第43話とある日4
昼食の場所はラーメン屋と相成った。
「高級レストランで」
と僕が提案すると秋子が難色を示したのだ。
元より金銭都合において秋子は遠慮がちだ。
僕にしてみれば、オドやバイトの収入で金に困っていないから、遠慮の必要を感じていないんだけど、デートである以上、相手を慮ることも必要だ。
そんなわけでラーメン屋。
北海道の味を再現したソレだ。
僕は味噌ラーメンメンマ増し増し。
秋子は塩ラーメン味玉付き。
そして量子はデータ上の味噌ラーメンコーン増し増し(立体映像へのサービスシステムだ。ちなみに料金はしっかり取られる)を頼んだ。
今時は有機無機問わず、ロボットやアンドロイドや立体映像とデートするのは一般風景でありソレらのためのサービスも氾濫している。
であるため量子は美味しそうにデータ上の味噌ラーメンを食べるのだった。
支払いは僕持ち。
量子は『大日本量子ちゃん』としての莫大な収入を持っているけどあくまで法人(本当の意味での法律の人間だ……この場合)であるためあまり勝手は出来ない。
そこまで厳しいわけでもないけど事情が事情故に僕が払った方が面倒は無い。
「ん~、美味しい!」
量子はご満悦だ。
「…………」
秋子は無心で塩ラーメンを食べている。
「秋子」
僕は秋子を呼ぶ。
「ふえっ?」
秋子の手が止まる。
僕はスープを飲んでそれから問う。
「どこか行きたいところある?」
「考えてないよ」
だろうね。
「雉ちゃん」
これは量子。
「何?」
と僕。
「私、服見てまわりたい!」
「ウィンドウショッピング?」
「うん!」
清々しいね君は。
そんなわけでそういうことに相成った。
ラーメン屋の勘定?
注文と同時にネットマネーで引き落とされているよ。
大した痛手でもないしね。
そして百貨繚乱を見てまわる。
主に服屋。
それもブランド店を。
秋子と量子は良いだろうけど僕にしてみれば居心地が悪い。
別に服に対して意識を高くしたことが無いから苦手ってだけなんだけど。
「この服可愛い! 秋子ちゃん着てみてよ!」
「じゃあ量子ちゃんも一緒に……」
「そうしよ。店員さーん!」
量子が店員を呼ぶ。
それから実物とデータの服飾を用意される。
実物を秋子が、データを量子が、それぞれ適応させる。
ちなみに秋子は(当然だけど)試着室から現れた。
「どうかな?」
「どうかな!」
秋子と量子が問う。
薄い生地にて春らしい服装だ。
「二人とも可愛いよ」
僕はそれしか言えなかった。
そしてそれで充分であることを十二分にわかっていた。
「じゃ、買おう!」
僕の出番はまるで無く、自身のネットマネーで秋子と量子の服を買うのだった。
そしてそのまま店を出る。
秋子は物理的なブランド服飾に着替えたまま。
同じ服(データ上だけど)を着た量子と一緒に。
「雉ちゃん?」
「あいあい?」
「似合ってる?」
「似合ってるよ。秋子は可愛いから大概の服は似合うけどね」
「か、可愛い……!」
顔を紅潮させる秋子。
はいそこトリップしない。
「雉ちゃん!」
「あいあい?」
「似合ってる!?」
「そりゃまぁ」
「えへへ……」
量子は照れたように(というか照れて)だらしなく笑った。
まったく。
業が深い。
「次どこ行く!?」
量子が問うと、
「あー、本屋に寄っていい?」
僕が提案。
「私は大丈夫……」
「私も大丈夫!」
二人の可愛い子たちが同意してくれた。
そんなこんなで僕と秋子と量子は、モールでのデートを楽しむのだった。
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