15-25「宝箱の中身」

「おお、よくやってくれた」


「ああ、皆ももういい、逃げる必要はないのだ」


 デーモンが倒れたのを知り人々が戻ってくる。重要なのはここからだった。


「何とかなって良かったです。それよりもヤギリさんは」


「ああ、ヤギリが裏切り者だったとは残念だ、思えば戦争のきっかけはヤギリがファーガスさんである貴方が1人で国を治めるべきと言ってきたことだった」


「なんと、私もだ。ヤギリに人間が支配するべきだと言われてついその気になってしまった」


 2人の王が罰が悪そうに会話をする。その様子を見て俺は口を開く。


「仲直りができて良かったですね、ところでそのヤギリさんが盗もうとした宝箱には一体何が入っているのか気になりますね」


「それもそうだな。開けてみるか」


「いや、まだ我々が開けるのには早いのでは!? 」


 ファーガスさんの行動をラトランドさんが必死で止める。ファーガスさんはそれを見てラトランドさんを見つめた。


「いやいや、再び歩み出す必要がある今こそ相応しいのではないだろうか」


「それでは僭越ながら私が開けさせて頂いてもよろしいでしょうか」


 臆せずそう尋ねると2人がキョトンとした。まあそれはそうだろう。この流れで俺が開けると言うのはおかしい、でもそこを押し切らなければならない理由があった。


「おう、いいぞ」


 数秒の沈黙の後笑う。


「ファーガスさん上!? 」


「いや良いじゃないか、キングは今回よくやってくれた。それに応えなくてはな」


 まさかの回答に今度は俺がキョトンとするもすぐさま「ありがとうございました」と頭を下げる。


「それでは失礼して」


 鍵をファーガスさんから宝箱をラトランドさんから受け取り皆が見守る中鍵穴に鍵を差し込むと回す。程なくしてかちゃりと音がした。

 ついにこの時が来た。大賢者様は次会う時はオーブが揃った時だと言った。しかし俺にこの雰囲気でこの中にあるであろうオーブを持って行くなんてことは出来ない。ならば取り敢えず触ることによって手に入れたことにならないか、というものだった。

 お願いします、大賢者様。

 そう祈りながら俺は宝箱の蓋を開くと丸い球体が姿を覗かせた。


「あれ? 」


 思わず頓狂な声を上げる、驚くべきことに入っていたのは綺麗なオーブとは程遠いボロボロの茶色のボールだった。


「おお! 懐かしいなこれは昔はこれで仲良く遊んだな」


 王様がボールをとる。


「ああそうだな、懐かしい」


 ラトランドさんが涙を流す。


「そういうことですよお二人共」


 ふと声がして振り返るとそこにはフミさんが立っていた。


「「「フミさんどうしてここに」」」


 思わず3人の声が重なる。


「女王様はモンスターと人間異なる種族の共存がファーガスさんラトランドさん達でもできるのかと国の未来を案じておりました。ですのでその時に2人が仲が良かったことを思い出して欲しいという願いを込めてボールを宝箱の中に託したのです」


「つまり我々は」


「母が恐れていたことをやってしまったわけか」


「いやはや我らが父母は物凄いことを成し遂げたものだな」


「我々に続けていけるだろうか? このモンスターと人間が共存する世界を」


「大丈夫ですよ」


 堪らず2人に声をかける。丁度そこにスペードが向かってくるのが見えた。


「僕らもそうですから」


「それは一体どういう」


「こういうことさ! 」


 聞いていたのかスペードが俺の肩を掴み引き寄せる。クローバーも透明になっていたダイヤも姿を現した。


「まさか……キング」


「ジャック、クイーン……グルだったのか」


「騙してしまい申し訳ありません。本当はキングではなく踏破です」


「スペードだ」


「……クローバー」


「ダイヤと申します」


「こいつは一本取られましたぜい」


 これには侍すら驚いたようだ。


「なるほど、ヤギリ同様これで我々の情報は筒抜けで御前試合どころか戦地での戦いも仕組まれたものだったのか」


 ラトランドさんが納得したように言うとファーガスさんは笑い出す。


「ハッハッハやられたやられた。じゃあせっかくボールもあることだこのボールを使って試合でもやるか!


「良いな、久しぶりにやるか! 」


 ラトランドさんが同意した後に俺たちをちらりとみる。


「勿論付き合ってくれるよな? 」


 4人顔を見合わせると俺は元気に答える。


「はい、喜んで」


「よし、じゃあ皆やるぞおおおおお! まずはチーム分けだあああ! 」


「「「おおおおおおおおおおおおお」」」


 草原に大きな声が響き渡った。


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