第20話オーバードライブオンライン5
閃光が放たれる。
銃声が轟く。
コキアとミツナの攻撃だ。
前衛が僕ことハイド。
後衛がコキアとミツナ。
敵キャラを僕が引きつけて斬殺していき、距離をとってコキアとミツナが援護する。
そんな布陣がいつのまにか出来上がっていた。
明らかに僕が重労働なんだけど、かといって前衛にまわしてコキアやミツナが役に立つかと言われれば首を傾げてしまうわけで。
そもそもこういう荒事に向いていないのだ。
秋子と夏美は。
優しい。
臆病。
ヘタレ。
どう捉えるかは人に因るけど、それは元来褒められるべきことだ。
んだでば無理してオドをプレイする必要も無いと思うんだけど……それぞれに思惑があって、
「何だかなぁ」
と云った様子。
敵の数は五十程度。
僕のグラムは、
「フォトンブレード」
を展開して次々に敵を屠っていく。
「暴力の公認」
がVRゲームの本質だ。
無論ゲームはゲームで現実は現実なんだけど。
「あうう……」
と呻きながらマスケット銃を連射するミツナ。
銃声が連続して鳴る。
それらはゴブリンの群れにばらまかれて屠っていく。
時折、
「ストレイトショット」
とボイススキップが聞こえてくる。
ストレイトショット。
ガンリアーの初歩スキルだ。
攻撃力は通常のソレと変わらないけど貫通力を持つ。
敵が縦に密集している時に効力を発揮する範囲攻撃である。
実際ミツナのストレイトショットは密集したゴブリンの内の四体を貫いて屠った。
「フラッシュボム」
コキアもボイススキップを使う。
ウィザードであるため勿論魔法だ。
フラッシュボム。
閃光と爆発を指定した座標で炸裂させる攻撃魔法。
威力自体はさすがに低レベルであるためそこまで強くはないけど雑魚を蹴散らすには持って来いだ。
ちなみにVRゲームであるため閃光が瞬いても僕の視力には影響しない。
当然爆発の影響下にて巻き込まれようともダメージを食らうことは無い。
プレイヤーがプレイヤーにダメージを与えられないセーフティをシステム化しているのは当然の理屈だ。
そも、そうでなければプレイヤー同士で諍いが起こるのだから。
オド……オーバードライブオンラインに限らずたまにネット上では精神的に退行してしまう人間もいる。
そういう人間にとって自分に不都合なことは憎悪の対象になるのだ。
そしてアバターと自己を同一視し始め超えてはならないラインを踏み越える。
そんなことが起こらないためにプレイヤーはプレイヤーにダメージを与えられない。
もっともプレイヤーキルはそれだけに限った話でもないんだけど……少なくともオドにおいてはそれなりの安全装置は用意してあったり。
閑話休題。
「おおおっ!」
僕は後方から銃撃や座標指定の爆発を意に介さず、ゴブリンの群れを屠っていく。
高レベルエリアでも無いため正直ぬるい。
その間にもコキアとミツナのレベルは上がっていく。
「さて」
一段落つくと僕たちはまた村の喫茶店でお茶をした。
「レベル幾つになった?」
コーヒーを飲みながら僕が尋ねる。
「10」
「同じく」
とうことは……、
「スキル覚えた?」
そういうことになる。
「はぁ……」
「です……」
コキアとミツナは呆然と頷いた。
良かれ良かれ。
「じゃあとりあえず今日はここまでにしよっか」
というか自身のレベル上げに時間を費やしたい。
偽らざる僕の本音だ。
「だいたいどれくらいレベルを上げれば墨洲くんは振り向いてくれるんでしょう?」
そんなミツナの言。
頭の悪い質問だなぁ。
言いたいことはわかるけどさ。
「本人に聞けば?」
「それが出来たら苦労しないですよ」
然りだぁね。
「というかVRMMOで知り合ってどうのって話じゃないと思うけど……」
「そなの?」
「ミツナは美少女なんだから適当にアプローチすればいいんじゃない?」
「それが出来たら苦労は無いです」
それはまぁそうなんだろうけどさ。
「墨洲くんは男子グループの頂点にいるから話しかけるのも勇気がいるんですよ」
「…………」
僕としては、
「リア充氏ね」
で終わる話なんだけど。
ま、ミツナにはミツナなりの羞恥と躊躇があるのだろう。
と、僕は空腹を覚えた。
「コキア。お腹すいたな。ご飯作ってくれない?」
「うん。いいよ?」
コキアは一も二も無く頷いた。
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