第18話オーバードライブオンライン3


 で、反省会。


 村にある喫茶店で。


 テラス席に位置取って僕はコーヒーを、コキアは緑茶を、ミツナは紅茶を飲んでいた。


 ヴァーチャルリアリティだから、飲んだ物が胃や膀胱に行くことはないんだけど。


「これからどうする?」


 頭の悪い質問をする僕。


 というか他に質疑が出来るはずもなかったんだけど。


「とにかく何とかモンスターと戦わずに済む方法は無いですか?」


「右に同じく」


 あまりといえばあまりな提案に、


「…………」


 僕はジト目になった。


 コーヒーを飲む。


 VRMMOアクションゲームの根本根源と云うか……レゾンデートルを否定するコキアとミツナ。


 重症だ。


 致命傷だ。


 やる気の有無の前に、前提条件が間違っている。


「VRMMOに向いてないよ。二人とも」


「うぅ……」


「あぅ……」


 仕草は可愛いけど無意味にすぎる。


「オーバードライブシステムに適応できるかなぁ」


 などと心配していた自分が馬鹿らしい。


 それ以前の問題だ。


「墨洲さん……だっけ? 別の方法のアプローチをすれば?」


「どんな?」


 知らないよ。


「適当に色仕掛けでもしてメロメロにするとか」


「うう……このおっぱいが現実にもあれば……」


 ふにふにとアバターの巨乳を揉むミツナだった。


 現実の夏美はスットントンだしね。


 モデル体型だから決してマイナス要素ではないんだけど、当人にとっては大層なコンプレックスらしかった。


「それに墨洲くんはオドの世界を大切にしているみたいだし……」


 まぁ僕らの世代でVRMMOにハマらない男子はいないだろう。


 勉強が出来なくともVRMMO世界では関係ない。


 費やした時間がそのまま自分の実力に直結する。


 安価に強くなることが出来るのだ。


 ましてオドはVRにして無双ゲー。


 爽快感たるや中毒になってもおかしくないモノだ。


 実際僕もその一人だし。


 何より億単位のプレイヤーがひしめき合っているわけだし。


「ふむ」


 しばし考えた後、


「二人とも職業は決めた?」


「職業?」


「とは何だよ?」


 そこからか。


「要するに何に特化させるクラスにするかってことなんだけど……」


「なにかプレイに関係あるの?」


「ステータス画面を開いて」


「はぁ」


 これは意識すれば個々の視覚世界に開けるのでこちらからは確認できない。


「職業はナビゲイターになってるはずだけど……」


「ですね」


「だよ」


 ナビゲイター……つまり冒険者。


 初期職業だ。


 ここから始まり色んな職業に転職するのが一般的。


「二人とも戦いたくはないんでしょ?」


「そうだけど」


「まぁ」


「なら遠距離から支援する職業を選べばいい」


「遠距離……」


「支援……」


「ぶっちゃければリアーかウィザードかってところだね」


「リアーとウィザード?」


 然り。


「リアーは弓や銃を得意とする職業。遠距離攻撃で敵を寄せ付けない攻撃方法を持つんだよ。弓は広範囲殲滅に向いていて銃は貫通能力に向いている」


「はぁ……」


「ほぅ……」


「ウィザードはまんま魔法使い。遠距離魔法を覚えれば敵と接触することなく攻撃できる」


「はぁ……」


「ほぅ……」


「理解してる?」


「それは」


「まぁ」


 ならいいんだけど。


「ちなみにハイドの職業は?」


「シーフ」


「シーフ……」


「つまり盗賊だね」


「なんだかしょっぱいですね」


 一応有用なんだけどね。


「ハイドのことだから剣士とか槍兵などと思ってましたけど……」


 純粋に無双ゲーを楽しむならそれもありだけどさ。


 けどシーフはシーフなりにメリットはある。


 ここで言うことでもないけど。


「とりあえず職業をナビゲイターから自分の好きなソレに転職して」


「なら私はウィザードを」


「それでは私はリアーを」


 コキアがウィザードでミツナがリアーというわけだ。


 僕はトレードウィンドウを開く。


 コキアとミツナにそれぞれに適した装備をまわす。


「何これ?」


「装備品」


 他の何に見える?

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