凡を名乗っているんだけど、その辺の摺合せに成功したことは過去を遡って一度も無い。


 まったく業の深い……。


 三度、閑話休題。


「なんなら最近読んだあの古典ファンタジーの魔法学院の元になった場所とかどう?」


 多分日曜だからアクセスは混雑してると思うけど。


「人の多い所は好きじゃないな」


「でも人込みなら手を握るチャンスだよ? はぐれないようにって」


「雉ちゃんとは手を繋ぎたいけど総一郎くんとは繋ぎたくないよ」


「拒否すれば?」


「それだと夏美ちゃんに悪いよ」


 難儀な……。


 こういうところは、


「乙女心って大変だなぁ」


 なんて思わせる。


「じゃあエベレストを登るとか」


「雉ちゃん山好きだねぇ」


 ロマンがあるしね。


 反論はせず江戸前あなごをパクリ。


「私としては日本を出たくはないんだけど……」


「日本ねぇ」


 少なくともセカンドアースにおいては、僕と秋子と涼子とで散々回ってしまっている。


 それくらいは秋子も認識しているだろうし、自動翻訳の機能を疑っているわけでもなかろうけど、何となく、


「外国だ」


 というだけで気後れを感じるらしい。


「いっそハワイとか。それなら日本人もたくさんいるんじゃない?」


「グァムとか?」


「そそ」


「総一郎くんの嫌な視線が気になるなぁ……」


 哀れ。


 総一郎くん。


 まぁそんなこと言ったら、


「僕の秋子に対する態度もどうなんだ?」


 という疑問も沸き起こるんだけど。

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