第47話フラグ交差点2


「ふぅ」


 僕は草原ステージでノンプレと対峙していた。


 この電子世界を作ったのは僕である。


 プログラミングには自信が有ったり無かったり。


 まぁそうでなくとも、公爵に借りを作った形になるから天狗が出没したりしなかったり。


 ノンプレは言ってしまえばオドのロンドンエリア……そこの雑魚キャラであるシャドウマンと大差はない。


 光沢のないのっぺりとした黒色の人型。


 マネキンと比喩されてしっくりくるアバターだ。


 ただし、


「っ!」


 このアバターは、雑魚キャラではない。


 一瞬で、こっちへの間合いを潰したマネキンが、手に持った剣を振るってくる。


 グラムで受け止める。


 それからボイススキップ。


「フォトンブレード!」


 手に持った短刀から光の刃が生まれる。


 刀身は五メートル。


 だいたいこれくらいが良い塩梅なのだ。


 距離をとったマネキンに光の刃を振るう。


「――!」


 受け止められる。


 加速は十倍。


 この世界はオドではないもののオドを再現したものだ。


 そして僕とマネキンは、現時点における超過疾走システムの最大値……速度十倍の領域にいた。


 丁々発止。


 僕のグラムとマネキンの剣が剣劇を繰り広げる。


 超高速の域だ。


「シッ!」


「――!」


 フォトンブレードは状況に応じて臨機応変に刀身を変える。


 が、マネキンもさる物。


 変幻自在の僕の剣についてくる。


 というかそういう風に僕がプログラムを組んだんだけど。


 袈裟切りからの頭部狙い。


 受け止められ間合いを詰められる。


 一閃、二閃、三閃。


 全てを切り払う。


「強いな……!」


「――!」


 マネキンは答えない。


 淡々と神速の剣を振るってくる。


 キィンと剣劇が高らかと鳴る。


「ひゅ!」


「――!」


 僕の連続斬撃は全て受け止められる。


「覇ァ!」


 さらに速く。


 さらに巧妙に。


 斬撃と云う斬撃を生み出す。


 どのくらいの時間が経ったろう?


「お~い。教室に着いたよ?」


 土井春雉からそんな干渉の声が響いた。


「そりゃどうも」


 プログラムを終了させる僕。


「それから一応取り揃えたよ?」


 何のことかと云えばオドでの事情だ。


 つまりオーバードライブオンラインでの立ち回り。


「土井春雉がオーディンセットをついにコンプした」


 と、そんなわけ。


 僕は現実世界に帰還する。


 反対に土井春雉がオドに籠る。


 そして『ジキルのお部屋』という僕のブログにオークションの出品予定を告知するのだった。


 返ってきた反応は喚起に打ち震えていた。


「ジキルたんキター!」


「オーディンセット!?」


「どうやって集めたのか詳しく!」


「貯金が減っていくぜ!」


 いや、貯金はちゃんと積み立てようよ……。


 スタートプライスは二十万。


 もちろん円で。


 高いと思われるかもしれないけど実は格安だ。


 もっともオークションに出す以上ラストプライスは価値相応になるだろうけど。


 意識のみで操作を終了する。


 気づけば僕は秋子と仲良く教室で会話をしていたらしい。


「あれ?」


 とぼやくと、


「雉ちゃんなの?」


 と秋子が尋ねてくる。


 まぁそうなんだけど。


 周りからは陰険な視線。


 新入生でも頂点に位置する女生徒……紺青秋子さんは僕の物と云う認識で固まりつつあった。


 反論も怠いので別にいいんだけど。


「あ」


 とこれは秋子。


「雉ちゃん。もうオーディンセット集めたんだ」


「それが土井春雉だしね」


「うん。まぁ。そうなんだけど……」


「落札されたら美味しい物を食べに行こうな」


「いいのかなぁ……」


「遠慮するっていうの?」


「だって雉ちゃんのお金でしょ? それだけじゃなくて量子ちゃんの件でもバイトしてるし。なのにお金に頓着しないで紺青の家を支えてるし」


「なら僕も秋子の好意を心苦しく思おうか?」


「それは駄目……!」


「うん」


 ポンポンと空いた方の手で秋子の頭を叩く。


「つまりはそういうことだよ。負い目を感じる必要は無いんだ」


「むぅ」


 唸られてもね。

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