16‐6「奪われる足場」♤
「おおおおおおおおおおおおおおおおお」
大男が雄たけびを上げ斧を構えるとまだ斧の間合いにも入ってねえってのに振り下ろす。自我がなくてミスをしちまったのか?
そんな考えが過ったのも一瞬、オレは嫌な悪寒が走り宙に舞った。その判断は正解だったようだ。次の瞬間、地面がひび割れて大きく揺れた。
「なんつう一撃だ。こんなの受けたらひとたまりもねえ。ていうか避けても地面揺れちまったら攻撃が出来ねえな」
吐き捨てるように言うと着地をして剣と刀両方を構える。この刀を当てればオレの勝ちだ。でもそれまでが難しい。そもそもあの縦割りで地面を砕くのを何度もやらせると魔王と戦っているトオハが体制を崩して不利になるかもしれねえ。
「行くぜ、『エンハンス』! 」
着地をするとともに走り出す。するとそれを見切っていたのか男は俺に目掛けて斧を振る。こいつを地面につけるとまた叩き割られて揺れちまう。
「うおおおおおおお、『ウィンディ』! 」
大賢者様との特訓の成果、手を翳さず剣と刀に魔法を纏えるようになってた。
キィン!
風を纏った剣と刀で斧を受け止める。でも、何という力だ。オレの手は未だに震えて気を抜くと押し切られちまいそうだ。
どうするか考えてると突然男が斧を引っ込める。どうしたのかと体制を立て直そうとしたその時だった。男が左一杯に斧を引き寄せるのが目に入った。
「やべえ」
すかさず剣と刀を左側に回す、程なくして男の全力の横払いがオレに襲い掛かる。
ガキィン! という音と共にオレは空中へと吹っ飛ばされる。完全にやられた形だけどこれは好都合だった。おかげで十分トオハ達と距離を取ることができたからだ。正直、これには助かった。もうオレの手はかなり震えちまってまたあの斧を防ぐのは不可能に思えたからだ。
「なんとかしねえと」
タイルの上で受け身を取り立ち上がると幸い距離も取れたので男が向かってくるのを見ながら作戦を考える。
あの男は振りが大きい、けどその分力は段違いで避けて隙を突こうにも足場が割られちまったらそれは体制を崩して攻撃ができなくなっちまう。かといって放つ前もなかなか危険な賭けだ。あいつの溜めの動作がフェイクの可能性も十分にある。
やべえ、どうすりゃいいかわかんねえ。ここで終わっちまうかもしれねえな。ダイヤの魔法に頼りたくなったけれども今度は距離を取っちまったのが祟っちまってそれもできねえ。空を飛べればいいのになあ。
そんなバカバカしい想像が浮かんで閃く。
「これだ、これならいけるかもしれねえ」
思わず口ずさむとオレは男目掛けて走り出した。それをみた男は立ち止まって斧を構えた。確かに両者走っているとなると武器の軽さからオレの方が攻撃を繰り出すのが速い。それならば待とうという魂胆なのだろう。それはオレにも好都合だ。足を速めるとみるみるうちに距離が縮んでいく。そしてさっきのようにまだ十分な距離があるというのに男は斧を振りかぶった。
……今だ!
オレはそれを合図に空高く跳びあがる。そう、空中なら足場なんて関係ねえ、それに距離を詰めることもできる。オレの狙いを読んで先を悟ったのか男が振り下ろすのを止めようとするも勢いが付いた斧はもう止まらねえ。
「ここだ! 『スァンダ』! 」
オレのオヤジから貰った剣が雷を帯びる。ダイヤの兄ちゃんの剣と比べると小せえけれどオレには刀もあるしこれで十分だ。
ドガァン!
男の振った斧が空しく地面を砕く。オレはその様子を見下ろしながら男に狙いを定める。
「喰らえ、『秘剣! 風雷斬』! 」
風を纏った刀と雷を纏った剣はどちらも男の身体を切り裂き男は崩れ落ちた。
「やった、やったぞ! 」
ふとトオハ達が気になった。急いで戻るとトオハが魔王に蹴りを喰らわせたのが見える。
よし、これで後は剣を奪っちまえば!
オレが念じた通りトオハは剣を掴む。しかし、次の瞬間、トオハは倒れてしまった。伝説の剣の試練が始まったのだ。それをみてハッとする。
「しまった」
オレは全速力でトオハ目掛けて走り出した。
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